児童相談所に一時保護された子どもの引き取り条件は?
令和5年2月、救急搬送された子どもが搬送先の病院で死亡しました。その後、子どもの死亡は母親による頭部への暴行が原因だった疑いがあり、警察は母親を傷害致死の容疑で逮捕しました。
そして、この事例で亡くなった子どもは、出生直後に児童相談所により「一時保護」されており、事件前に解除されたばかりだったそうです。
では、児童相談所による一時保護とはどのような措置なのでしょうか? 一時保護された子どもを引き取るにはどんな条件を満たせばよいのでしょうか? ここではそれらの点について解説します。
1. 児童相談所の一時保護とは
児童相談所による「一時保護」とはどのような措置なのでしょうか?
(1)一時保護とは? 目的や保護の理由
「一時保護」とは、児童相談所長の判断によって一時的に子どもと保護者を引き離す措置です。「保護」という名を冠しておきながら親元から引き離すという措置に違和感をおぼえる方も多いでしょう。
しかし、一時保護は児童福祉法第33条に基づき、児童の安全確保と心身や生活環境を把握する目的で行われるものです。
そして、その中でも特に保護者による虐待から子どもを守る目的があるため、児童相談所は「児童の安全を守るため」という強い姿勢で臨んできます。
(2)一時保護の期間
一時保護の期間は、その名のとおり一定期間です。児童福祉法33条3項によると、一時保護の期間は「一時保護を開始した日から2か月を超えてはならない」と定められています。つまり、一時保護の期間は原則2か月が限界です。
ただし、その例外として、児童相談所長または都道府県知事が「必要があると認めるとき」は引き続き一時保護をおこなうことができると定めています(同法33条4項)。そしてその場合、保護者が同意しなくても家庭裁判所の承認があれば延長可能です。
状況次第では、2か月を超えて長期の保護を受ける可能性もあると認識していた方がいいと思います。
2. 一時保護が解除される条件とは? 厚生労働省のチェックリスト
一時保護は、単に法律が定める期間が過ぎれば解除されるというものではありません。児童福祉法の考え方に照らすと、児童相談所長が「必要があると認めるとき」は一時保護が行われるので、解除されるのはその必要性がなくなったときです。
では、どのような条件を満たせば一時保護の必要がないと判断されるのでしょうか? この点は、厚生労働省が示している「親子分離の要否評価チェックリスト」が参考になります。
- 在宅では子どもの生命に危険が及ぶ
- 在宅では子どもの心身の発達を阻害する
- 子ども自身が帰ることを拒否する
- 家族・子どもの所在がわからなくなる可能性が強い
- 子どもが性的虐待を受けていた
- 子どもへの虐待を繰り返していた
- 子どもの状況をモニタリングするネットワークを構築できない
- 保護者が定期的な訪問・来所の相談を拒む
- 家庭内の著しい不和・対立がある
- 絶え間なく子どもを叱ったりののしったりする
- 保護者が虐待行為や生活環境を改善するつもりがない
- 保護者がアルコール・薬物依存症である
これらの項目をみると、保護者が子どもへの虐待行為を改めて生活環境を改善し、さらに児童相談所による指導を真摯(しんし)に受け止める姿勢があれば、一時保護の解除が期待できると考えられます。
もっとも、ここで挙げた項目は、法的な要件ではありません。上記はあくまで一時保護という強力な措置を行うにあたってどのように判断すればよいのかを示した基準なので、ケースごとにどの点が重視されるのかは異なるので注意が必要です。
なお、子ども自身の年齢が高く、自力でセーフティーネットワークを利用し虐待から逃げ出すことが可能と判断されれば、子どもの「帰りたい」という意思も尊重されます。
3. 子どもを引き取りたい! どうすればいい?
一時保護された子どもを早く引き取りたいと望むなら、ただ待っていてはいけません。解除を目指して積極的にアクションを起こす必要があります。
(1)任意の交渉で自主的な解除を求める
一時保護には、審査請求や取消訴訟といった法的手段によって解除を求める方法があります。
ただし、法的手段を取ると時間がかかり過ぎてしまううえに、実際に法的手段を選択しても解除が認められる可能性は決して高くありません。むしろ、法的手段を取ったとしても、一時保護が解除されるケースのほうがまれです。
一時保護の解除を目指すなら、児童相談所と任意の交渉を尽くして自主的な解除を求めたほうがよいでしょう。
もちろん、やみくもに「子どもを返してほしい」と求めるだけでは一時保護は解除されません。児童相談所がどのような点を問題として一時保護に踏み切ったのか、保護者としてどのような改善を尽くすべきなのかを理解したうえで話し合いに臨む必要があります。
問題点の整理や解除に有効な対策を立てるためには、経験豊富なアドバイザーの存在が不可欠です。任意の交渉に踏み切る前に、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
(2)延長や「28条措置」の回避を目指すには弁護士のサポートが必須
一時保護の期間は2か月までというのが原則ですが、児童相談所の判断次第ではさらに延長されるおそれがあります。
また、児童相談所から子どもを帰宅させず児童養護施設へと入所させる、いわゆる「28条措置」が取られるケースもあるので、親子が分離される期間が長くなってしまうかもしれません。
このような事態を回避するためにも、早い段階で弁護士に相談してサポートを求める姿勢が大切です。弁護士に依頼すれば、延長回避に向けた児童相談所との交渉や28条措置に対抗するための即時抗告などの対応を一任できます。
とくに、児童相談所が家庭裁判所に28条措置の承認を求める審判は短期で終結する傾向があるので、素早い対策が必須です。
児童相談所が「親子を分離させたほうがよい」と考えて一時保護に踏み切っているという背景を考えれば、保護者の言い分が素直に認めてもらえる可能性は高くありません。一時保護を解除して児童相談所から子どもを引き取りたいと望むなら、まずは弁護士への相談を急ぎましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年06月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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