毒親と関係を断ちたい! 親子間に接近禁止命令は出せる?
「毒親」などの言葉が使われるように、親子関係がこじれて関係を断ちたいといったケースは少なくありません。
この記事では、「接近禁止命令」を出せるのかどうか、また代わりにどのような方法が取れるのかについて解説します。お悩みのある方はぜひ参考にしてみてください。
1. 親子間にはDV防止法に基づく接近禁止命令は適用できない
(1)なぜ適用できないのか
もし、親子間でトラブルがあり距離を置きたいと考えた場合、ただ「近づかないでほしい」といったケースだったとしても、親に素直に聞き入れてもらえる可能性は低いと言えるでしょう。そこで、より効力を発揮させようとすれば、法的な規制に頼るしかないかもしれません。
「DV防止法」や「ストーカー規制法」では、保護命令のひとつとして「接近禁止命令」があり、もし相手がそれに従わなかった場合には刑事罰も与えられます。これを親子間でも適用できれば、相手から安易に近づかれずに済み、心身の平和を保てると考えるかもしれません。
しかし、現在の日本ではこれらの法律に基づいた保護命令としての「接近禁止命令」は親子間で適用できません。なぜなら「DV防止法」は、配偶者の暴力から守るためのものであり、「ストーカー規制法」はそもそも男女間における恋愛のもつれから始まったトラブルが前提となっているからです。
(2)代替となる方法
仮に親子間で接近禁止を命じてほしい場合は、民事保全法に定められている「接近禁止仮処分命令」を申し立てることで、警察からの支援を受けやすくなります。
この接近禁止仮処分命令は、どのように手続きをすればよいのか、次に解説します。
2. 接近禁止仮処分命令の手続きについて
(1)適用されるための要件
民事保全法はあまり聞き慣れない法律かもしれませんが、「保全処分」と呼ばれることについて定めた法律です。接近禁止仮処分はこの民事保全法を根拠とし地方裁判所に仮処分命令の申し立てを行うことで、生活の平穏を守っていくという目的があります。
ただ、適用を受けるためには、保全を受けるべき理由を明確にすることが不可欠です。民事保全法23条第2項では以下のように明記されています。
「仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。」
つまり、耐えがたく回復不可能なほどの危険にさらされており、現在の状況では平穏な生活を送れないことや、すでに著しい損害を受けている、あるいは危険に対し緊急的に回避する必要があることについての説明が必要です。
(2)証拠などの提出が必要
申し立ての際は、「疎明資料」と呼ばれる証拠書類などを準備し、裁判所へ提出するとともにいかに事態が切迫しているかを説得する必要があります。
証拠としては以下のようなものが挙げられます。
- 親から虐待を受けていることが分かるICレコーダーの音声記録
- 児童相談所における相談記録
- 警察への通報記録など
客観的に証明できる確固たる証拠を、できるだけ多く集めて提出することが重要なポイントです。ただし、先ほど挙げたような証拠がない、あるいはただ単に顔を合わせたくない程度の主観的な主張では、接近禁止仮処分の申し立ては難しいと考えられます。
そのため、過去の証拠を集められていない場合は、今後に備えて収集するようにしましょう。また、今後、接近禁止仮処分の申し立てを行っていく場合は、なるべく弁護士を代理人として立て、準備を進めていくことをおすすめします。
親子間とはいえ、差し迫る危険に見舞われているとすれば、確実に今の状況を打開できるような対策が必要です。どのような状況なのかを弁護士に相談すれば、今後の進め方についてもアドバイスをもらえるため、前向きに検討してみましょう。
3. 親子関係が改善しない場合の対処法
(1)親族関係調整調停を行う
他の方法として、家庭裁判所に親族関係調整調停を申し立てることもできます。親族関係調整調停とは、親族間で発生した問題によって関係が悪化した際に、家庭裁判所が間に入って話し合う場を設けるものです。裁判所が指定する委員を交えた調停によって、親族関係の正常化を目指します。
調停の結果として、調停調書が作成されることがあります。その調書に、親から「今後は子どもに接触しない」「接触が必要な場合は弁護士を通して行う」「暴力を振るわない」「暴言を吐かない」といった文言を含ませることで、一定の抑止効果が期待できます。
そうした内容の調書があれば、その後問題が再発した場合などに有力な証拠となる可能性があります。
(2)弁護士を通じて内容証明郵便(絶縁状)を送付する
もうひとつの対処方法としては「内容証明郵便」を活用するのも有効です。相手に対し、暴力を振るったり嫌がらせをしたりといった行為をやめてほしいと正式な文書を作成し送付することで、意思を明確に伝えられます。いわば「絶縁状」とも考えられ、やめてもらえない場合は民事裁判などの法的措置をとる旨を警告できるのもメリットです。
この手続きも一見簡単そうに見えるかもしれませんが、逆に相手を刺激することにもなりかねず、慎重な対応が求められます。そのため、通常は弁護士に依頼して行うことが一般的です。
親子といえども、一方的な暴力などの虐待を受け、これ以上関わってきてほしくないといった場合は、民事保全法の「接近禁止仮処分命令」を申し立てることが可能です。親子関係で悩んでいる場合は、一度、法律の専門家である弁護士へ問い合わせてみてはいかがでしょうか。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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