「自己都合退職するように」と退職勧奨があった! 会社都合退職との違いは?

「自己都合退職するように」と退職勧奨があった! 会社都合退職との違いは?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

退職理由には、会社都合退職と自己都合退職の二種類が存在しています。会社から退職勧奨を受けた場合に、どちらの退職となるかによって、失業保険の開始日や給付日数などに違いがあります。

どちらの退職となるのかを明確に意識せずに退職をしてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

今回は、今後退職を予定している労働者の方に向けて、自己都合退職と会社都合退職の違いについて解説します。

1. 自己都合退職と会社都合退職の違い

自己都合退職と会社都合退職には、以下のような違いがあります。

(1)自己都合退職とは

自己都合退職とは、労働者からの申し出によって労働契約を終了させることをいいます。自己都合退職は、転職、結婚、妊娠、出産、介護など労働者側のさまざまな事情で選択される退職方法です。

(2)会社都合退職とは

会社都合退職とは、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇など会社側の都合によって、労働者の意思とは関係なく一方的に労働契約を終了させることをいいます。早期退職制度に応募した労働者との労働契約を終了させる場合も、一般的には会社都合退職として扱われます。

(3)自己都合退職と会社都合退職の主な相違点

自己都合退職と会社都合退職の主な相違点としては、以下のようなものが挙げられます。

①失業保険の受給資格

会社都合退職の失業保険の受給資格は、「雇用保険の被保険者である期間が退職前の1年間に通算して6か月以上あること」です。一方、自己都合退職の場合は、「退職前の2年間に通算して12か月以上あること」です。
そのため、失業保険の受給資格においては、会社都合退職の方が広く認められているといえます。

②失業保険の支給開始日

会社都合退職の場合は、ハローワークに離職票が受理された日から7日間経過した後に支給が開始されます。一方、自己都合退職の場合には、ハローワークに離職票が受理された日から7日間経過した後さらに3か月経過しないと支給されません。
そのため、失業保険の支給開始日は、会社都合退職の方が早いです。

③失業保険の支給期間

失業保険の支給期間については、雇用保険の被保険者期間と退職時の年齢によって決まります。会社都合退職の場合には、「90日から330日」であるのに対して、自己都合退職の場合には、「90日から150日」です。

そのため、失業保険の支給期間は、会社都合退職の方がより長く、総支給額もより多くなるといえます。

④解雇予告手当の支払い

会社都合退職の場合には、原則、会社は労働者に対して退職日の30日以上前に解雇を予告する義務があり、その予告がない場合には、会社は労働者に対して30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。例えば、解雇を予告した日から10日後を退職日とした場合には、30日から10日分を差し引いた20日分以上の解雇予告手当が支給されます。

これに対して、自己都合退職の場合には、退職日までに働いた分の賃金や退職金は支払われますが、解雇予告手当は支払われません。

そのため、会社都合退職の方が、解雇予告手当をもらうことができる場合があるという点で有利です。

⑤転職活動への影響

履歴書に記載した退職理由は、転職先の会社の面接時に、その理由を聞かれます。

履歴書に「会社都合」と記載して、その理由が整理解雇などの労働者がどうしようもできない事由であれば特段問題とならないでしょう。しかし、懲戒解雇など労働者側の問題と判断れうる場合には、選考で不利になる可能性があります。
一方、履歴書に「自己都合」と記載した場合には、会社としては手放したくない人材であったものの、労働者側が退職を希望したとも捉えられるため、選考で有利になる可能性があります。

2. 退職届の記入を求められた場合、どのように対処すればいいのか

上記のように自己都合退職と比べて会社都合退職の方が失業保険の面では優遇を受けることができます。もっとも、転職の面では自己都合退職の方が有利なこともあるため、退職勧奨を受けて「自己都合退職するように」と言われたとしても、その退職理由で本当に良いのか一度考える必要があります。

(1)辞める意思がない場合には退職届の記入は拒否する

退職勧奨は、会社から退職をしてもらいたい労働者に対して、退職を促す行為をいいます。退職勧奨は、解雇とは異なり、退職勧奨に応じるかどうかは労働者の自由に委ねられています。退職勧奨を受けたからといって、会社を辞める必要はありません。そのため、会社から退職勧奨を受けて退職届の記入を求められたとしても、会社を辞める意思がない場合には、明確に拒絶することが重要です。

(2)退職勧奨による退職は会社都合退職

会社からの退職勧奨に応じて労働者が退職をする場合には、一般的に自己都合退職ではなく会社都合退職となります。

しかし、会社都合退職とすると、会社にとって国からの助成金の支給において不利になることがあるため、悪質な会社では、労働者に対して退職届を記入させ自己都合退職扱いにさせるところもあります。ただ、自己都合退職となると、労働者にとって失業保険の面で不利な扱いを受けることになりえます。

