建設請負業者が工事を途中放棄した! 損害賠償は請求できる?

建設請負業者が工事を途中放棄した! 損害賠償は請求できる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

家や庭などの工事を業者に依頼していたところ、何らかのトラブルで請負業者が工事を途中放棄するケースがあります。この場合、注文者や元請け業者としては、責任追及を考えなければなりません。

本コラムでは、請負人が工事を途中放棄できるケースの概要や、損害賠償請求の可否に関して解説します。

1. 請負人の工事の途中放棄は認められている?

新築工事やリフォーム工事などで建設請負契約を結んだ後でも、請負人が工事を途中で放棄し、契約を解除することは認められています。ただし、請負契約では請負人が「仕事の完成」を約束している以上、自由に仕事を放棄できるとしてしまうと、注文者にとって大きな不利益が生じかねません。

そこで、請負人からの契約解除、つまり途中放棄は一定のケースに限定されています。具体的には以下の場合です。

(1)注文者に契約に違反する行為があった場合

注文者の側に請負契約に違反した行為がある場合は、請負人が工事を途中放棄(契約解除)することも認められる可能性があります。解除の根拠となる法律の条文は、民法第541条と第542条です。

注文者の違反行為としては、以下のものが挙げられます。

  • 支払期日を過ぎているのに代金を払わない
  • 工事現場などで妨害行為をした
  • 請負人に必要な工事資料を渡さない

など

これらの事態が生じた場合、請負業者は改めて期間を定め、未払い代金の支払いや資料の提供を求める「催告」を行うことになります。催告をしてから一定期間を過ぎても相手からの対応がなければ、契約の解除が可能となります。

(2)注文者が破産した場合

注文者の破産は、民法に定めのある「法定解除権」が行使できるケースに該当します。請負人が工事を行っている途中で、注文者が破産手続き開始の決定を受けた場合には、民法第642条第1項により請負人から契約が解除できます。このケースでは、解除する前に注文者に対して催告をする必要もありません。

ただし、注文者の破産手続きが開始したとしても、契約解除できるのは工事が完成する前の段階のみです。すでに目的の建築物などが完成している場合、請負人による解除はできません。

(3)注文者との間で契約解除の合意があった場合

請負人と注文者がお互いに合意した場合も、工事の途中放棄は可能です。注文者が契約解除に納得しているのであれば、工事の放棄を認めても不都合はありません。請負契約を結ぶ際に、トラブルが発生したケースを想定して契約解除になる条件を決めておくと、双方の合意による契約解除も容易です。

契約時には、契約書に解除の条件を記載しておきます。そうすることで、万が一トラブルが起きたとしても、工事の放棄が認められる場合に該当するかどうかの判断をしやすくなります。

出典:e-Gov法令検索「民法

2. 請負人に工事を途中放棄されたとき損害賠償は請求できる?

請負人が工事を途中放棄したケースでは、注文者側に問題があり工事が中断された状態であっても、状況に応じて支払い済みの代金返還請求や損害賠償請求ができます。

(1)支払い済みの代金の返金請求

工事が完成する前に契約解除となったケースで、すでに支払われた代金が施工済みの箇所に対して少ない場合、請負人はその差額分を請求する権利があります。

他方、施工代金が全額支払われている場合には、未施工の箇所の代金を注文者が払いすぎていることになります。そのため、注文者は、支払い済みの代金のうち未施工部分に限って返金を請求可能です。なお、施工済みの箇所が契約内容と大きく異なっている場合には、注文者が利益を受けていないと見なされ、施工済み箇所の代金まで含めて全額返金請求が可能なケースもあります。

(2)債務不履行による損害賠償請求

請負契約を解除しなければ、契約は有効な状態が続きます。工事が放棄されると、完成予定日に目的物を引き渡せません。この場合、契約で合意した債務が履行できないこととなり、工事を放棄した請負人の債務不履行になるため、注文者は、工事遅延によって損害を受けたとして、損害賠償請求が可能です。

請求できる賠償金には、工事が完成しなかったために発生した費用などが一定範囲で含まれます。たとえば、家の建設請負契約であれば、家が予定日に完成せず住めなかったことで生じた仮住まいの費用などです。

3. 建築トラブルは弁護士に相談を

建築トラブルが発生した場合、適切な対処を行うにはさまざまな事務手続きなどが必要となります。たとえば、工事が途中で放棄された場合、催告を行うなどして、適切に工事請負契約を解除しなければなりません。支払い済みとなっている工事代金の返金請求などを行うためには、出来高査定や工事に不具合がないかの調査も必須です。

弁護士に依頼すると、損害の金額計算から工事の着手金等の返金請求手続き、損害賠償請求の手続き、問題がなかなか解決しない場合の訴訟まで、幅広いサポートが受けられます。

また、工事請負契約に関するトラブルを回避するには、契約時に具体的な内容を定めておくことが重要です。契約書には、金額面での問題を避けるために、資材などの数量や単価まで明確に記載された見積書を添付します。契約書には工事代金の支払日、工期の明記も必要です。さらに工期の延長が必要になった場合の条件、解約条件を明記しておくと、トラブルが発生した場合にも、契約書に記したとおりの対応で解決が可能です。

建設請負業者による工事の放棄は可能ですが、それは一定の条件下に限られます。工事を放棄されて対処に困っている方は、弁護士に相談して返金や損害賠償の請求などを検討しましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年07月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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