妊娠を理由にした解雇は違法? 弁護士が対処法を解説
女性の社会進出も進んでいますので、妊娠・出産後も働き続ける方が増えています。しかし、女性の妊娠・出産について理解のない会社では、女性の妊娠を理由として解雇するケースもあるようです。このような妊娠を理由とする解雇は、違法な不当解雇にあたるのでしょうか。
今回は、妊娠を理由に解雇された場合の対処法についてわかりやすく解説します。
1. 妊娠を理由に解雇されたら違法?
妊娠を理由とする解雇は違法なのでしょうか。
(1)妊娠を理由とする解雇は男女雇用機会均等法違反
男女雇用機会均等法では、妊娠や出産したことを理由として女性労働者を解雇することを禁止しています(男女雇用機会均等法9条3項)。そして、妊娠中の女性労働者や出産後1年を経過しない労働者を解雇した場合には、無効になると規定しています(男女雇用機会均等法9条4項)。
(2)男女雇用機会均等法違反のペナルティー
妊娠した女性労働者を解雇した場合には、解雇が無効になるだけではなく、解雇をした会社に対して、一定のペナルティーが科されます。
具体的には、妊娠を理由に解雇した会社に対して、労働基準監督署の指導勧告がなされて、それでも改善が見られない場合には企業名が公表されます。また、指導勧告に対して、報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料に処せられます。
2. 万が一解雇されたときにできることは?
万が一、妊娠を理由に解雇された場合には、以下のような対処法が考えられます。
(1)弁護士に法律相談する
妊娠を理由に解雇された場合には、まずは、弁護士に相談することをおすすめします。
妊娠を理由とする解雇は、男女雇用機会均等法で禁止されていますが、すべての労働者がそのことを理解しているわけではありません。不当解雇であるにもかかわらず、そのことを理解していなければ、正当な解雇であると受け入れてしまうおそれもあります。
弁護士に相談をすれば、解雇の違法性を説明してくれるとともに、今後の争い方についてアドバイスを受けることができます。ひとりで対応することが難しい場合には、弁護士に依頼をすれば、弁護士が代理人として会社との交渉や労働審判・裁判といった法的対応を行ってくれます。
(2)不当解雇の証拠を集める
不当解雇を理由に争っていくためには、解雇が不当であることを裏付ける証拠が必要になります。そのため、まずは、会社に対して解雇理由証明書の請求を行いましょう。
解雇理由証明書は、会社が労働者を解雇した理由を記載した書面です。解雇理由証明書に妊娠を理由とする解雇である旨が記載されていれば、それだけで解雇の効力を争う有力な証拠になります。
解雇理由証明書は、労働者の側から請求をしなければ交付されませんので、解雇された場合は、必ず請求するようにしましょう。
なお、解雇された会社から退職届の提出や退職合意書へのサインを求められることがありますが、絶対に応じてはいけません。それに応じてしまうと解雇ではなく合意退職したことになってしまいますので、不当解雇を争うことができなくなってしまいます。
(3)解雇撤回を求める
妊娠を理由とする解雇は、男女雇用機会均等法に違反する違法な解雇ですので、会社に対して、解雇の撤回を求めていきます。また、解雇が無効になった場合には、解雇日以降の賃金についても会社に請求することができますので、解雇期間中の未払い賃金も一緒に請求するようにしましょう。
解雇の撤回を求める方法には特に決まりはありませんが、解雇の撤回を求めたことを証拠に残すためにも、内容証明郵便を利用した書面による方法で行うのが一般的です。
(4)労働審判の申し立てや訴訟提起
会社が話し合いで解雇の撤回に応じてくれない場合には、裁判所に労働審判の申し立てや訴訟提起を行います。
労働審判は、訴訟とは異なり、簡易かつ迅速に労働問題を解決することができる方法ですので、訴訟提起前に労働審判を利用してみるのも有効な手段です。
労働審判では、専門的知識を有する労働審判員と裁判官により審理・判断が行われますので、事案に即した柔軟な判断が可能という特徴があります。ただし、労働審判に不服がある場合には、異議申し立てによって労働審判の効力は失われてしまう点に注意が必要です。
労働審判や裁判では、専門的知識や経験がなければ適切に手続きを進めていくことが困難ですので、弁護士への依頼を検討するようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2023年06月14日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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