いじめ防止対策推進法とは? わかりやすく解説

いじめ防止対策推進法とは? わかりやすく解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

「いじめ防止対策基本法」は、学校に在籍する児童・生徒の尊厳を保持するため、いじめの防止等のための対策を定めた法律です。

今回は、いじめ防止対策基本法が制定された背景や、いじめ防止対策基本法の概要・ポイントを解説します。

1. いじめ防止対策推進法が制定された背景

いじめ防止対策基本法は、2013年6月28日に議員立法によって国会で可決・成立し、同年9月28日に施行されました。

いじめ防止対策基本法が制定されたのは、滋賀県大津市の中学生がいじめを受けた末に自殺した事件について、市教育委員会や学校側のずさんな対応が問題視されたためです。

同事件によって、学校におけるいじめが、時には生徒の命を奪いかねないことが広く認識されました。その結果、教育委員会・学校などが連携していじめ対策に取り組む仕組みを整備するため、いじめ防止対策推進法が制定されたのです。

2. いじめ防止対策推進法のポイント

いじめ防止対策推進法の重要なポイントとして、以下の4点の概要を解説します。

  • 「いじめ」の定義
  • いじめ防止基本方針
  • 学校・教職員の義務
  • 重大事態への対処

(1)「いじめ」の定義

いじめ防止対策推進法第2条第1項において、「いじめ」は以下の要件を満たす行為であると定義されています。

  • 学校に在籍する児童または生徒(=児童等)に対する行為であること
  • 当該児童等が在籍する学校に在籍しているなど、当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う行為であること
  • 児童等に対して、心理的または物理的な影響を与える行為であること(インターネットを通じて行われるものを含む)
  • 対象となった児童等が心身の苦痛を感じていること

(2)いじめ防止基本方針

文部科学大臣は、関係行政機関の長と連携協力して「いじめ防止基本方針」を定めるものとされています(いじめ防止対策推進法第11条第1項)。

いじめ防止基本方針とは、いじめの防止等のための対策を総合的・効果的に推進するための基本的な方針です。2013年10月11日に文部科学大臣によって決定・公表された後、2017年の改定を経て現在に至っています。

(参考:「平成29年3月16日「いじめの防止等のための基本的な方針」の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定について(通知)」(文部科学省))

また各地方公共団体は、いじめ防止基本方針を参酌した上で、地域の実情に応じた「地方いじめ防止基本方針」を定めることが努力義務とされています(同法第12条)。

さらに各学校は、いじめ防止基本方針と地方いじめ防止基本方針を参酌した上で、学校の実情に応じた「学校いじめ防止基本方針」を定めることが義務付けられています(同法第13条)。

(3)学校・教職員の義務

学校におけるいじめを防止するため、学校と教職員には以下の取り組みが義務付けられています。

①学校の義務

  • すべての教育活動を通じた道徳教育および体験活動等の充実を図ること(いじめ防止対策推進法第15条第1項)
  • いじめ防止の重要性に関する理解を深めるための啓発、その他必要な措置を講ずること(同条第2項)
  • いじめを早期に発見するための定期的な調査、その他必要な措置を講ずること(同法第16条第1項)
  • 児童・生徒・保護者向けの相談体制を整備すること(同条第3項)
  • 家庭や地域社会などと連携して、いじめを受けた児童・生徒の権利利益が擁護されるよう配慮すること(同条第4項)
  • 教職員に対し、いじめ防止等の対策に関する研修の実施など、いじめ防止対策に関する資質の向上に必要な措置を計画的に行うこと(同法第18条第2項)
  • インターネットを通じて行われるいじめを防止し、効果的に対処できるように、児童・生徒・保護者に対して必要な啓発活動を行うこと(同法第19条第1項)
  • 教職員からいじめに関する通報を受けた際、いじめの事実の有無の確認などの措置を講じ、その結果を学校の設置者に報告すること(同法第23条第2項)
  • いじめの事実が確認された際には、いじめをやめさせ、再発を防止するための対応を行うこと(同条第3項~第6項)

②教職員の義務

  • 児童・生徒からいじめに関する相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、在籍する学校への通報その他の適切な措置をとること(同法第23条第1項)
  • いじめの加害児童・生徒に対して、適切に懲戒を加えること(ただし体罰は認められない。同法第25条、学校教育法第11条)

(4)重大事態への対処

以下のいずれかに該当する事態は「重大事態」と位置付けられ、各学校には調査・報告・情報提供・対処・再発防止等の義務が課されています(いじめ防止対策推進法第28条以下)。

  • いじめにより、児童・生徒の生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき
  • いじめにより、児童・生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき
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