学童保育でのいじめトラブル。対処法と保護者にできることは?

学童保育でのいじめトラブル。対処法と保護者にできることは?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

いじめ問題は学校の中だけで起こるとは限りません。仕事などの事情で、保護者が利用する学童保育(学童クラブ)でもいじめが起きる可能性はあります。

本コラムでは、学童保育でいじめが起きる原因をはじめ、いじめ問題に対して指導員・保護者それぞれができる対処法について解説します。

1. 学童保育で起こるトラブル

多くの子どもが共同で活動する学童保育では、大小問わずさまざまなトラブルが生じがちです。たとえば、遊んでいるときに転んだり遊具から落ちたりして怪我をしてしまうことや、ささいなことから他の子どもとけんかしてしまったりすることは珍しくありません。

このようなトラブルから、人間関係がこじれて、いじめ問題が生じてしまうこともあります。指導員や保護者は、子どもたちが学童保育で安心して過ごせるように、こうした問題が起きる可能性も想定して予防策や対処方法を考えなければなりません。

学童保育でけんかやいじめなどの人間関係でのトラブルが起こる原因は多種多様で、感情のコントロールがうまくできず、お菓子やおもちゃの取り合いなどのちょっとしたことをきっかけに、けんかが起こることも少なくありません。

珍しい名前だったり、特徴的な容姿、国籍や人種だったりなど、本人にはどうにもならないことが、からかいの対象になり、いじめへ発展することも考えられるでしょう。

また、学童保育ならではの難しさとして、小学校の学級とは違って、1年生から6年生までの幅広い年齢の子どもたちが同じ空間内で生活することも挙げられます。これによって子どもの人間関係が複雑化し、「下級生は上級生にさからえない」など、ゆがんだ上下関係が作られてしまいがちです。

また、加害児童にとって、いじめがストレス発散の手段として機能している場合もあります。このケースで懸念されるのは、このストレスは学童保育内で生じたものばかりでなく、学校生活や家庭内など別の場所を起因とする場合があることです。

指導員がしっかり子どもたち全員を見守っている環境であれば、けんかやいじめは生じにくいですが、完全に防止するのは困難と言えるでしょう。

このように、学童保育での人間関係トラブルは非常に複雑な原因によって生じるものであり、いくつもの要因が絡み合っていることも多いです。したがって、けんかやいじめの原因を把握するには、その時々の状況や背景、子どもたちの個性など、さまざまな観点から考慮しなければなりません。

2. 学童保育のいじめ問題における指導員の役割

学童保育のいじめ問題において指導員が果たす役割は非常に重要です。まず基本的な前提として、学童保育には次のような社会的役割が求められています。

放課後児童クラブにおける育成支援は、子どもが安心して過ごせる生活の場としてふさわしい環境を整え(中略)子どもの健全な育成を図ることを目的とする。

引用:厚生労働省「放課後児童クラブ運営指針解説書(改訂版)

いじめが横行している状態では、安心できる環境・健全な状態とは言えませんので、学童保育の指導員は当然その予防や対処に努め、いじめの予防や早期発見・早期解決に対して積極的に取り組む必要があります。

(1)いじめ予防のための対策

では、指導員はいじめを予防するために、具体的にどのような対策をすべきなのでしょうか。

第一に、「いじめはいけないこと」というルールをしっかり子どもに教える必要があります。友だち同士でのけんかとは違って、いじめは加害者が被害者の権利や尊厳を一方的に傷つける決して許されない行為です。

指導員はその原則を子どもに教育し、いじめが起こらないように価値観や雰囲気、人間関係の醸成に努める必要があります。

また、常日頃から子どもたちの様子をチェックし、ストレスをためていないか、人間関係に悪い変化が起きていないかを見守ることも必要です。何か問題が起きたときに子どものほうから相談してもらえるように、良好な信頼関係を築くことも欠かせません。

子ども一人ひとりの様子を常に注意深くチェックし、ケアすることが、結果としていじめの予防につながります。

(2)被害児童へのサポートや加害児童への教育

いじめが発覚した場合、指導員は迅速に子どもたちに介入し、いじめをやめさせなければなりません。被害者と加害者が同じグループに属している場合はそれを変えたり、被害児童・加害児童の見守りを集中的に強化したりするなど、強硬な措置が必要です。

また、いじめに関する情報を被害児童・加害児童それぞれの保護者や学校と共有することも重要です。「いじめ防止対策推進法」の第23条では、いじめが発覚した場合、その事実を被害児童の学校へ通報するように定められています。場合によっては、加害児童の学校にも連絡していじめの防止や指導の協力を仰ぐ旨を専門家に相談すべきケースもあるでしょう。

先述の通り、いじめは複合的な要因によって起きがちなので、学童保育内だけでは根本的な問題解決に至れない場合もあります。指導員は、責任から逃れるためにいじめの事実を隠したり、問題の深刻さを過小評価したりするような対応は許されません。

いじめで傷ついた被害児童の精神的ケアをするのはもちろんですが、なぜいじめに走ってしまったのか、その根本的な原因の把握と解決に努めるよう、加害児童の心に寄り添った対応をするのも重要です。ただし、いかなる理由があってもいじめをしていい理由にならないことは必ず伝える必要があります。

3. 学童保育でのいじめ問題に対して保護者ができること

自分の子どもがいじめの被害に遭ったとき、保護者としては何をすべきなのでしょうか。

なによりも重要なのは、子どもの話をしっかり聞くことです。学童内でいじめを受けた子どもは、自尊心や自己肯定感を傷つけられ、まるで自分が他の人より劣った存在であるかのように感じてしまっているかもしれません。保護者としてはいじめの被害内容を聞くとともに、傷ついた子どもの心に寄り添って精神的なケアをする必要があります。

次に重要なのは、学童の指導員に相談することです。子ども同士または保護者同士だけでいじめの問題の解決を目指しても、加害児童の保護者がいじめの事実を認めず、状況が一向に改善されない可能性もあるため、問題解決が難しい場合もあります。

その点、指導員に相談すれば、学童保育内で事実関係を確かめたり、子どもたちの様子に注意してもらったりするなどの対応を期待できます。万一、指導員が非協力的な場合は、担任の先生に相談することも検討しましょう。

それでも問題が解決しない場合は、子どものために学童保育の利用を一時的にやめるか、新たな預け先を探すことをおすすめします。これまで公立の学童保育に通っていた場合は、民間に切り替えるのもひとつの手です。民間の学童保育では、英語や体操などの習い事に対応している場合もあるので、子どもの興味関心に寄り添ったところを選べば、前向きな気持ちで新しい環境に移りやすくなります。

学校と同じく、学童保育でもいじめ問題が起きてしまう可能性はゼロではありません。保護者としては、その不安から目を背けず、子どもたちの様子を常日頃から注意深く見守ることが大切です。

また、いじめ加害者の保護者がいじめの事実を認めなかったり、指導員が問題を隠蔽しようとしていたりする場合には、専門家である弁護士に相談することも検討してみてください。

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