病院の誤診、見落とし。慰謝料の相場と訴えるときの注意点
医療機関による診断結果が誤っており、結果的に患者が死亡した場合や、重度の障害を負った場合は、ご本人やご遺族は決して納得できないでしょう。
医療機関の誤診については、慰謝料請求の対象となる可能性があります。早い段階で弁護士に相談して、適正額の慰謝料獲得を目指しましょう。
今回は誤診に関する慰謝料について、金額相場や請求時の注意点などを解説します。
1. 誤診の慰謝料の金額相場
医療機関による誤診は、不法行為(民法第709条)に基づく慰謝料請求の対象となります。
慰謝料の金額はケースバイケースですが、患者に生じた死亡・後遺障害などの結果と、誤診の間に因果関係があるか否かによって大きく差が生じます。
(1)誤診がなければ死亡や障害を回避できた場合
患者に生じた死亡や障害による損害が、誤診がなければ避けられたと評価される場合(=因果関係が肯定される場合)には、患者の損害全額について賠償が認められます。
この場合、請求が認められる慰謝料の金額は、本人・遺族を合わせて2000万円から2800万円程度です。そのほかにも、将来にわたって失われた収入(逸失利益)や、治療にかかった費用などの損害賠償を請求できます。
(2)誤診と死亡・障害の間に因果関係がない場合
一方、誤診がなくても患者の死亡・障害が発生した可能性がある場合(=因果関係が否定される場合)には、死亡・障害そのものについての損害賠償は認められません。
しかし、誤診によって治療を選択する機会を奪われ、自己決定権を侵害されたことなどを理由に、医療機関に対して慰謝料を請求する余地は残されています。 この場合、慰謝料額は50万円から200万円程度の低額に抑えられることが多いです。また、因果関係が肯定される場合とは異なり、逸失利益や治療費などの損害賠償は認められない点にご注意ください。
2. 誤診について慰謝料を請求する際の注意点
医療機関の誤診を受けたことにつき、慰謝料を含む損害賠償を請求する場合には、以下のポイントを念頭にご対応ください。
(1)因果関係の証明がポイント
前述のとおり、死亡や障害と誤診の間に因果関係が認められるか否かによって、医療機関に対して請求できる損害賠償額は大きく変わります。
因果関係の立証に当たっては、医療機関に保存されているカルテなどの資料を、医学的な観点から分析・検討することが必要不可欠です。権威ある医学者に意見書の作成を依頼するなどして、できる限り有力な証拠の確保に努めましょう。
また、最終的には医療過誤訴訟へ発展する可能性が高いので、裁判所における立証活動を具体的にイメージしながら証拠を準備することが大切です。そのため、弁護士のサポートを受けながら準備を進めることをおすすめいたします。
(2)訴訟以外にも複数の方法を検討すべき
本格的に医療訴訟を戦う場合、数年間の長期戦になることも覚悟すべきです。
これに対して、医療機関側(病院側)との示談交渉を通じて損害賠償の合意が得られれば、早期に紛争を解決できる可能性があります。特に、医療機関側の姿勢が柔軟な場合や、誤診の決定的な証拠がある場合には、示談交渉の妥結も見込めるでしょう。
また、厳密な主張・立証活動が求められる訴訟の前に、裁判所の調停を利用することも考えられます。調停委員が間に入り、医療機関と患者(または遺族)の話し合いを取り持つことで、直接交渉ではまとまらなかった合意を得られる場合があります。
もちろん、医療機関側と患者側の主張が厳しく対立している場合には、訴訟が避けられないことが多いです。しかし、訴訟以外の選択肢もあることを念頭に置きながら、状況に応じて適切な方法を選択することが大切になります。
ご自身の状況において、どの方法で誤診の損害賠償請求を行うべきかについては、弁護士と相談しながら決めるのがよいでしょう。
3. 誤診についての慰謝料請求は弁護士へ相談を
医療機関の誤診により被った損害につき、適正額の賠償金を得るためには、誤診の事実そのものに加えて、誤診と死亡・障害の間の因果関係を立証する必要があります。そのためには、医学者の意見書をはじめとして、有力な証拠を十分に確保することが大切です。
ただし、十分な証拠を確保できたとしても、医療機関側がすんなり損害賠償に応じるとは限りません。損害賠償を拒否されることも想定して、弁護士に相談しながらきちんと理論武装を行いましょう。
弁護士は、医療過誤(医療事故)に関する損害賠償請求について、証拠の確保から実際の請求手続きまで、被害者を一貫してサポートしてくれます。誤診のせいで重大な障害を負った方や、ご家族が亡くなってしまった方は、お早めに弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年01月30日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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