【労働問題】早期解決に有効! 労働審判の手続きについて詳しく解説

【労働問題】早期解決に有効! 労働審判の手続きについて詳しく解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

解雇や未払い残業代の請求など、労働者と雇用者(企業)との民事紛争を迅速に解決できる「労働審判」は実効性のある制度です。

本コラムでは、労働審判が生まれた背景から、基本的な流れや必要な書類などまでを解説します。労働審判のデメリットも理解した上で、できるだけ有利に進められる方法も紹介します。

1. 労働審判制度の背景と手続き

(1)労働審判制度が創設された背景

1991(平成3)年にバブルが崩壊したことにより、日本の経済は長い低迷期に入ります。これにともなって雇用情勢の厳しさが増し、企業組織の再編やリストラ、終身雇用制度の見直しなどが進みました。労働者の就業形態や雇用者側の管理形態が多様化し、労働者-雇用者(企業)間での紛争が大幅に増加したのもこの頃です。地方裁判所における労働関係民事訴訟事件数は、1991年以降の十数年で約4倍に達しています。

こうした背景を受け、増加する労働紛争を迅速かつ適切に解決する制度が検討され、創設されたのが「労働審判制度」です。

2022(令和4)年10月に厚生労働省が公表した「解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について」によると、2008(平成20)年以降、労働者と雇用者との紛争件数は増えたまま、高止まりしている状態です。

(参考:「解雇に関する紛争解決制度の現状と労働審判事件等における解決金額等に関する調査について」(厚生労働省))

(参考:「労働審判制度とは」(愛知県弁護士会))

(2)手続きに必要な書類や費用

労働審判では、まず地方裁判所の裁判官と労働審判員とで構成される「労働審判委員会」が雇用者と労働者との間に入り、話し合い(調停)が行われます。調停によって双方が合意できる条件を引き出せれば問題は解決しますが、合意できずに話し合いが決裂した場合には、一定の法的拘束力を持つ労働審判に進みます。

労働審判では、原則3回以内の期日で結論を出すよう定められており、労働問題民事訴訟に比べれば、迅速な解決を期待できます。裁判所サイト(Courts in Japan)によれば、2006(平成18)年から2022(令和4)年までに終了した事件の平均審理日数は81.2日で、全体の66.9%が申し立てから3か月以内に終了しています。

(参考:「労働審判手続」(裁判所))

申し立ての手続きに必要な書類は次のとおりです。

  • 労働審判手続申立書
  • 予想される争点についての証拠書類
  • 証拠説明書
  • 資格証明書(証明日から3か月以内のもの)
  • 申立手数料(収入印紙)
  • 郵便切手(相手方への郵送料)

そのほかにも必要に応じて委任状や管轄合意書などの提出が求められる場合があります。

(参考:「労働審判手続の申立てに必要な書類について」(東京地方裁判所))

費用としては民事調停と同様、申立書に貼付する収入印紙の購入費が必要です。収入印紙の額は申し立てる請求金額によって異なり、たとえば200万円の場合には7500円分の印紙を貼付しなければなりません。そのほかにも裁判所に出向くための交通費などが必要です。さらに弁護士に依頼する場合には相応の弁護士費用がかかります。

(参考:「労働審判のQ&A」(裁判所))

2. 労働審判のデメリット

(1)迅速性が求められ、準備に手間がかかる

労働紛争を迅速に解決できることから、実効性のある制度として定着してきた労働審判ですが、裏を返せば、この迅速性はデメリットにもなり得ます。まず、申し立てを行う労働者側には、上述した申立書や証拠書類などの準備を短期間のうちに行わなければならず、大きな負担になります。

さらに審理期日が3回までとされていることもあり、双方の主張は初回の審理で出し尽くすよう、労働審判法第17条で定められています。労働者側も雇用者側も長年争ってきたであろう事案について、わずか数時間で主張し尽くすことは難しく、さらに裁判所側も十分とは言いがたい審理期日で拙速な判断を下してしまうおそれがあります。労働審判では一般的に証人尋問が行われないことも、拙速な判断を誘引しかねない要因になっています。

(2)本人が出席する必要がある

ほとんどの場合、代理人である弁護士の出席で進められる通常の民事裁判とは異なり、労働審判では、労働者・雇用者側ともに第1回期日に当事者本人が出席して、申し立ておよびそれに対する反論を口頭で行うことが求められています(代理人として弁護士を依頼した場合でも、当事者本人の出席が求められます)。

審理は原則、平日の日中に行われることから、仕事を休んだり、子どもを誰かに預けたりと、スケジュールを調整する必要があります。なお、労働審判は一般的な裁判とは異なり、非公開で行われます。

労働審判は労働者個人が申し立てを行い、審理期日に本人が主張を述べることも可能ですが、豊富な知識やノウハウを持つ弁護士に依頼すれば、審判を有利に進められる可能性が高まります。

3. 労働審判を弁護士に依頼すべき理由

労働審判は、最大3回以内の審理期日で終わる「短期決戦」です。申し立て前には証拠となる書類をくまなく集め、請求金額を計算し、申立書に正しく記載する必要があります。開始後も、相手方である雇用者側から出された書面を確認した上で、反論しなければなりません。

より有利に労働審判を進めたい場合は、弁護士からのアドバイスやサポートをうまく活用するのが最善手のひとつです。弁護士に依頼するには相応の費用はかかるものの、申し立てに関する複雑で膨大なタスクは弁護士が行ってくれます。

なかには労働紛争を専門に扱っている弁護士もおり、こうした知識も経験も豊富な弁護士に依頼すれば、実務面はもちろん、精神面でも大きな支えになります。労働関係のトラブルで悩みがあれば、弁護士への依頼を検討してみてください。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年02月29日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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