- (更新:2024年07月30日)
- 遺産相続
離婚しても子どもは相続人! 再婚相手の子どもに財産を残すには
この記事の監修弁護士
ベリーベスト法律事務所 北千住オフィス
離婚後、再婚して再婚相手との間に子どもをもうけたことなどにより、元配偶者に引き取られた子どもと長年疎遠になっている方もいると思います。
そのような方のなかには、ご自身の死後、元配偶者との子どもではなく再婚相手との子どもに財産を残したいと考える方もいることでしょう。
本コラムでは、再婚後の子どもに遺産を残したい場合の相続手続きとその注意点について解説します。
1. 離婚しても元配偶者との子どもには相続権がある
夫婦が離婚すると、配偶者の相続権はお互いになくなります。しかし、婚姻期間中、離婚した配偶者との間に生まれた子どもは、そうではありません。
たとえあなたが離婚したときに子どもの親権・監護権を得ていなかったとしても、あなたと子どもの法律上の親子関係は継続します。したがって、子どもは第1順位の相続人として、あなたが亡くなった際の相続権を持つのです(民法第887条)。これはあなたが再婚し、新たな子どもをもうけたとしても変わりません。
また、子どもの親権者となった元配偶者が別の人と再婚し、子どもが再婚相手と普通養子縁組した場合も相続権はなくならず、子どもは実の親であるあなたと養親の、両方の相続権を持つことになります。
一方で、子どもが再婚相手やそのほかの第三者と特別養子縁組をした場合には、子どもは実の親の財産を相続する権利はなくなります。
特別養子縁組とは、子どもの年齢が6歳(令和2年4月1日以降は15歳)になるまでに家庭裁判所の審判を経て行う養子縁組のことです。普通養子縁組と異なり、特別養子縁組が認められると実の親との関係は法的に断絶され、子どもと実の親との間には扶養義務がなくなります。
しかし、一般的に子連れ再婚だけを理由とした特別養子縁組は認められませんので、通常は、普通養子縁組がなされます。
前述のとおり、元配偶者との子どもが、後に特別養子縁組をしたという例外的な場合でない限り、元配偶者の子どもは法定相続人としてあなたの財産を相続する権利を持つのです。
2. 子どもが生まれる前に離婚した場合の相続権の判断基準
子どもが生まれる前に離婚した場合は、どのような基準で、子どもに相続権があると判断されるのでしょうか。
法律上、婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子どもを「嫡出子(ちゃくしゅつし)」、婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを「非嫡出子」といいます。
母親の場合、妊娠期間を経て自ら出産するわけですから、自身が母親であることの証明は容易です。民法においても、母親が出産した子どもは当然に母親の子とされます。しかし、父親の場合、そうではありません。
婚姻期間中に妻が懐胎(妊娠)した子どもは夫の子であると推定されることが定められています(民法第772条第1項)。また、婚姻関係の成立後200日経過した後、あるいは婚姻関係を取り消した日から300日以内に生まれた子どもは、婚姻期間中に懐胎したもの、つまり夫の子と推定すると規定しています(同条第2項)。
さらに、婚姻関係の成立後200日以内に生まれた子どもについては、「推定されない嫡出子」として、夫の子とされます。
なお、婚姻期間中または離婚後300日以内に生まれた子どもであっても、夫が単身で長期間外国に滞在していた、収監されていたなど、当該期間中に生まれた子どもが夫の子どもである可能性がない場合は、嫡出子ではあるものの、夫の子どもであると推定されません(推定の及ばない子)。
生まれた子どもが非嫡出子の場合、母親には親子関係があるため相続権が発生しますが、父親には、認知をしない限り法律上の親子関係は発生せず、父親が亡くなった際の相続権はありません。
3. 離婚前・再婚後に子どもがいる場合の遺産相続
元配偶者との子どもではなく、再婚相手との子どもに財産を残したい場合、生前に遺言書を作成し、ご自身の死後の遺産配分方法を指定しておくことをおすすめします。
ただし、たとえ遺言による相続であろうと、元配偶者との間に生まれた子どもの遺産の取り分をゼロとすることはできません。民法が、法定相続人が権利として持つ最低限の遺産の取り分として「遺留分」を定めているためです。子どもの遺留分割合は、法定相続分の2分の1です(民法第1042条)。
(1)死亡時に配偶者がいる場合の遺留分
配偶者と子どもが法定相続人となり、配偶者の法定相続分が2分の1、子ども全員の法定相続分はまとめて2分の1です。子どもが複数いる場合には、この2分の1を全員で均等に分けます(子どもが2人であれば、2分の1×2分の1=4分の1)。遺留分は、これの2分の1ですから、子どもが2人の場合は、4分の1×2分の1=8分の1です。
(2)死亡時に配偶者がいない場合の遺留分
子どものみが法定相続人となり、子どもが財産の全てを相続できます。子どもが複数いる場合には、全員で均等に分けますので、子どもが2人いれば、それぞれ2分の1の法定相続分を有します。遺留分は、これの2分の1ですから、子どもが2人の場合は、2分の1×2分の1=4分の1です。
出典:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」(3)元配偶者との子どもと、再婚後の子どもの遺留分は同一
元配偶者との子どもと、再婚後の子どもは平等に扱われますので、子どもの間では法定相続分および遺留分は同一です。
遺留分は、被相続人の遺言でも侵害することが許されません。遺言書の内容が遺留分を侵害する内容である場合には、遺留分を侵害された法定相続人は、侵害した人へ遺留分に相当する金銭の支払いを求めることができます。これを、「遺留分侵害額請求」といいます。
したがって、仮に、再婚後の子どもや配偶者に多く財産を残したいと考えて、遺言書で元配偶者との子どもの遺留分を侵害する内容にすると、自身が死亡し相続された後に、元配偶者の子どもから再婚後の子どもや配偶者に対して、遺留分侵害額請求がなされる可能性があるということです。遺言書を残す場合には、元配偶者との子どもの遺留分を侵害しないよう気をつけて作成しましょう。
あなたが亡くなった後に、再婚後の配偶者や子どもが大変な思いをしないために、遺言書を作成する際には、相続全般に知見があり、トラブル解決の実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
特に離婚前・再婚後のそれぞれに子どもがいる場合は、相続発生後にトラブルが起こることも予想されます。ぜひお早めに弁護士に相談しましょう。
この記事の監修弁護士
ベリーベスト法律事務所 北千住オフィス
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