
外国人が窃盗罪で逮捕されたら、強制送還になる?
外国人の方が窃盗罪で逮捕された場合、確定した判決の内容によっては、自国へ強制送還されることがあります。
今回は、外国人が窃盗罪で逮捕された場合の刑事手続きの流れと、退去強制(強制送還)が行われる条件について解説します。
1. 外国人が窃盗罪で逮捕されたらどうなる? 刑事手続きの流れ
外国人が窃盗罪で逮捕された場合、基本的には日本人と同様の刑事手続きによって処分が決定されます。
刑事手続きのおおまかな流れは、以下のとおりです。
(1)逮捕・起訴前勾留
最長23日間、捜査を遂げる目的で被疑者の身柄が拘束されます。
(2)検察官による起訴
勾留期間が満了するまでに、検察官が被疑者を起訴するかどうか決めます。罪を犯したことが確実であっても、犯罪の内容や情状などを考慮して不起訴とするケースもあります(起訴猶予)。
(3)起訴後勾留
検察官に起訴された場合、被疑者は「被告人」と呼ばれるようになり、引き続き身柄を拘束されます。ただし、保釈が認められることもあります。
(4)公判手続き・判決
刑事裁判を通じて、被告人の有罪・無罪、有罪の場合は量刑を決定します。
(5)控訴・上告
刑事裁判の判決に不服がある場合は、控訴・上告という2回の不服申し立てが認められます。控訴・上告を経て判決は確定し、実刑判決が確定した場合は刑が執行されます。
2. 外国人が窃盗罪で逮捕されたら、強制送還されるのか?
外国人が窃盗罪で逮捕されたとしても、その段階で直ちに退去強制(強制送還)となるわけではありません。
ただし、上述の刑事手続きを経て、有罪判決が確定した後は退去強制の対象となるケースが多い点にご注意ください。
(1)有罪判決の確定前に強制送還される場合
逮捕された外国人が以下のいずれかに該当すると出入国在留管理庁に認定された場合、有罪判決の確定を待たずに退去強制が行われます。
窃盗罪以外に以下の事由が認められる場合は、早い段階で自国に強制送還されるおそれがあるのでご注意ください。
- 有効なパスポートを所持せずに入国した者
- 入国審査官による上陸の許可等を受けないで入国した者
- 偽りその他不正の手段により上陸許可の証印・許可等を受けたことにより、法務大臣に在留資格を取り消された者
- 正当な理由なく在留資格に応じた活動を行わず、かつ他の活動を行ったこと等により、法務大臣に在留資格を取り消された者
- 他の外国人の不正入国を助けるため、文書・図画の偽造・変造等を行った者
- 公衆等脅迫目的の犯罪行為、その予備行為、またはその実行を容易にする行為を行うおそれがあるとして法務大臣が認定する者
- 国際約束により入国を防止すべきとされている者
- 外国人に不法就労活動をさせる行為などを行い、唆し、または助けた者
- 在留カード・特別永住者証明書の偽造・変造などを行い、唆し、または助けた者
- 以下のいずれかに該当する外国人
(a) 在留資格に応じた活動の範囲に違反して、収入を伴う事業活動や報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く)
(b) 在留期間を経過して日本に残留する者
(c) 人身取引等を行い、唆し、または助けた者
(d) 売春やその周旋・勧誘・場所の提供、その他売春に直接関係がある業務に従事する者(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く)
(e) 他の外国人の不法入国をあおり、唆し、または助けた者
(f) 日本政府を暴力で破壊することを企て、主張し、またはこれを企て、主張する団体を結成し、もしくはこれに加入している者
(g) 暴力的な政党その他の団体を結成し、これに加入し、またはこれと密接な関係を有する者
(h) 暴力的な政党その他の団体の目的を達するため、文書図画を作成・頒布・展示した者
(i) (a)から(h)のほか、法務大臣が日本国の利益・公安を害する行為を行ったと認定する者 - 短期滞在の在留資格者で、国際競技会等の経過・結果に関連して、またはその円滑な実施を妨げる目的をもって、開催場所等において不法な殺傷・暴行・脅迫・物の損壊を行った者
