親権停止とは|停止でどうなる? 申し立て方法を解説
身近に親から虐待を受けている子どもがいる場合、第三者として何ができるのでしょうか。この場合に取りうる手段のひとつに「親権停止」という法的な手続きがあります。
本コラムでは、親権停止の概要や適用期間、手続きの流れ、適用されるケースなどをわかりやすく解説します。
1. 親権停止とは
まず親権とは、民法820条で定められた、親が自分の子どもに対して有する権利および義務を指します。たとえば、同じ住居で生活する権利、財産管理の権利、必要な監護や教育をする義務などです。
出典:e-Gov法令検索「民法」親権停止とは、この親権を裁判所命令で一時的に凍結することを指します。親権停止の期間は、原則2年以内です。
この制度が設置された目的は、「子どもに虐待をする」「適切な養育環境を与えられない」など、親権をもつのにふさわしくない親から子どもの権利や利益を保護するためです。
(1)親権喪失との違い
似たような制度に「親権喪失」がありますが、この2つのあいだには明確な違いがあります。先述の通り、親権停止は、あくまで一時的な措置に過ぎません。親権停止は最長2年間の期限があり、親権を停止した理由がなくなったと判断されれば、再びその権利は親に返されます。
しかし、親権喪失の場合は、非常に高いハードルを乗り越えて取り消し措置を受けなければ、永久に親権が戻ることはありません。そのため、親権停止に比べて親権喪失の方が遥かに厳しい措置であり、親に相当の落ち度があって、2年以内に改善できる見込みもない場合にのみ適用されます。なお、親権停止および親権喪失は、民法834条に規定されています。
出典:e-Gov法令検索「民法」(2)親権停止がなされる具体的なケース
一般的に、親権停止がなされるのは、以下のように深刻な虐待行為を親が子どもに行っている場合です。
- 身体的虐待(子どもに怪我を負わせるような行為)
- 心理的虐待(過度の暴言や拒絶的反応など、子どもにトラウマを与えるような言動)
- 性的虐待(子どもにわいせつなことをしたりさせたりすること)
- ネグレクト(子どもを無視・放置したり、食事などの必要な世話を放棄したりすること)
これらはいずれも、子どもの健全な発達を著しく阻害することです。なお、児童虐待防止法2条にもとづけば、自分自身が積極的に虐待するのではなくても、もう片方の親やそのほかの同居人が虐待することを傍観しているのならば、ネグレクトとみなされます。
出典:厚生労働省「児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)」虐待以外では、親が病気や障がい、あるいは行方不明などの事情で親権の適正な行使が著しく困難である場合も、その停止が認められることがあります。
(3)親権停止で何が起こるのか
親権が停止された場合、その親は子どもの監護や教育に関する権利を行使できなくなります。一緒に住んだり、世話や教育をしたり、財産を管理したりすることはできません。親権停止中、親は再び子どもを自分で養育できるように、精神科へ通院したり生活を立て直したりと親権停止に至った事情を解消することが求められます。
親権停止中の子どもの養育は、親権をまだ保持している側の親が行います。両方の親が親権を停止された場合、もしくは一人親の場合は、親族や児童福祉施設などが未成年後見人となり、その生活を支えます。
なお、親権が停止しても法的な親子関係は変わらないため、親が子どもに対して持つ扶養義務や、子どもの相続権は保持されます。
2. 親権停止申し立ての手続きの流れ
親権停止を申し立てる際には、次のような条件や手続きが必要になります。
(1)親権停止の申し立てができる人
まず、親権停止の申し立てができるのは、以下に該当する人です。
- 子ども本人
- 親族
- 児童相談所の所長
- 未成年後見人もしくは未成年後見監督人
- 検察官
未成年後見監督人とは、未成年後見人が適切に子どもの監護や養育を行っているか、監督する人を指します。
(2)申し立て先と必要書類
親権停止の申し立ては、子どもの住所を管轄する家庭裁判所に以下の書類を送付して行います。
- 申し立て書
- 申し立てを行う本人の戸籍謄本
- 親権者と子どもの戸籍謄本
- 親権停止が必要な理由を証明する書類・資料
- 所定額の収入印紙および郵便切手
3. 親権停止の申し立てをするなら弁護士に相談を
親権停止は子どもを保護するための重要な措置ですが、親子関係に重大な影響をおよぼすため、裁判所はこの種の申し立てに対して慎重な態度を取ります。特に親族による申し立ては、児童相談所による申し立てに比べて却下されることが多い傾向です。
したがって、親権停止によって子どもを助けられる可能性を高めるためには、必要十分なサポートを受けられるという観点から弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は法律の専門家としてのノウハウを活かして、申し立てに必要な書類の準備はもちろん、裁判所による親権停止の判断を後押しする証拠書類の準備や陳述などをサポートします。また、子どもが今も虐待を受けており、その保護を急ぐ場合は、審理前に親権を一時停止させる「保全処分」を申し立てることも可能です。
親子関係に割って入り、親権停止を求めるのは、申し立てする側にとっても非常に悩ましい決断だと思います。どのような対処をすればその子どもにとって一番いいのか、弁護士と相談しながら最善の結果を目指しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年06月09日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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