在留特別許可とは? 許可の類型から流れまで解説
日本に在留できない外国人に対し、法務大臣が特別に在留を認める「在留特別許可」をご存じでしょうか。
この記事では、措置の概要や適用される条件、許可を得るための退去強制手続きについて解説します。外国人が日本に在留できる方法を調べている方は、ぜひ参考にしてください。
1. 在留特別許可とは
在留特別許可とは、日本に在留が認められておらず退去強制される外国人に対し、法務大臣が例外的に許可を与える特別な措置のことです。
例えば、オーバーステイ、不法入国、不法滞在などを行ってしまった人物は本来であれば日本に在留できず、一度退去強制を受けて出国すると、その後5年間は日本に入国できません。しかし、さまざまな事情を考慮し、特別に在留が認められる措置を「在留特別許可」といいます。
ただし、許可を受けるには必ず強制退去手続きを受けなくてはならないため、認められなければ日本から出国することになります。「在留特別許可を申請する」という考え方ではなく、あくまで強制退去手続きの一環であることを覚えておきましょう。
在留特別許可が認められるには、以下の4つのケースがあります。
- 永住許可を受けている
- かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがある
- 人身取引などにより他人の支配下に置かれて日本に在留するものである
- その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認める場合
(参考:「在留特別許可に係るガイドライン」(法務省入国管理局))
とはいえ、実務上では4. の「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認める場合」を根拠とすることが多く、これにより、1. 〜3. に該当しない場合でも、特別な事情があると認められれば在留特別許可が下りるケースもあります。ただ、許可されるケースは限定されており、全ての事情が考慮されるわけではないので注意しましょう。
2. 在留特別許可の積極要素と消極要素
在留特別許可が認められやすい要素を「積極要素」、認められにくい要素を「消極要素」といいます。ここでは、それらの要素の一例をそれぞれ紹介します。
(1)特に考慮する積極要素
積極要素には「特に考慮する積極要素」と「その他の積極要素」があり、特に考慮する積極要素は以下の内容になっています。
①当該外国人が、日本人の子または特別永住者の子である
なお、特別永住者とは、1991年に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により規定された在留資格を有する者を指します。
法制定の背景には、第二次世界大戦及び戦中日本の植民地政策が存在し、1952年のサンフランシスコ講和条約の発効により、日本国籍を離脱した在日朝鮮人、韓国人、台湾人及び子孫などが対象です。
②当該外国人が、日本人または特別永住者との間に出生した実子を扶養しており、次のいずれにも該当する
- 当該実子が未成年かつ未婚である
- 当該外国人が当該実子の親権を有している
- 当該外国人が当該実子を日本で相当期間同居のうえ、監護および養育している
③当該外国人と、日本人または特別永住者との婚姻が法的に成立しており、次のいずれにも該当する。ただし、退去強制を免れるために婚姻を仮装・形式的な婚姻届を提出した場合を除く
- 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助している
- 夫婦の間に子がいるなど、婚姻が安定かつ成熟している
④当該外国人が、日本の初等・中等教育機関に在学し相当期間日本に在住している実子と同居し、当該実子を監護および養育している。ただし、母国語による教育を行っている教育機関を除く
⑤当該外国人が、難病などにより日本での治療を必要としているか、またはこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められている
(参考:「在留特別許可に係るガイドライン」(法務省入国管理局))
(2)特に考慮する消極要素
消極要素は「特に考慮する消極要素」と「その他の消極要素」があり、特に考慮する消極要素は以下の内容になっています。
①重大犯罪などにより刑に処せられたことがある
【例】
- 凶悪・重大犯罪により実刑に処せられたことがある
- 違法薬物やけん銃といった社会悪物品の密輸入・売買により刑に処せられたことがある
②出入国管理行政の根幹にかかわる違反または反社会性の高い違反をしている
【例】
- 不法就労助長罪、集団密航にまつわる罪、旅券などの不正受交付の罪などにより刑に処せられたことがある
- 不法・偽装滞在の助長に関する罪により刑に処せられたことがある
- 売春を行う・他人に売春を行わせるなど日本の社会秩序を著しく乱す行為を行ったことがある
- 人身取引など人権を著しく侵害する行為を行ったことがある
(参考:「在留特別許可に係るガイドライン」(法務省入国管理局))
3. 在留特別許可の流れ
許可を取得するには、まず退去強制手続きを受けて入管法違反調査などの調査を済ませる必要があります。
- 入国管理局への出頭・警察による摘発
- 入管法違反調査・審査・口頭管理
- 在留特別許可申請(請願)
※職務質問などにより発覚した場合は、3. で仮放免申請も行う
3. の在留特別許可申請において、法務大臣から許可が出た場合は、在留ビザが発行されて日本にとどまることが可能です。出頭から早くて半年ほど、状況によっては1年以上の年月がかかります。
許可が認められない場合は退去強制となり、日本にとどまることができません。警察の摘発などによって発覚した場合は、約1か月で調査・審査が完了し、退去強制となります。
許可が認められないとき、法務大臣の判断に対して裁判で争う方法もあります。とはいえ、裁判所は在留特別許可の義務付けを認めておらず、なおかつ許可を与えるかどうかの判断は、法務大臣の裁量に委ねられるものです。したがって、裁判で勝訴し、在留特別許可が与えられるのは裁量権の濫用・逸脱が認められるケースに限定されています。
過去に、裁量権の濫用・逸脱を認め、在留特別許可が下されたケースもありますが、事例はかなり限られています。不許可になったあとに裁判で争うよりも、在留特別許可を申請する段階で、上述の積極要素に関する十分な立証活動をしておくことが大切です。
(参考:「在留特別許可」(富山綜合法務事務所))
在留特別許可とは、オーバーステイや不法入国などによって退去強制される外国人に対し、それぞれの事情を考慮したうえで在留を許可する特別な措置です。許可にはいくつかの条件を満たす必要があります。許可をもらえる可能性を上げるには、申請の段階で積極要素の存在を十分に立証しておくことが望ましいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年09月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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