いじめ被害者から内容証明が届いたら。適切な対処法は?
「あなたの子どもからいじめを受けている」というような内容証明郵便が届いた場合、突然の出来事にパニックになったり戸惑ってしまったりする方が多いでしょう。もし、他の子どもの親からいじめを追及する内容証明郵便が届いたら、どのように対応したらよいのでしょうか。
今回は、内容証明郵便の概要や効果、相手が送る目的、無視した場合のリスクや対応方法を解説します。
1. いじめを追及する内容証明郵便が届いたら?
内容証明郵便とは、トラブルが起こった際、当事者間でやり取りをするときによく使われる文書で、主に法的な問題に発展する可能性が高いトラブルの際に利用されることが多いです。ここでは、内容証明郵便とは何か、どのような効力があるのかについて解説します。
(1)内容証明郵便とは
一般書留郵便物の内容を証明する特別な郵便のことで、郵便局が「誰から・誰に・どのような内容で・いつ差し出されたか」を証明します。
基本的に内容証明郵便は、「この日にこの人宛に郵便を送ったこと」「郵便の文書を証拠として残してあること」を証明するものですので、受け取ったからといって裁判所に呼び出されるということはありません。
(2)いじめを追求する内容証明郵便の目的
相手が内容証明を送る目的としては、以下のような理由が挙げられます。
- 権利の侵害を明確に主張するため
- 法律に基づく必要な通知を行うため
- 受取人に対して心理的なプレッシャーを与えるため
内容証明郵便自体には法的な効果はないですが、内容証明郵便を送ることで「今後、法的措置に移行するつもりである」というような姿勢を示すことができます。
そのため、被害者家族からいじめを追求する内容証明郵便が届いたら、相手は意思表示を証拠として残すことで、訴訟提起などの法的アクションを起こすつもりであることが予想されます。
2. 届いた内容証明郵便を無視した場合のリスク
いじめを追及する内容証明郵便が届き、それを無視し何も対応しなかった場合、以下のようなリスクが考えられます。
(1)相手の感情を逆なでしてしまう
いじめがあったことを主張する内容証明郵便を送ったにも関わらず、何の返答もないと、被害者家族としては怒りの感情が倍増するでしょう。こうしたケースでは、何度も内容証明郵便を送ってきたり、いじめ被害について周囲の保護者にも広めたりするといった行動に出ることもあり、より事態が悪化する可能性も考えられます。
(2)訴訟に発展する可能性が高まる
被害者家族は、内容証明郵便を無視されたことで感情が逆なでされ、訴訟などの法的手続きを開始するかもしれません。内容証明郵便によって和解交渉を提案している可能性もあり、何のリアクションもなければ「話し合いを拒否された」と捉えられてしまうでしょう。
訴訟を起こされると、長い期間にわたり法廷で争うことになるので、時間的・金銭的負担に加え精神的な負担も背負います。そのため、内容証明郵便の内容が正当・不当どちらの場合も、基本的に返答を行うことが大切です。返答後、相手からのアクションを待つ間に、今後についての対応を検討することもできます。
(3)刑事告訴される場合も
いじめの内容によっては、刑事告訴される可能性もあります。たとえば、暴行・傷害、金品のだまし取り、万引きの強要など、犯罪に該当する行為があった場合です。この場合、証拠を基に捜査が行われ、暴行罪や傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪などの罪が成立すれば、裁判所から令状が出され、たとえ未成年であったとしても逮捕される可能性があります。
刑事告訴により、何らかの罪が成立し処分が行われることで、加害者家族の生活は一変してしまいます。いじめが事実である場合、まずは内容証明郵便の返答を早期に行い、謝罪を含めた対応を検討することが重要です。
3. いじめ被害者へ取るべき適切な対応
いじめ被害者からの内容証明郵便には、相手をヒートアップさせないためにも、とにかく早期に対応することが重要です。内容証明郵便が届いた場合の対応について解説します。
(1)まずは事実関係の確認を
前述のように、内容証明郵便はその内容が必ずしも正しいと証明するものではありません。あくまで、いじめの被害者とされる差出人の主張を記載したものです。もし「あなたの子どもがこのようないじめをしました」という内容であっても、それをそのまま受け入れることも、反対に「ありえない」と受け入れないこともよくありません。とにかく、冷静に客観的な視点で事実確認をします。
まずは子どもに、いじめが事実なのかを冷静に聞き出すことが大切です。子どもから真実を話してもらうには、コミュニケーションをしっかりとり、悩みや自分の気持ちを打ち明けやすい環境を整えることも重要です。この際、「いじめはしてないよね?」というような誘導はいけません。また、たとえ子どもが否定しても安心せずに、周囲の関係者などに事実関係を確かめましょう。
いじめが事実である可能性があれば、何らかの形での謝罪が必要です。いじめの内容や被害者家族の心情にもよりますが、直接謝罪するか、または学校関係者などの第三者を交えて行うかを検討しましょう。
(2)対応に困ったら弁護士に相談
もしも内容証明郵便による相手の主張が不当である、もしくは判断できない場合、まずは弁護士に相談することをおすすめします。当事者同士の主張が食い違っている場合、法的な観点からのアドバイスを受けられます。
また、「訴訟を検討している」といった記載がある場合も、弁護士のアドバイスを受けつつ冷静に対応することが重要です。いじめの内容が暴行・傷害などの犯罪行為に該当し、被害者から法的な請求を受けた場合も、すぐに弁護士に相談しましょう。
子どものいじめを追及する内容証明郵便は、早期かつ冷静に対応することが重要です。しかしながら、安易に相手に返答したことで、トラブルが大きくなってしまう場合もあります。そのため、内容証明郵便が届いた段階から、法律の専門家である弁護士に相談するとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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