退職勧奨に応じて退職する場合には、離職票で退職理由をしっかりと確認するようにしましょう。

もし、退職理由の訂正が必要となった場合には、速やかに会社に対してその旨申し出ましょう。

(3)執拗な退職勧奨は違法

会社からの退職勧奨に対し労働者が退職勧奨に応じない意思を明確に示したにもかかわらず、執拗に退職勧奨を行うことは、退職強要として違法となる可能性があります。

違法な退職勧奨がなされた場合には、たとえ自己都合退職という形式をとっていたとしても、無効になる可能性があり、場合によっては慰謝料を請求することが可能です。会社から執拗な退職勧奨を受けた場合には、後日の証拠とするためにもボイスレコーダーなどによって会話を録音し証拠化しておくとよいでしょう。

弁護士JP編集部
弁護士JP編集部

法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2021年07月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

お一人で悩まず、まずはご相談ください

まずはご相談ください

労働問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

弁護士を探す
まずはご相談ください

お一人で悩まず、まずはご相談ください

労働問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?

関連コラム

労働問題に強い弁護士

  • 上本 浩二 弁護士

    ベリーベスト法律事務所 京都オフィス

    京都府 京都市中京区
    京都府京都市中京区烏丸通錦小路上ル手洗水町659 烏丸中央ビル2階
    阪急京都線「烏丸駅」・市営地下鉄「四条駅」より徒歩3分
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 24時間予約受付
    • 全国対応
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    ※初回相談無料は、ご相談の内容によって一部有料となる場合がございます。

     
    注力分野

    メーカーでの営業経験も活かし、初回法律相談の段階から「この弁護士に相談してよかった」と思っていただけるように親身にお話を聞かせていただきます

    現在営業中 9:30〜21:00
    Webで問い合わせ
  • 三浦 知草 弁護士

    弁護士法人リーガルプラス上野法律事務所

    東京都 台東区
    東京都台東区上野2-10-10 協和ビル3階
    JR上野駅からお越しの場合
    入谷改札口(パンダ橋口)より徒歩8分

    東京メトロ日比谷線・銀座線の上野駅からお越しの場合
    3番出口より徒歩5分

    都営大江戸線、つくばエクスプレスの新御徒町駅からお越しの場合
    A1出口より徒歩5分

    京成本線京成上野駅からお越しの場合
    正面出口より徒歩10分
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    電話相談(簡易回答)は、交通事故・遺留分・残業代請求のみとなります。

     
    注力分野

    未払い残業代の請求、労災、退職勧奨・不当解雇問題を中心に、ご依頼者の方が泣き寝入りすることのない解決を目指します

    現在営業中 9:00〜20:00
    Webで問い合わせ
  • 加藤 惇 弁護士

    東日本総合法律会計事務所

    東京都 新宿区
    東京都新宿区四谷1-8-3 四谷三信ビル8階
    JR中央・総武線 四ツ谷駅 徒歩3分 四ツ谷口
    東京メトロ南北線 四ツ谷駅 徒歩2分 2番出口
    東京メトロ丸ノ内線 四ツ谷駅 徒歩5分 赤坂方面改札
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 夜間相談可
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • LINE相談可
    • メール相談可
    • 初回相談無料
     
    注力分野

    【労働者側の解決実績多数あり】不当解雇・退職勧告のご相談はお任せください。多数の解決実績から得た知見を生かし、会社との交渉に臨みます。【労働審判の経験豊富】

    電話で問い合わせ
    現在営業中 9:00〜21:30
    Webで問い合わせ
  • 都築 直哉 弁護士

    弁護士法人平松剛法律事務所仙台事務所

    宮城県 仙台市青葉区
    宮城県仙台市青葉区中央1-6-35 東京建物仙台ビル14階
    【電車でお越しの方】
    JR 仙台駅 徒歩5分
    市営地下鉄 仙台駅
    北7出口より徒歩3分

    【お車でお越しの方】
    提携(近隣)駐車場のご案内
    アエル地下駐車場
    宮城県仙台市青葉区中央1-3-1
    ※提携駐車場から事務所までは、200mほど離れております。
    ※詳細はお問い合わせ下さい。
    • 当日相談可
    • 休日相談可
    • 夜間相談可
    • 全国対応
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • LINE相談可
    • メール相談可
    • 初回相談無料

    休日・夜間相談は要事前予約とさせて頂いております。お問い合わせください。

     
    注力分野

    《不当解雇・残業代請求等お任せ!》300件以上の実績がある経験豊富な弁護士が解決に導きます。 【退職金請求等にも広く対応】【無料相談・着手金無料あり】

  • 小林 貴行 弁護士

    弁護士法人リーガルプラス市川法律事務所

    千葉県 市川市
    千葉県市川市八幡2-16-1 はぐちビル4階
    • 24時間予約受付
    • 電話相談可
    • ビデオ相談可
    • 初回相談無料

    電話相談(簡易回答)は、交通事故・遺留分・残業代請求のみとなります。

     
    注力分野

    未払い残業代の請求、労災、退職勧奨・不当解雇問題を中心に、ご依頼者の方が泣き寝入りすることのない解決を目指します

    現在営業中 9:00〜20:00
    Webで問い合わせ