
外国人労働者が労働災害にあった! 外国人の労災保険について解説
外国人労働者の増加に伴い労働災害も増えています。その一方で、企業の労災隠しが問題となっており、労働災害にあった外国人労働者は労災保険について把握しておくことが重要です。
本記事では、労災保険が適用される対象や母国に帰国した場合の給付についてなど、外国人労働者の労災手続きの方法を解説します。
1. 外国人労働者に労災保険は適用される?
労災保険は、国籍や雇用形態を問わず、外国人労働者にも適用されます。事業主との雇用関係が発生していれば、在留資格は関係ありません。つまり、就労ビザを持つ外国人はもちろんのこと、留学生のアルバイトおよび技能実習生も適用対象となります。
(1)労災保険とは
そもそも労災保険とは、労働災害に対して被災労働者やその遺族に必要な保険給付を行う制度です。
労働災害とは、業務中または通勤中における労働者のけが、病気、障害や死亡を指します。労災保険における保険料の納付は、労働者が一部負担する雇用保険とは異なり、全額事業主(使用者)が負担します。また、労災保険の取り扱いは、国家単位では厚生労働省が行い、地方単位では各都道府県の労働基準監督署や労働局が行っています。
(2)すべての労働者の保険加入が義務化されている
労災保険は、常勤だけでなくパート、アルバイト、派遣などの雇用形態に関わらず、加入が義務付けられています。仮に雇っている労働者がひとりだとしても加入が必要です。この場合の労働者とは、事業主に使用され、労働の対価として賃金が支払われる人のことを指します。
(3)外国人が労災給付中に帰国した場合はどうなるのか
日本国外から保険給付を請求する場合、支給額は支給決定日の外国為替換算率(売りレート)で換算した邦貨額(日本円)になります。また、日本国外で治療した場合、その内容が妥当であると認められることで支給対象となり、治療に要した費用が支給されます。
一方、労災保険には以下のような日本国内に限られる支援制度もあることから、日本国外で給付を受ける場合は内容を確認しておくことが重要です。
【日本国内に限られる主な支援制度】
- アフターケア
- 義肢等補装具費の支給
- 外科後の処置
- 日本国内の学校に通学している場合の労災就学等援護費
2. 外国人が病気やけがをしてしまったら
万が一、労働災害にあってしまった場合の対応を解説します。
(1)労災指定病院で治療を受ける
すぐに行ける労災指定病院で、適切な治療を受けます。労災指定病院での治療は、原則、無償で受けることが可能です。一方、労災指定病院以外の医療機関で治療を受けた場合は、一度は治療費の支払いが必要ですが、後日請求することで全額支給されます。また、通院にかかった交通費も、一定の条件を満たすことで全額支給されます。
受診する際は日本人の職員に同行してもらうことも重要です。言葉の違いから事故発生状況などの説明がうまく伝わらない場合、診断や治療が不十分になる可能性があります。
(2)労災手続きをする
労災手続きでは、外国人労働者であっても、在留資格があれば、日本人と手続きはほとんど変わりません。
まず、労働災害が発生したことを会社に報告します。報告するときに必要な情報は、名前や労働災害が発生した日時、発生時の状況、事実関係を知る人の連絡先です。報告を受けた事業主は、労働基準監督署に「労働者死傷病報告」をします。
続いて、被災労働者は、労災保険給付を受けるための申請を行います。必要な書類は申請内容によって変わりますが、厚生労働省のサイトからダウンロードすることも可能です。
書類は治療を受けた労災指定病院に提出し、指定以外の病院で治療した場合は労働基準監督署に提出します。なお、申請は原則、被災労働者が行う必要がありますが、会社が代行してくれる場合もあるので確認しましょう。
3. 労災隠しをしている企業に注意
労災隠しとは、労働災害が発生した際に事業者が労働基準監督署長への報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりと、労災を隠蔽(いんぺい)しようとする行為のことです。
(1)度重なる外国人労働者への労災隠しが問題に
外国人労働者の場合、労災保険について知らないケースも多く、そのことを利用した企業の労災隠しが問題となっています。労働者に治療費を負担させ、なおかつ休業補償の支払いも十分に行わないなど、悪質なケースも見られます。
労災隠しは、労働安全衛生法第120条第5号に基づき、50万円以下の罰金が科される犯罪です。そのため、企業は労働者が災害にあった場合、速やかに労働者死傷病報告を行う義務があります。
(2)会社が労災申請に協力してくれないときは?
会社が労災の申請に協力的ではない場合、被災労働者が自分で申請をすることが可能です。申請書類は、厚生労働省のサイトからダウンロードできますが、会社の協力が得られない場合は、労働基準監督署の窓口でアドバイスを受けながら申請書類が作成できます。
また、労災保険の申請に加え、会社に対して損害賠償請求を考えている場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けることもひとつの手です。労働災害では、会社に対して「安全配慮義務違反(労働契約法第5条)」および「使用者責任(民法第715条第1項)」に基づいた賠償請求が行える場合があります。
弁護士に依頼することで会社とのやり取りも一任でき、法的根拠に基づく適正な賠償請求のための十分なサポートを受けることができます。
外国人労働者にも労災保険は適用されるため、労働災害にあったら速やかに治療し、労災給付の手続きを行いましょう。会社が協力的ではない場合でも自分で申請できるため、まずは労働基準監督署に相談してみましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年08月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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