職場での悪口で訴訟を起こせる? 名誉毀損罪や侮辱罪で訴えたい人へ

職場での悪口で訴訟を起こせる? 名誉毀損罪や侮辱罪で訴えたい人へ

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

職場で同僚に言われた悪口やうわさが原因で体調を崩し、退職に追い込まれてしまった人が、加害者である同僚を訴えたいと思うのは当然です。

本コラムでは、職場内で悪口による被害を受けた場合に、悪口を言った相手を罪に問えるケースについて紹介します。また、訴訟を起こす方法や流れについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

1. 職場での悪口で訴訟を起こせるケース

職場における悪口や陰口は、耳に入ってしまった本人にとって決して気持ちのよいものではありません。しかし、一口に悪口と言っても、訴訟対象になるものと、ならないものがあります。同僚の言葉が単なる悪口ではなく、名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪に当てはまる場合、これらの罪で同僚を訴えることができます。

(1)名誉毀損罪と侮辱罪とは

自分のケースが、訴訟を起こせるかどうかを判断するには、2つの罪がどのような内容であるかを知ることが重要です。

①名誉毀損罪とは

名誉毀損罪は、刑法230条に明示される通り“公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損”するという罪です。つまり、相手方の社会的な信用を損ねるような危険性のある言動をしますと、名誉毀損罪に問われます。名誉毀損罪は、暴露した事柄が真実であるかどうか、実際に相手方の社会的評価が下がったのかどうかに関係なく成立するのがポイントです。

名誉毀損罪が確定した場合、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金が科されます。

②侮辱罪とは

侮辱罪は、刑法231条に明示される通り“公然と人を侮辱した”場合に成立する犯罪です。多くの人や特定されない誰かの前で、相手を見下して人格を蔑視するような行為をすると侮辱罪に問われます。名誉毀損罪とは異なり、具体的な事実がない「バカ」や「マヌケ」といった誹謗(ひぼう)中傷の言葉でも成り立つのがポイントです。

侮辱罪が確定した場合、1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料が科されます。

(2)職場の悪口で罪に問える具体的なケースとは

実際に職場で悪口を言われた場合に、名誉棄損罪や侮辱罪が成立するかどうかはケース・バイ・ケースです。ここでは、罪に問える可能性が高い3つのケースを紹介します。

①根拠のないうわさを流された

同僚が「〇〇さんには窃盗の前科があり、〇〇さんに財布を盗まれた」などと根も葉もないうわさを流し、それが社内に広まったとしますと、このような言動は、一般的に言って、〇〇さんの社会的評価を下げるものですから、名誉毀損罪が成立し得ます。

②周りに知られたくない事実を言いふらされた

SNSや飲み会といった不特定の人や多くの人が集まる場所での暴露話も、罪に問える可能性があります。同僚が「若い頃、〇〇さんは暴走族に入っていて、警察に捕まったことがある」など、知られたくない過去を周囲に言いふらしたとしますと、やはり○○さんに対する周囲の評価を下げる行為として、名誉毀損罪が成立し得ます。

③暴言を吐かれた

同僚が自分に対し、「ブス」「ドアホ」「チビ」「このタコ」などと人前で暴言を吐いたとしますと、他人に対して屈辱的な言動を行ったものとして、侮辱罪が成立し得ます。

(3)悪口で訴訟を起こしても罪に問えないケースとは

訴訟に踏み切っても、以下のケースでは罪に問えないので注意しましょう。

①名誉毀損罪や侮辱罪の要件を満たしていない

悪口が公然と言われたものでない、つまり同僚と自分の2人だけしかいないときに悪口を言われたケースなど、法律で定められた要件を満たさない場合には、名誉毀損罪や侮辱罪が適用されないので罪に問えません。

②悪口を言われたのが自分だと特定できない

誰に対して言った悪口か判断がつかず、悪口の対象が自分だと特定できないケースも罪に問えません。

③公共の利害に関する事実であった

公共の利害に絡み、社会に利益をもたらす目的で、間違いなく真実である事柄を暴露した場合または真実であると信じるにつき相当の理由があった場合には、法秩序に合う正しい行為とみなされて、特別に許容されます。