- 仮上陸の許可を受けた者で、条件に違反して逃亡し、または正当な理由なく呼び出しに応じない者
- 特別審理官による退去命令を受けたにもかかわらず、遅滞なく日本から退去しない者
- 一時的に上陸の許可を受けた者で、上陸許可の期間経過後も日本に残留する者
- 船舶観光上陸の許可を受けた者で、指定旅客船が出港するまでに帰船せず逃亡した者
- 船舶観光上陸の許可期間を経過したにもかかわらず、帰船または出国しない者
- 乗員上陸の許可期間を経過したにもかかわらず、帰船または出国しない者
- 国籍離脱・出生その他の事由により、上陸の手続きを経ることなく日本に在留する者で、所定の許可を得ることなく、当該事由が生じてから60日を超えて日本に残留する者
- 出国命令を受けたにもかかわらず、出国期限を超えて日本に残留する者
- 住居・行動範囲の制限などの条件に違反して、出国命令を取り消された者
- 難民認定を取り消された者
(2)有罪判決が確定したら強制送還される場合
外国人について有罪判決が確定した場合、退去強制事由に該当するケースが多くなっています。
退去強制事由は在留資格に応じて異なり、具体的には以下のいずれかに該当する場合、退去強制の対象となります。
①以下のいずれかに該当する外国人
- 旅券法違反で刑に処せられた者
- 集団密航者を入国させた罪などで刑に処せられた者(出入国管理法違反)
- (在留資格に応じた活動の範囲に違反して、収入を伴う事業活動や報酬を受ける活動を行った罪により、禁錮以上の刑に処せられた者(出入国管理法違反)
- 1951年11月1日以後に、長期3年を超える懲役・禁錮に処せられた少年
- 1951年11月1日以後に、麻薬関連犯罪によって有罪判決を受けた者
- 1.から5.のほか、1951年11月1日以後に無期または1年を超える懲役・禁錮に処せられた者(実刑部分が1年以下の場合を除く)
②活動類型資格によって在留する外国人のうち、以下の犯罪によって懲役・禁錮に処せられた者
- 住居侵入等
- 通貨偽造の罪
- 文書偽造の罪
- 有価証券偽造の罪
- 支払用カード電磁的記録に関する罪
- 印章偽造の罪
- 賭博および富くじに関する罪
- 殺人の罪
- 傷害の罪
- 逮捕および監禁の罪
- 略取、誘拐および人身売買の罪
- 窃盗および強盗の罪
- 詐欺および恐喝の罪
- 盗品等に関する罪
- 暴力行為等処罰に関する法律違反
- 盗犯等の防止および処分に関する法律違反
- 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律違反
- 自動車運転処罰法違反
③中長期在留者で、以下の犯罪によって懲役に処せられた者
- 在留資格に関して虚偽の届出をした罪
- 在留カード不受領の罪
- 在留カード提示拒否の罪
※活動類型資格:以下のいずれかの在留資格
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動
(3)窃盗罪に関する退去強制事由まとめ
窃盗罪についてまとめると、在留資格と量刑に応じて、以下のいずれかに該当する場合には退去強制の対象となります。
①活動類型資格によって在留する外国人
懲役刑または禁錮刑が確定した場合
②それ以外の外国人
- 少年の場合
長期3年を超える懲役刑または禁錮刑が確定した場合 - 少年でない場合
無期または1年を超える懲役刑または禁錮刑が確定した場合(実刑部分が1年以下の場合を除く)
なお執行猶予付き判決の場合は、判決が確定すれば出入国在留管理庁に収容されます。
これに対して実刑判決の場合は、判決確定後に刑が執行(たとえば懲役刑であれば刑務所に収監)された後、執行終了後に出入国在留管理庁へ収容され、退去強制が行われます。
- こちらに掲載されている情報は、2022年12月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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