きちんと支払われてる? 残業手当の正しい計算方法を解説

きちんと支払われてる? 残業手当の正しい計算方法を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

毎月残業をしているにもかかわらず、給与明細を確認すると思っていたよりも残業手当が少ないと感じたことはありませんか。残業手当の計算は、会社の担当者によって行われていますが、もしかしたら適切な残業手当よりも低く計算されている可能性があります。

ご自身の残業手当が適切な金額であるかどうかを確かめるためには、残業手当に関する基本的な計算方法を理解しなければなりません。

今回は、残業手当の正しい計算方法についてわかりやすく解説します。

1. 基本的な残業手当の計算方法

残業手当は、「1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率」という計算式によって算定します。そのため、残業手当を正確に計算するためには「1時間あたりの基礎賃金」「残業時間」「割増率」を理解する必要があります。

以下では、これらの事項について解説します。

(1)1時間あたりの基礎賃金

1時間あたりの基礎賃金は、給与の支給方法が月給制の場合、以下のような計算式で計算します。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月あたりの平均所定労働時間
1か月あたりの平均所定労働時間=(365日-1年の所定休日日数)×1日の所定労働時間÷12か月

たとえば、月給24万円、1年間の勤務日数が240日、1日の所定労働時間が8時間の場合、1時間当たりの基礎賃金は、1500円になります。

24万円÷(240日×8時間÷12か月)=1500円

なお、1か月あたりの基礎賃金を計算する際の月給には、以下の手当は含みません。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

(2)残業時間

割増賃金の支払い対象となる残業時間とは、労働基準法で規定する法定労働時間を超えた残業をした時間のことをいいます。労働基準法では、1日8時間、1週40時間を法定労働時間として定めていますので、この時間を超えて労働した場合には、残業手当を請求することができます。

(3)割増率

使用者が労働者に対して法定労働時間を超えて残業をした場合、法定休日労働をさせた場合、深夜労働をさせた場合には、法令で定める割増率以上で算定した割増賃金を支払わなければなりません。

法令で定める割増率としては、以下のとおりです。

①時間外労働 2割5分以上(月60時間を超える時間外労働については5割以上)
②法定休日労働 3割5分以上
③深夜労働 2割5分以上

2. 勤務体系によって異なる場合がある

上記の残業手当の計算方法は、一般的な月給制がとられている場合の計算方法です。働いている会社によっては、一般的な月給制とは異なる勤務体系がとられている場合には、残業手当の計算方法に違いが生じてきます。

(1)みなし残業制

みなし残業制とは、あらかじめ賃金や手当のなかに一定時間分の残業代を含ませて支払う制度のことをいいます。毎月固定額の残業代が支払われることから、固定残業代制度とも呼ばれています。

たとえば、「月20時間の残業代をみなし残業代として支払う」などとされている場合には、月20時間以内であれば労働者が残業をしてもしなくても毎月定額の残業手当が支払われることになります。

労働者としては、残業をしなかったとしても残業手当をもらうことができるというメリットがあり、使用者としても面倒な残業代計算を行わなくてもよいというメリットがあります。

ただし、みなし残業制がとられているからといって、固定額の残業手当以外の残業手当の支払いが不要になるわけではありません。みなし残業として定められた一定時間を超えて残業をした場合には、一定時間を超えた分については、固定額の残業手当とは別途残業手当を請求することができます。

(2)フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、始業時間や終業時間を労働者が自由に設定することができる制度のことをいいます。

フレックスタイム制が導入されている場合には、通常の勤務体系のように1日や1週単位で残業時間を計算することができず、あらかじめ定められた清算期間中の総労働時間に対して実労働時間がどの程度超過していたかという方法で残業手当を計算することになります。

フレックスタイム制では、労働者が始業時間や終業時間を設定することから残業代は発生しないと誤解している方もいますが、上記のように残業代が発生することがありますので注意が必要です。

(3)裁量労働制

裁量労働制とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めたみなし労働時間を働いたものとみなす制度のことをいいます。

裁量労働制には、記者、大学教授、デザイナーなどが対象とされる専門業務型裁量労働制と、企画、立案、調査及び分析を行う業務が対象とされる企画業務型裁量労働制があり、いずれについても、仕事の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある業務に従事する労働者に対して適用されます。

裁量労働制のもとでは、法定労働時間を超えて労働をしていたとしても、みなし労働時間が法定労働時間の範囲内で定められている場合には、残業手当は発生しません。ただし、あくまでも1日の労働時間を一定時間とみなす制度ですので、休日労働や深夜労働が発生した場合には、当該労働時間分の残業代を請求することができます。

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