高校生なのに親にGPSを付けられている…これって毒親?

高校生なのに親にGPSを付けられている…これって毒親?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもの居場所を、親が携帯電話やスマートフォン端末のGPS(位置情報)で管理・把握することは、いくら保護者であっても不当な過干渉に当たる可能性があります。

GPS等による親の過干渉に悩んでいる中学生・高校生の方は、行政の窓口・民間シェルター・弁護士などに相談してみましょう。

今回は、親が子どもの居場所をGPS機能で管理することの法的な問題点や、GPSを用いて過干渉してくる親への対処法などを解説します。

1. 親が子どもをGPSで管理する理由

未成年者の親は民法上、親権者として子どもを監護・教育する権利と義務を負っています。しかし、いくら監護・教育のためとはいえ、親が子どもの居場所をGPSで管理するのは、行き過ぎではないのでしょうか?

それは、例えば反抗期・思春期の子どもが危ない場所に出入りすることを防ぎたいなど、純粋な親心によるものかもしれません。

中には、子どもを思い通りにコントロールしたい、束縛したいという思いからGPS管理を行う親も存在します。この場合、少しでも子どもが意に沿わない行動をすると、暴力などの虐待に発展するおそれがあるので要注意です。

2. 親が子どもをGPSで管理するのはプライバシー権侵害?

GPSによって親に居場所を常に把握されている状態は、「プライバシー権」の侵害に当たるのではないかと直感する方もいらっしゃるでしょう。

法的には、GPSでの管理は、プライバシー権、人格権侵害による不法行為に当たる可能性があります。

(1)GPS管理とプライバシー権侵害

もともと、プライバシー権は、「私生活上の事柄をみだりに公開されない法的保障・権利」と解されていました(東京地裁昭和39年9月28日判決、「宴のあと」事件参照)。

この点、子どもの居場所は私生活上の事実であるものの、GPS管理を行うことで、居場所に関する情報が「公開」されるわけではありません。

もっとも、私生活が一般に公開されない場合であっても、私生活上の情報をほかの人に見られたくないという権利も、プライバシー権として保護されます。

例えば、刑事裁判についての判例ですが、捜査機関がGPSを勝手に人の車に取り付けて捜査を行うことは、「個人の行動を継続的、網羅的に把握することを必然的に伴うから、個人のプライバシーを侵害し得るもの」であるとしています(最高裁平成29年3月15日判決)。

親といえども、不必要にGPSで子供の行動を監視し続けることはプライバシー権の侵害となりうるでしょう。

(2)過度なGPS管理は不法行為に当たり得る

そして、GPS管理等の手段を用いて、子どもの生活を親が過度に制限する行為は、子どものプライバシー権や人格権を侵害する「不法行為」と評価される可能性があります(民法第709条)。

また、勝手に子どものスマートフォンのパスワードを盗んで、本人に無断でロックを解除し、GPSアプリをインストールすることも、不法行為に該当しうるものです。

不法行為に該当する場合、慰謝料請求の対象となるほか、後述する裁判所による接近禁止の仮処分命令の対象にもなり得ます。

3. GPSで過干渉してくる親への対処法

GPSで親からの過干渉を受けてストレスを抱えている場合は、一人で抱え込むことなく、行政の窓口・民間シェルター・弁護士などに相談することが大切です。

(1)行政の窓口に相談する

親による虐待・過干渉などについては、複数の行政の窓口が相談を受け付けています。主な相談窓口は、以下のとおりです。

①児童相談所

子どもの保護を目的として設置された行政機関です。親による虐待や過干渉などの問題について相談できます。

問題状況が深刻な場合は、児童相談所長が子どもを一時保護するケースもあります。

(参考:「全国児童相談所一覧」(厚生労働省))

②子どもの人権110番

法務局職員または人権擁護委員に対して、虐待や過干渉などの問題を相談できます。

(参考:「子どもの人権110番」(法務省))

③警察

GPS管理などの過干渉にとどまらず、親から暴力などの虐待を受けている場合には、警察に相談することもひとつの選択肢です。

(2)シェルターに逃げ込む

民間の子どもシェルターでは、何らかの事情で家に居られない子どもを保護する活動を行っています。

親からかくまってくれるうえに、無料で食事・日用品・宿泊場所などの提供を受けることができるので、親の過干渉がひどい場合には利用を検討してみましょう。

(参考:「子どもシェルター全国ネットワーク会議」(社会福祉法人カリヨン子どもセンター))

(3)接近禁止の仮処分を申し立てる

児童相談所長による一時保護や、民間シェルターの保護を通じて親から距離を取った後、親による再度の干渉を法的に防ぐには、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てることが考えられます(民事保全法第23条第2項)。

親からの暴力・過干渉によって、子どもが精神的に大きなダメージを受けるなど、著しい損害または急迫の危険が生じるおそれがあると認められれば、裁判所は親に対して接近禁止の仮処分を発令します。

接近禁止の仮処分を申し立てたい場合には、弁護士への相談がおすすめです。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年09月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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