④時効が過ぎていた

名誉毀損罪、侮辱罪には時効が定められており、時効を過ぎた場合には罪に問えなくなります。名誉毀損罪と侮辱罪はともに、被害を受けた側が、警察などに被害があった旨を伝え、処罰を求める告訴を行わなければ、成立し得ない「親告罪」です。親告罪の告訴期間は、悪口を言った加害者の存在を知った日から数えて6か月とされています(刑事訴訟法235条1項)。

したがって、被害者は、半年以内に告訴に踏み切らないと、刑事責任を問える権利を失います。また、刑事事件には犯罪発生後一定期間が過ぎると起訴できなくなる「公訴時効」があります。名誉毀損罪、侮辱罪の公訴時効は、悪口を言われた日から数えて3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。

2. 悪口を言った相手を訴える方法

悪口を言った相手を訴えるには、刑事告訴と民事訴訟の2種類の方法があります。どちらか一方を選択しても、両方を選択しても構いません。

(1)刑事告訴をする

相手に刑事罰を与えたい場合には、証拠を集めて、警察に告訴状と証拠を提出します。被害届の提出だけでは処罰を希望する意思表示にならないので、注意しましょう。警察が告訴状を受理すると捜査が始まり、書類や証拠が検察に送られ、罪を犯した証拠が十分にあり、刑事罰を科すのが妥当と検察官が判断したら起訴され、裁判へと進みます。

(2)民事訴訟で損害賠償請求をする

自分が悪口によって受けた損害を金銭の支払いという形で相手に償わせたいなら、民事訴訟を起こして、損害賠償を請求します。一般的な民事訴訟の場合、まず裁判所に、訴訟に必要な訴状などの書類を提出しなければなりません。裁判所で書類が受理されると、裁判所が期日を決めて訴えた側と訴えられた側を呼び出し、証拠調べなどが行われ、審議されて判決が下されます。

3. 職場の悪口で訴訟をするなら弁護士に相談するのがベター

刑事・民事の法的措置を執るには、法律の専門知識が必須です。民事訴訟の場合には、本人だけで訴訟に挑むこともできますが、法律の専門知識を持たない人が、単独で訴訟を起こすのは極めて困難です。そのため、法的措置を執るなら弁護士の力を借りることを強くおすすめします。

(1)名誉毀損罪や侮辱罪に基づく法的措置で弁護士に依頼するメリット

法律の専門知識を有する弁護士に法的措置を依頼すれば、主に以下の2つのメリットが得られます。

①手続きを一任できる

弁護士に依頼すれば、自分のケースで罪に問えるかまたは損害賠償を勝ち取れるかどうか、専門的な判断を仰げます。また、法的措置の手続きを一任できます。弁護士に対応を任せれば、自力で行うよりも時間がかからずに書類などが用意でき、相手との交渉も任せられます。

②手続きを有利に進めるアドバイスをもらえる

名誉毀損罪や侮辱罪の法的措置に強い弁護士は、これらの手続きを有利に進めるノウハウを持っているため、的確なアドバイスをもらえます。有益なアドバイスにより、手続きを有利に進められれば、自分が望む判決が下される可能性が高くなります。

(2)悪口の証拠は可能な限り残しておく

刑事告訴でも民事訴訟でも、相手が悪口を言った証拠を可能な限り残しておくことが、非常に重要です。証拠が不十分だと、刑事告訴しても検察官は立件をあきらめざるを得ず、民事訴訟しても損害賠償金を勝ち取れません。

相手が悪口を言った一部始終を、スマートフォンなどで録音・録画しておけば、そのデータは大切な証拠となります。ただし、録音や録画を行う際に、相手のプライバシーを侵害してしまうと、逆に訴えられる可能性があるので、十分な配慮が必要です。プライバシーを侵害することなく証拠を残すためにも、弁護士に相談するのがおすすめです。

また、メールに悪口が書かれていた場合には、メールを削除したり、紛失したりしないように、保存しておくことが肝心です。SNS上に悪口を書き込まれた場合には、スクリーンショットを利用して証拠画像を撮影し、保存しておきましょう。

悪口を言った同僚を訴えて、罪を償わせるには、弁護士のサポートが欠かせません。時効でやむなく告訴を断念するといった事態に陥らぬよう、早めに相談しましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年05月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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