- (更新:2023年02月13日)
- 労働問題
未払いの残業代が発覚。相談先と残業代の請求方法はどうすればいい?
労働問題のなかでも、残業代の未払いに関する労働者と会社のトラブルは多いものです。残業代の未払いがあるときに気づいたときの相談先、および対処法についてご説明します。
1. 残業代の支払いは会社の義務
労働基準法第32条では、法定労働時間として原則として1日あたり8時間、1週間あたり40時間を超えてはならないと規定しています。また、同法第35条の規定により、会社は法定休日として1週間あたり原則1日以上の休日を与えることが義務付けられています。
ただし、いわゆる36協定(同法第36条に基づく、残業や休日労働についての協定)が会社と労働組合、または労働者の代表との間で締結されている場合、会社は労働者に対して法定労働時間を超過する残業を命じることができます。
同法第37条の規定により、従業員に残業を命じた会社には労働者に対して残業時間や休日労働日数に応じた所定の割増賃金、いわゆる残業代を支払うことが罰則付きで義務付けられています。
2. 残業の種類と割増率は?
残業および休日労働の種類は、以下のとおりです。
- 法内残業
会社の所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合に、所定労働時間を超え法定労働時間を下回る労働時間に対する残業代。特段の合意がない限り割り増しはなし。 - 法外残業
法定労働時間を超える労働時間のことで、割増率は25% - 深夜労働
午後10時から午前5時までにおける労働時間のこと。割増率は25% - 法定休日労働
法定休日における労働、割増率は35%
3. 残業代未払いの相談先は?
残業代未払いのような労働問題について相談できる窓口の一例として、以下が挙げられます。
- 総合労働相談コーナー
全国の労働局や労働基準監督署内に、厚生労働省により設置されている相談窓口 - 労働基準監督署
厚生労働省の出先機関で、企業などの使用者が労働基準関係法令を順守しているか監督 - NPO法人POSSE残業代請求サポートセンター
労働問題を中心に活動しているNPO法人 - 全労連 労働問題ホットライン
全国労働組合総連合(日本全国の労働組合の中央組織)により運営されている労働問題の相談窓口
上記のほかに、検討していただきたい相談先が弁護士です。未払い残業代をはじめとする、労働問題の解決に知見と実績のある弁護士であれば、各種の法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として会社と交渉を行うなど、解決に向けた対応が可能です。
なお、実際に弁護士へ依頼する場合、弁護士報酬の支払いが必要となります。実際に依頼すべきかどうかの判断基準のひとつは、未払い残業代の総額次第となるでしょう。
4. 未払い残業代を請求する方法は?
それでは、会社に未払い財業代を請求する方法についてご説明します。
(1)証拠を集める
会社に未払い残業代を請求するためには、未払い残業代がある事実を労働者自身が立証する必要があります。そのためには、証拠が不可欠です。タイムカードやパソコンのログイン・ログオフ記録、会社のパソコンから送信したEメールなど、実際に残業した時間を証明するものを集めてください。
なお、あなたが自身で記録した日々の勤務時間も、証拠として認められる可能性があります。
(2)時効を確認、完成猶予の措置を行う
令和2年3月31日までに発生した未払い残業代は2年、同年4月1日以降に発生したものは3年で、時効が完成し未払い残業代を請求できなくなります。
もし会社との交渉が長期化すると予想される場合は、その間に支払いを受けるべき未払い残業代が時効となってしまう事態も考えられます。したがって、まずは時効の完成猶予の措置をとらなくてはなりません。
時効の完成を猶予するためには、会社に対して未払い残業代の支払いを求める「催告」を内容証明郵便で送付します。そして使用者に内容証明郵便が送達されてから6か月以内に訴訟を提起することで、時効の完成は猶予されます。
(3)会社に請求する
会社に対して正式に未払い残業代の支払いを請求するときも、内容証明郵便を活用したほうがよいでしょう。
このタイミングでは、まだ労働者と会社の話し合いです。しかし、合意に至らない場合は労働審判や訴訟などを検討することになります。なお、会社と未払い残業代の支払いについて合意に至った場合は、当事者間で合意書を締結してから支払いを受けるケースが多いようです。
ただし、個人で請求しようとしても、会社によっては無視をされてしまうなど、適切な対応をしてくれない可能性があります。長期間残業代が支払われていないなどの事態に陥っているのであれば、未払い残業代の額が大きくなることが想定されるため、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、証拠を集めて時効の完成を猶予したうえで、訴訟を視野に入れた交渉を行います。多くの企業は訴訟となる事態を避けたいと考えるため、個人で請求したときはなかなか対応しなかった会社でもスムーズに対応したというケースは少なくありません。
未払い残業代の請求期間には時効があります。できるだけ早期に弁護士に相談するなどのアクションを起こすことをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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