飲み会や飲酒を強制された! 上司や会社を訴えることはできる?

飲み会や飲酒を強制された! 上司や会社を訴えることはできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

職場での懇親会や忘年会といった飲み会は、上司や同僚などと親睦を深める機会ですが、参加を強制するとトラブルの原因になります。

本コラムでは、飲み会や飲酒を強いられた場合にパワハラなどで訴えることができるのか、会社や上司に対して何を根拠にどのような請求ができるのかを解説します。

1. 職場での飲み会への参加強制はパワハラに該当する?

職場において飲み会への参加を強制した場合、いわゆるパワーハラスメント(以下、パワハラ)に該当する可能性があります。

(1)パワハラとは

パワハラの定義としては、労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」の第30条の2第1項に規定されています。具体的なポイントとしては、以下の3点です。

  • 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  • 雇用する労働者の就業環境が害されること
出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第30条の2第1項

これらをすべて満たした場合に、その言動はパワハラであると認定されます。

(2)パワハラの事例

以上を踏まえ、飲み会に関してパワハラに該当しうる例を紹介します。

  • 飲酒の強要で体調を崩させた
  • 飲酒を断った相手に対し、仕事上の嫌がらせをして退職に追い込んだ
  • 飲み会を欠席する部下に対し、執拗(しつよう)に理由を問いただした など

たとえば、上司がその優越的な関係に基づいて飲酒を強要したり、飲酒を断った部下を重要なプロジェクトから外したりした場合、パワハラに該当すると見なされます。飲酒の強要や重要案件からのスポイルは「業務上必要かつ相当な範囲」を超えていると解釈できますし、労働者の就業環境も害されているからです。

あるいは、飲み会の欠席理由をしつこく聞き出そうとするなどの働きかけも、パワハラに該当する可能性があります。

2. パワハラを受けたら損害賠償請求が可能

飲み会や飲酒に関してパワハラを受けた場合、相手に損害賠償を請求できます。請求の相手方として考えられるのは、パワハラをしてきた上司個人と、会社です。

上司個人に損害賠償請求する際の法的根拠は不法行為(民法第709条)であるのに対し、会社への請求に関する主な法的根拠としては、安全配慮義務違反(労働契約法第5条・労働安全衛生法第3条第1項、民法415条)と使用者責任(民法715条)が挙げられます。

(1)安全配慮義務違反(労働契約法第5条・労働安全衛生法第3条第1項、民法415条)

会社は労働者に対して、生命や身体などの安全を確保しながら労働する上で、必要な配慮を行う義務を負っています。これが安全配慮義務です。会社が本来なら行うべき労働者の労務管理を怠った場合に、義務違反となります。

飲み会への参加や飲酒を強制された場合、安全配慮義務違反を理由として、会社に対する損害賠償の請求が考えられます。

(2)使用者責任(民法715条)

被用者(従業員)が、事業の執行について第三者に損害を加えた場合、その損害は使用者(会社)も賠償する責任を負います。これが使用者責任です。

態度や言葉で参加を拒否しているにもかかわらず、上司などから飲み会に参加するよう強制されたとします。その場合、強制が事業の執行においてなされた、関連があると見なせるならば、会社に対し、使用者責任に基づく損害賠償の請求が考えられます。

3. 飲み会への参加を強制させられた場合は弁護士への相談がおすすめ

飲み会への参加強制をはじめとするパワハラを受けた場合、弁護士への相談が推奨されます。弁護士がつくことで請求しやすくなるのは、まず適正な金銭的補償です。具体的には、パワハラの慰謝料や未払い賃金の支払いが挙げられます。

弁護士は、飲み会参加や飲酒の強制がパワハラに該当することの証拠集めをサポートし、法的な根拠に基づく主張を組み立ててくれます。これにより、パワハラを受けたことによる精神的な苦痛への賠償金、である慰謝料が請求可能です。

また、強制された飲み会が労働時間に含まれると捉えられる場合、労働基準法に定めのある法定内残業や時間外労働だとして、その分の残業代を請求できる余地があります。

飲み会が休日や深夜に行われたのであれば、休日労働や深夜労働としての割増賃金請求も可能です。これも弁護士のサポートにより、飲み会が労働時間に含まれることなどの主張や立証がしやすくなります。

次に、金銭的補償以外の請求として、弁護士を通すことで、飲み会への参加強制をやめさせるよう会社に強く訴えることも可能です。

どちらを求めるにしても、自分自身で会社とやり取りする必要がないため、時間・労力・ストレスが軽減されるというメリットがあります。

会社や上司をパワハラで訴える場合には、パワハラに該当するかどうかを確認した上で、証拠の収集も必要です。手続きなどに不安を感じる方は、弁護士への相談をおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年06月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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