部活動中の事故! 法的責任は誰に生じるか?
中学校や高校の部活動において、怪我をしてしまうことは珍しいことではありません。しかし、部活動の顧問教師や学校側の安全対策が不十分であったことが原因で怪我をした場合には、学校や教師に対して損害賠償請求することが可能な場合があります。
今回は、部活動中の事故に関して誰に法的責任が生じるのかについて解説します。
1. 部活動の事故に法的責任は生じるか?
学校の部活動中に事故が発生した場合には、どのような法的責任が生じるのでしょうか。
(1)部活動中の事故と法的責任
学校指導要領に基づくと、部活動は、学校教育の一環として教育課程との関連性が図られるよう留意するべきであるとされています。そのため、部活動も教育活動の一環としてとらえられています。
また、部活動顧問には、「生徒を指導監督し事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務のあることを否定することはできない」(最二小判昭和58年2月18日)として、法的責任があることを認めています。
そして、部活動の指導教諭の注意義務としては、「危険から生徒を保護するために、常に安全面に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務」があるとしています(最一小判平成9年9月4日)。
なお、部活動には、野球部、柔道部、サッカー部などの怪我の危険性の高いものから、文化系の部活などの怪我の危険性が低いものまで多種多様ですので、個別的に判断していく必要があります。
部活動中の事故における過失を判断するにあたっては、以下の諸要素を総合的に考慮して判断します。
- 部活動の性質・危険性の程度
- 生徒の学年・年齢
- 生徒の技能・体力
- 教育指導水準など
(2)生徒の判断能力との関係
部活動の顧問教諭に要求される注意義務の内容および程度については、被害生徒の判断能力との関係で注意する必要があります。すなわち、被害生徒の判断能力が低ければ低いほど、顧問教諭に求められる注意義務の内容および程度は高度なものになっていきます。
たとえば、中学生については、小学生のように一般的に判断能力が低いとはいえませんが、高校生のように判断能力を高いとも言いがたい年齢であることから、具体的な行為や状況によって個別的に判断能力の有無を判断する必要があります。
他方、高校生については、一般的にほぼ成人に近い判断能力を有していると考えられるため、顧問教諭は、生徒の自主的判断と行動を尊重しつつ、その逸脱を防止すれば足りると考えられています。
2. 部活動の事故は、教師・学校へ損害賠償請求できるか?
部活動中に事故が発生した場合には、誰に対して損害賠償請求をすることができるのでしょうか。
(1)日本スポーツ振興センターからの災害給付金
独立行政法人日本スポーツ振興センターでは、学校の管理下において生じた事故に対して、災害共済給付を行っています。
そのため、部活動中の事故によって負傷した場合には、日本スポーツ振興センターに災害給付金の申請をすることによって、医療費、障害見舞金、死亡見舞金などの各種災害給付金が支給されます。
しかし、災害給付金は、被害生徒が被ったすべての損害の回復を図るものではありませんので、部活動中の事故によって後遺症が生じた場合や慰謝料を請求する場合には、以下のように請求していくことになります。
(2)国公立学校の場合
国公立学校の場合には、国家賠償法1条によって学校や教師個人ではなく、国または地方公共団体が損害賠償責任を負うことになります。そして、国公立学校では、部活動の指導教諭の故意または過失によって違法に生徒らに損害を与えた場合には、被害生徒の親は、国または地方公共団体に対して損害賠償請求をすることができます。
(3)私立学校の場合
私立学校の場合には、国公立学校のような国家賠償法の適用はありませんので、民法709条、715条1項などによって部活動の指導教諭や学校に対して損害賠償請求をすることができます。
使用者責任においては、学校設置者が「選任監督につき相当の注意をしたこと、または相当の注意をしても事故が生ずべきであったこと」を証明したときには、免責されることになります(民法715条1項ただし書)。しかし、判例では、免責を容易に認めようとはしない傾向にあります。
どちらのケースにおいても、損害賠償請求をするためには、関係者への調査を含めた証拠収集や、学校・教育委員会との交渉が必要となり、一般の方にはハードルが高い行為となるでしょう。部活動の事故において学校側に責任があるのではないかと悩んだら、まずは弁護士に相談し、法的見解や具体的な対策を聞いてみることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2022年02月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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