子どもが学校で集団いじめに遭った! 対処法と相談窓口を紹介
子どもが学校でいじめに遭った場合、親には迅速かつ適切な対応が求められます。近年ではいじめの方法が多様化し、対応がより難しくなってきています。
本コラムでは、集団いじめの事例や起こる理由、子どもが集団いじめに遭った場合の相談窓口や法的手段について解説します。
1. 集団いじめの実態、集団いじめが起こる理由
集団いじめに対処するにあたっては、まずその実態を知ることが大切です。
(1)集団いじめの事例
兵庫県西宮市の小学校で、男子児童が集団いじめの被害に遭いました。いじめに加担したのは、ほぼすべてのクラスメートでした。被害児童は「汚い」と悪口を言われ、使用する備品や持ち物を消毒されるなどのいじめを受け続け、適応障害と診断され不登校になりました。
学年担任にはいじめの認識が欠けていたようで、聞き取り調査も行われませんでした。また教育委員会には、被害者の親から学校に伝えないよう頼まれていた相談内容を学校側に漏らすなどのミスがありました。さらに、教育委員会はいじめに関する報告書を両親に渡す際、損害賠償請求に使用しないことを求めました。学校側は事態を受け、再発防止に努めるとしています。
出典:関西テレビNEWS「クラス29人中26人が加担した「集団いじめ」 西宮市教育委が最終報告書 両親は「なぜ気付いてあげられなかったのか…」」(2)いじめの構造
いじめを構成するのは、加害者と被害者、いじめを見て見ぬふりをする傍観者と面白がる観衆です。
観衆の存在によって、加害者はいじめを支持されていると感じ、いじめをエスカレートさせます。傍観者は、直接的にいじめに加担はしませんが、加害者は暗黙の支持と捉えて、結果的にいじめを助長することになります。
そして上記事例のような集団でのいじめは、大人数でしていることからいじめへの罪悪感が薄れることが多々あります。また、児童間で口裏を合わせれば証言を集めにくくなり、発覚が遅れるか、いじめの事実すら否定されるかもしれません。遊び感覚でいじめを行い、いじめられるのは「被害者が悪いから」と考える場合もあります。
巧妙かつ陰湿ないじめを児童だけで解決するのは困難であり、親や学校の介入が必要です。
2. 子どもが集団いじめを受けている場合の対処法と相談先
子どもが集団いじめ被害に遭った場合、親としては以下の対処法が考えられます。
(1)担任教師や学校への相談
まずは、子どもからいじめの内容の詳細を教えてもらい、現状を把握する必要があります。
子どもの要望を聞いたうえで、担任教師や学校にいじめ被害を報告しましょう。担任教師が加害者や周囲に働きかけることで、いじめが終息する場合もあります。担任教師が対応してくれない場合は、学年主任や校長に相談して、事態の改善を図りましょう。
学校に相談しても、学校が及び腰で、なかなか対策に動いてくれない場合もあります。しかし、学校は、児童などからいじめに関する相談を受けた場合は、速やかに、いじめの事実確認のための措置を取り、その結果を学校の設置者に報告する義務があります(いじめ防止対策推進法23条2項)。また、学校は、複数の教職員や心理などの専門家からなるいじめ防止対策のための組織を設置することとされています(同法22条)。
そのため、子どもの親としては、相談後に学校がどのような対応をしたのか(いじめに関する調査を実施したか、いじめ防止対策のための組織に報告したか、など)、学校に対して進捗確認・情報共有などを求めていくことが望ましいと考えられます。
(2)いじめの証拠集め
被害者の証言だけで他にいじめの証拠がない場合は、相談しても学校側が動いてくれない場合もあるかもしれません。証拠がないと、いじめの事実を否定されるおそれがあるため、できるだけ多くの客観的な証拠を集めることが重要です。
壊された物品や録音した音声などは有力な証拠になります。また、SNS上の悪口などを見つけたら、画面をスクリーンショットなどで保存しておきましょう。友人などの証言も大事な証拠になります。けがを負わされた場合は、医師の診断を受け、診断書を取得するとよいでしょう。目に見える証拠を用意しにくい場合は、されたことや言われたことの詳細を日付別に記録しておきます。
(3)各種窓口への相談
証拠を提示しても学校が対応してくれるとは限らず、あってはならないことですが、いじめを隠蔽(いんぺい)しようとする可能性もあります。そのような場合は、教育委員会や以下の窓口に相談しましょう。また、学校や教育委員会、以下の窓口とのやり取りも証拠として記録を残しておきましょう。
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文部科学省「子供のSOSの相談窓口」
SNSや電話で相談できます。近隣の相談窓口も紹介しています。
電話相談は、「24時間子供SOSダイヤル」(通話料無料)として、夜間・休日を問わず、24時間電話で相談を受け付けています。
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法務省「こどもの人権110番」
電話やメール、LINEでの相談が可能です。
早期解決を望む場合は、上記の相談先に加えて弁護士への相談もおすすめです。
3. 学校での集団いじめについて弁護士ができること
弁護士に依頼すれば、被害者の代理人として学校側や加害者と交渉してくれます。被害者や被害者の親は、弁護士からの法的サポートを受けられることで精神的安定を得られます。加えて、学校側や加害者と対面して交渉するという心理的負担も軽減されるはずです。
さらに弁護士が介入することで、学校が事態を深刻に受け取り、対応してくれるようになるかもしれません。
弁護士が学校にいじめの実態調査を要求することで、スムーズに証拠を集められるようになる可能性が高まりますし、これまでの調査内容に疑念がある場合は再調査の要求も可能です。また、弁護士を通していじめの再発防止を呼び掛けることで、抑止力になることも期待できます。
弁護士が交渉しても学校側や加害者がいじめを認めない場合は、不法行為による損害賠償請求(民法第709条)や、刑事告訴(刑事訴訟法第230条)などの法的手段をとることも考えましょう。
出典:e-Gov法令検索「民法」 出典:e-Gov法令検索「刑事訴訟法」被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、壊された物品の費用、けがを負わされた場合は治療費を加害者や加害者の親に請求できます。
また、安全配慮義務を果たしていないなど、学校や担任教師に落ち度があった場合は、学校側にも損害賠償請求が可能です。ただし、私立学校の場合は学校や担任教師への請求が可能ですが、国公立学校の場合、請求相手は国や地方公共団体になる点に注意しましょう。
まずは示談交渉を行い、相手が拒否すれば民事訴訟を提起する、という選択があります。暴行や脅迫などを受けていた場合は、刑事告訴を行いましょう。
弁護士は、被害者側の選択に応じて証拠収集のサポートをしたり、交渉、被害届・告訴状の提出や訴訟手続きを代行したりしてくれます。学校での集団いじめには、迅速かつ適切な対応が不可欠です。各種窓口や弁護士に相談し、早期解決を図りましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年07月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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