そもそも予防接種とは? 法律上、接種は義務づけられているの?
新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種が各国で始まっており、日本でも医療従事者から接種が開始されました。予防接種といえば副反応が気になる方も多いでしょう。実際に、外国では新型コロナウイルスワクチンによる副作用が複数報告されています。
自分に新型コロナウイルスワクチン接種の案内が来たらどうすればいいのでしょうか。そもそも、予防接種とは、全員が受けなければならない義務なのでしょうか。
1. そもそも予防接種って何?
予防接種とは、特定の感染症に対する免疫をつけたり、もともと持っている免疫をより強くしたりするために、ワクチンを接種することをいいます。
免疫とは、感染症などの病気に対する体の抵抗力のことです。ワクチンを接種すると、特定の病気に対する免疫が体につきます。すると、自分自身がその病気にかかることを予防できます。さらに、自分が病気にかからないことによって、自分の周りの人に感染させてしまうリスクに対処できます。
こうして、多くの人が予防接種によって免疫をつけることで(これを「集団免疫」といいます)、わたしたちの社会に病気がまん延してしまうのを防ぐことができるのです。また、予防接種を受けていると、万が一、その病気にかかったとしても、症状が悪化し、重篤な状況になることを防げる可能性も高いとされています。
このような理由から、国民の健康を守るため、予防接種法という法律によって、予防接種の制度が定められているのです。
2. 予防接種は義務なの?
このように、予防接種は法律で定められている制度です。ということは、予防接種を受けることは、国民の義務なのでしょうか。
(1)予防接種は努力義務
予防接種のうち、定期予防接種といわれるものについては、以前は国民に接種の義務が定められていました。しかし、予防接種によって副作用が出たこともあって、法改正がなされ、現在施行されている法律では、予防接種を受けなければならない義務はありません。
ただし、誰も予防接種を受けなければ、感染症が社会に広がって大きな損失につながるリスクがあります。そこで、感染症の発生やまん延を防止するために、予防接種が必要とされる病気(「A類疾病」と呼ばれます)や、緊急の必要性が認められる場合に行われる臨時予防接種の一部について、国民は予防接種を受けるように努めるべき義務が規定されています(努力義務)。
したがって、国としては、予防接種を推奨していますが、実際に接種を受けるかどうかを最終的に判断するのは、あくまで本人(未成年者の場合は保護者)なのです。
(2)無料で受けられる予防接種
予防接種にはたくさんの種類があります。そのうち、予防接種法に基づく「定期接種」のワクチンのうち、「A類疾病」の予防接種は、誰もが受けることが推奨されている、接種努力義務の対象です。
「A類疾病」の予防接種は、居住地の市町村内で受ける場合は無料で接種が受けられます。
なお、定期予防接種とは、一定の年齢で接種を受けることとされているワクチンのことを指します。
つまり、接種の対象となる年齢と、望ましい接種の期間(「標準的接種期間」といいます)、接種の回数、次の接種までの間隔など、いわばワクチン接種のスケジュールが細かく定められています。
ワクチンの中には、一定期間の間に決められた回数を受けなければ、効果が得られないものもあります。予防接種は、スケジュールに沿って決められた回数をしっかり接種することが求められています。
<A類疾病>
- ジフテリア
- 百日せき
- 破傷風
- 急性灰白髄炎(ポリオ)
- B型肝炎
- Hib感染症
- 小児の肺炎球菌感染症
- 結核(BCG)
- 麻しん(はしか)・風しん
- 水痘(水ぼうそう)
- 日本脳炎
- ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症
- ロタウイルス感染症(令和2年10月から追加されました)
(参考:厚生労働省「予防接種情報」より)
(3)費用の一部を公費負担してもらえる予防接種
定期予防接種のうち、「B類疾病」の予防接種は、年齢や疾病などの条件を満たせば、接種費用の一部を公費で負担してもらえる場合があります。なお、B類疾病については、接種の努力義務はありません。
<B類疾病>
- 季節性インフルエンザ
- 高齢者の肺炎球菌感染症
(参考:厚生労働省「予防接種情報」より)
(4)任意接種
予防接種法に基づく「定期接種」以外のワクチンもたくさんあります。これは、個人が感染症にかかったり、重症化したりするのを防止するために受けるワクチンです。
<任意接種の例>
- 海外渡航の際に、渡航先によって、接種が求められている予防接種
- 定期接種を受けなった場合に、対象年齢以外で受ける予防接種
(参考:厚生労働省「予防接種情報」より)
(5)新型コロナウイルスワクチンは接種努力義務
予防接種法では、定期予防接種とは別に、緊急の必要がある場合だけに実施する「臨時予防接種」が規定されています。
新型コロナウイルスワクチンの予防接種は、この臨時予防接種として行われることになります。臨時予防接種の実施は、厚生労働大臣が疾病の種類を定め、都道府県知事が、当該予防接種の対象者、接種の期日、期間などを具体的に決定します。
新型コロナウイルスについては、接種の努力義務がありますが、必ず接種しなければならないわけではありません。したがって、新型コロナウイルスワクチン接種の案内が来た場合、実際に接種を受けるかどうかは、自分で判断して決めることになります。
副反応のリスクやワクチンによる予防の効果などについて十分に情報を集めて、納得いく判断ができるように事前に検討しておくとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年06月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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