- (更新:2022年04月26日)
- 学校問題
モンスターペアレントとは? 適切な対応でトラブルを回避する方法
教師の仕事はやりがいも大きい反面、授業以外の負担も大きいと言われています。
特に、いじめ問題が起きた場合は、子どもだけでなく保護者への対応が重要です。学校側としては良かれと思ってやったことが、保護者からのクレームにつながることもあるからです。
また、最近では、モンスターペアレントという表現にあるように、保護者からの行き過ぎた苦情に教員側が苦労することもあります。もしも、モンスターペアレントから苦情が来た場合、どんな対処をすべきなのでしょうか。
1. モンスターペアレントとは?
(1)モンスターペアレントと特徴
学校が対応すべき範囲を超えた要求を、繰り返し行って、学校の業務に支障を生じさせる保護者のことです。クレーマーの一種ですが、一般的なクレーマーと異なり、児童や生徒の保護者である点で学校が慎重な対処を求められる点が特徴です。
(2)典型的なモンスターペアレントの類型とは
モンスターペアレントには、
➀特に問題がないのに学校側に苦情を繰り返すパターン
➁何らかの問題が起きた時に、学校側に過剰な対応を求めるパターン
があります。それぞれ、具体的な例を挙げておきます。
➀特に問題がないのに学校側に苦情を繰り返すパターン
- 子どもの成績が伸びないとき、担任の指導力不足だとして謝罪を要求する
- 遠足の行き先が子どもの教育にふさわしくないとして、行き先の変更を要求する
- 子どもが担任の先生を好きになれないという理由で、担任を変えるように要求する
- 担任の先生が子どものルール違反に注意したところ、子どもがひどく傷ついたと言って損害賠償を要求する
➁何らかの問題が起きた時に、学校側に過剰な対応を求めるパターン
- 子ども同士のけんかについて、学校が監督不行き届きだとして、しつこく謝罪を要求する
- 子どもがいじめられた場合、学校の調査をすべて否定し、毎日学校に押しかけて再調査や謝罪を要求し続ける
このような態度が見られたら、慎重な対処が求められます。
2. モンスターペアレントに対する適切な対応方法
モンスターペアレントが学校側にクレームをつけてきたとき、学校側はどんな対応をすべきなのでしょうか。
(1)学校としての法律上の義務を理解する
そもそも、学校内でトラブルが起きた時に、学校が法的にどんな義務を負っているのか、理解しておく必要があります。原則として、学校としては、法的義務を果たせば、責任を問われることはないからです。
そして、裁判例では、学校には学校教育の場において児童の生命・身体等の安全について万全を期すべき義務があるとしつつ、この義務は以下の二つで限定されるとの判断が示されたものがあります。
- 義務の範囲は、学校における教育活動及びこれと密接に関連する学校生活関係に限定される
- 義務が生じるのは、当該事故の発生した時間・場所・加害者と被害者の年齢又は学年・性格・能力・交友関係・学校側の指導体制・教師の置かれた教育活動状況等の諸般の事情すべてを考慮して、事故発生の危険性を学校側が具体的に予見することが可能であるような特段の事情がある場合のみ
(福岡地方裁判所平成元年8月29日判決)
子ども同士のトラブルは、学校生活につきものであり、それ自体を完全に防ぐことはできません。上記の判断を前提とすれば、学校で起きた子ども同士のトラブルすべてについて学校側に法的責任があるわけではありません。学校側の法的義務は、上記の範囲に限定されると言えます。
もちろん、法律上の責任が問われないとしても、保護者がすぐに納得するとは限りません。モンスターペアレントにしっかりと対応するためには、どんな手順をとればいいのでしょうか。
(2)相手の言い分はしっかりと聞く
モンスターペアレント対応でもっとも重要なことは、相手の不満をしっかりと吐き出してもらうことです。話を聞くことと、相手の要求に応じることは、別のことです。
話を聞かずに対応を打ち切ってしまうと、相手が逆上して、さらに怒鳴り込んだり、裁判に訴えるなどと言い出す可能性があります。たとえ、納得できない話であったとしても、最初は反論せずに、相手の話を淡々と聞くことを心がけましょう。
(3)謝罪する範囲を決めておく
モンスターペアレントとの対応場面では、早期に謝罪したほうがうまくいくこともあります。謝罪することと、相手の言い分を認めることは別のことです。
そして、学校が最初に謝らなかったために、相手の怒りが噴出し、まとまる話もまとまらないということがよくあります。
学校側としては、どこまでが学校の責任なのか、責任を負わないとしても謝罪すべき部分があるのか、早急に判断をつけて、謝罪すべきところは早めに謝罪しましょう。
(4)会話はすべて記録する
モンスターペアレントとのやりとりは、全て記録しておきましょう。後から、学校の対応について苦情を言われた時にしっかりと対応するためです。
また、相手が会話を録音している場合、自分に都合のよいところだけを切り取って、教師に不当な発言があったなどと主張されるリスクもあります。そうした場合に備えて、必ず録音をとりましょう。
(5)対等な立場で発言する
モンスターペアレントに対しては、保護者と教員とが、子どもの成長を願う対等な立場にあることを理解してもらうことが重要です。
トラブルになりやすいのは
- 教師が保護者に対して上から目線で話をする
- 教師が保護者にこびへつらうような低姿勢すぎる態度をとる
といった場合です。どちらも、保護者と学校が対等な関係であるという視点に欠けていることがわかるでしょう。
モンスターペアレントといえども、苦情の根源には、子どもを健全に成長させたいという思いがあると、学校側が信じて対応することも大事です。
モンスターペアレントの対応は、教員にとってもっとも大変な仕事といっても過言ではないでしょう。1人で抱え込まず、校長や他の教員たちと連携をとりながら、慎重に対応することをおすすめします。
対応に迷った場合や、裁判などに進みそうな場合は、弁護士などの専門家への相談も検討されるとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2022年04月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
学校問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?