外資系だからといって解雇は違法! よくある解雇トラブルと対処法を解説
外資系企業では、日系企業よりも頻繁に解雇が行われるイメージがあります。
しかし外資系企業であっても、日本で雇用されている労働者には労働法の規定が適用され、安易な解雇は違法となります。外資系企業から不当解雇された場合は、弁護士にご相談ください。
今回は、外資系企業による解雇に関する法律上の取り扱いを解説します。
1. 外資系企業でも安易な解雇は違法
外資系企業は、本国における解雇規制が日本より緩やかであることが多いため、日系企業よりも積極的に従業員を解雇する傾向にあります。
しかし、外資系企業の従業員であっても、日本国内で働いている場合には、日本の労働法の適用を主張できます(法の適用に関する通則法12条)。解雇を厳しく制限する「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)も、日本国内で働く外資系企業の従業員には適用されます。
解雇権濫用の法理によれば、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は違法・無効です。したがって外資系企業であっても、日本国内で働く従業員を安易に解雇することは違法の可能性が高いといえます。
2. 外資系企業でよく行われる解雇・退職勧奨の例
外資系企業では、独特の制度・考え方に基づき解雇や退職勧奨を行うケースがあります。外資系企業でよく行われる解雇・退職勧奨の例は、以下のとおりです。
(1)PIP(Performance Improvement Plan)を経た解雇
外資系企業では、業務において十分なパフォーマンスを発揮していないと会社が判断した従業員に対して「PIP(Performance Improvement Plan)」の提出を求めることがあります。
PIPとは、業務上のパフォーマンスを向上させる方法や取り組み方などにつき、従業員が上司などのアドバイスを受けながらまとめた計画のことです。計画に沿って実際にパフォーマンスを改善させることが表向きの目的ですが、「改善指導を行ったが改善されなかった」という解雇の口実を作る意味合いもあります。
日本における解雇権濫用の法理は非常に厳しく、単にPIPを提出させただけでは、解雇が適法と認められることはほとんどありません。それに加えて、従業員による非違行為の悪質性が著しいことや、再三にわたる改善指導を実際に行ったにもかかわらず、一向に改善されなかったことなどの事情が要求されます。
(2)ヘッドカウントを空けるための退職勧奨
外資系企業では「ヘッドカウント」と呼ばれる、部署当たりの人員の上限が設定されていることが多いです。
会社全体の方針として、ヘッドカウントを超える人員を部署に在籍させることはできません。そこで、従業員を新規に採用したい場合は、ヘッドカウントを空けるために、パフォーマンスの低い既存の従業員を辞めさせようとすることがあります。
ヘッドカウントを空ける目的の退職勧奨では、スムーズに従業員を退職させるために、「パッケージ」と呼ばれる上乗せ退職金が提示されるケースが多いです。退職金の額については、会社との間で交渉の余地があります。特に、ヘッドカウントを空ける緊急の必要性があると思われる場合には、かなりの増額が受け入れられる可能性があります。
なお、従業員は必ずしも退職を受け入れる必要はなく、会社にとどまっても構いません。
(3)能力主義による退職勧奨
外資系企業では伝統的に、パフォーマンスの低い従業員を定期的にリストラ(整理解雇)して人件費を圧縮する慣行があります。
しかし、日本では従業員を解雇することは難しいため、リストラ対象の従業員に対しては退職勧奨が行われるのが一般的です。ヘッドカウントを空ける目的の退職勧奨と同様に、多くの場合はパッケージが提示されます。
3. 外資系企業で解雇・退職勧奨に遭った場合は弁護士に相談を
外資系企業によって解雇された場合は、速やかに弁護士へのご相談をおすすめいたします。
特に日本国内で働いている方の場合は、解雇が違法となる可能性はきわめて高いです。弁護士のサポートを受けながら、解雇の無効や退職条件のアップを主張しましょう。
外資系企業から退職勧奨を受けている場合も、弁護士のアドバイスが役に立ちます。パッケージとしてどの程度の金額が適切なのか、退職勧奨を拒否して解雇されたらどうすればよいのかなど、対応方針を決める上で有益なアドバイスを受けられるでしょう。
解雇・退職勧奨について悩んでいる外資系企業の従業員の方は、お早めに弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年02月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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