美容整形で失敗された! 返金は難しいって本当?
近年、美容整形におけるトラブルは増加傾向にあります。しかし、整形手術を失敗された場合、残念ながら多くのケースにおいて、希望通りに返金に応じてくれるとは限りません。
本コラムでは、美容整形のトラブル例や返金の判断基準、損害賠償をする際のポイントを解説します。美容整形を検討している方は参考にしてみてください。
1. 美容整形の施術トラブルは多い
美容整形の施術トラブルは年々増加傾向にあり、全国の消費者センターに寄せられた、美容医療に関するトラブルの相談は2017年の1878件から2021年の2766件へと、4年で1000件近くも増加しています。毎年度、実際に被害に遭ったケースも発生しており、相談件数のうち約21〜25%を占めるなど、深刻化しています。
美容医療における施術は、美容の向上を目的とする医療サービスであり、ここに含まれるのは、脂肪吸引や医療脱毛、豊胸手術、包茎手術、審美歯科、二重まぶた手術などの施術です。
(1)美容整形の施術による失敗やトラブルの例
美容整形の施術による失敗やトラブルの具体例には、以下のケースが挙げられます。
- 二重まぶたの手術を受けたが、片側だけ二重にならなかった
- 二重まぶたの手術を受けたが、痛みや腫れがひどいため抜糸した
- ボトックス注射を受けたが、額の腫れが一向に引かない
- 「4~5年は効果が続く」と言われて施術を受けたのに、2週間で元に戻ってしまった
- 美肌レーザーの手術を受けたが、赤く腫れてしまった
他にも、さまざまな失敗・トラブル例が報告されており、中には治療を必要とするケースもあります。
2. 美容整形の失敗は返金してもらえるのか?
美容整形の失敗において返金に応じてくれるかどうかは、クリニックの対応や医療ミスの有無などの状況によって変わります。以下より、返金に関するポイントをまとめました。
(1)クリニックの返金制度や保証制度などの契約内容を確認する
クリニックにより、施術に関する返金制度や保証制度が異なります。「中途解約が可能であるか」「どの程度の副作用があるのか」「手術が失敗したら返金されるのか」など、契約前にしっかり確認しておかなければなりません。
また、失敗による返金制度があったとしても、対象とする失敗の程度などを明らかにすることは困難です。多くのクリニックでは返金ではなく、再手術を提案してくるでしょう。
(2)明らかな医療ミスではない限り、返金は期待できない
前述したように、失敗したことを証明するのは困難です。また、身体に危害を受けた場合も、明らかな医療ミスであることを立証するのは難しいとされています。失敗したのかどうか、法的な過失があったかどうかは、医療の知識や技術を踏まえて、具体的に示さなければなりません。その証拠となる資料はクリニックが保有しており、開示を求めることはできても、証拠集めはそう簡単に進まないでしょう。
このことから、返金が期待できるのは、法的な根拠に基づいて、明らかな医療ミスが認められた場合です。しかし、返金された事例が少なく、美容整形のために支払った費用よりも、返金額が大幅に少ない事例もあります。
3. 返金だけではなく、損害賠償請求も視野に入れよう
美容整形で失敗などのトラブルに遭った場合、返金を求めることも当然の権利ですが、損害賠償請求を視野に入れることも重要です。ここでは、失敗された場合に問える責任をはじめ、美容医療における立証の難しさや説明義務、賠償請求の対象となる損害の項目について解説します。
(1)美容整形の失敗で問える責任
明らかに失敗された場合、民法第415条の「債務不履行責任」および民法第709条の「不法行為責任」に問える可能性があります。その場合、医師の債務不履行や過失によって、法律上、保護されるべき利益を侵害したことの立証が必要です。その際には、「診療義務違反」や「治療義務違反」などにあたるかどうかが重要になります。
(2)診療義務違反の立証は難しい
美容医療は、通常の医療行為と異なり、「必ず行わなければならない治療ではない」という特徴があります。そのため、手術自体の診療義務違反は通常の医療における手術と比べて、立証が難しいとされています。また、治療義務違反においても、術後の処置と受けた損害の因果関係が明らかでなければ、立証は困難です。
しかし、ケースによっては、どちらの義務違反も立証できることもあります。もし、診療義務違反および治療義務違反を疑う場合、弁護士に一度相談してみることもひとつの手です。
(3)美容医療の説明義務
美容医療においては、その医療行為自体が医学的な必要性および緊急性に乏しく、美容の向上という願望のために行われることから、通常の医療よりもさらに高度な説明義務が課されています。
たとえば、けがや病気などにより命に関わる状態とは異なり、治療法や効果、副作用などの説明をもとに、患者は「施術を受けない」という選択肢も選べることが基本です。したがって、患者が「受ける・受けない」のどちらも選べるように、しっかりとした説明が医師には求められます。
(4)損害賠償の対象となる損害項目
美容整形の失敗により損害賠償請求を行う場合、クリニック側への請求が可能な損害には、以下の項目が挙げられます。
- 手術費用
もし過失が認められた場合、契約に基づく提供すべき手術が行われなかったことになるため、請求できます。 - 慰謝料
美容整形の失敗により受けた精神的損害に対する補償です。 - 後遺症に関わる治療費や通院のための交通費
失敗により後遺症などの危害を受けた場合、その治療にかかった全般的な費用を請求できます。 - 弁護士費用
不法行為に基づいた損害賠償請求では、責任追及のために依頼した弁護士費用の相当額が補償されます。
美容整形の失敗による損害賠償請求を検討している場合、ひとりで悩まずに、まずは医療訴訟に詳しい弁護士に相談することが大切です。
- こちらに掲載されている情報は、2023年11月29日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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