賃料減額請求とは? 法的手続きの流れは
賃貸物件の賃料が適正水準よりも高すぎる場合、賃借人は賃貸人に対して賃料減額請求を行うことができます。
今回は、賃料減額請求の概要・認められるケース・請求手続きについて解説します。
1. 賃料減額請求(借賃減額請求)とは
「賃料減額請求(借賃減額請求)」とは、賃借人が賃貸人に対して、適正水準より高すぎる賃料の減額を求める請求です(借地借家法第32条)。協議・調停によって減額の合意が成立するか、または訴訟で減額を認める判決が確定した場合に、賃貸物件の賃料が減額されます。
賃料減額請求を行ったとしても、賃借人が賃貸人から物件を追い出されることはありません。賃料減額請求を行ったことは、賃貸借契約の解除事由や、更新拒絶の「正当の事由」(借地借家法第28条)に該当しないからです。
なお、賃料減額請求と同様に、賃貸人側からの賃料増額請求も認められています。賃料増額請求と賃料減額請求を合わせて「賃料増減請求(借賃増減請求)」といいます。
2. 賃料減額請求が認められるケース
賃借人による賃料減額請求が認められるのは、以下の3つのいずれかに該当するケースです。
(1)土地・建物の固定資産税などが減額された場合
土地・建物に対する租税その他の負担が減った場合は、賃料減額請求が認められます。
土地・建物に対する租税の例は、固定資産税・不動産取得税・登録免許税などです。特に固定資産税は毎年発生するため、仮に減額となれば賃料減額請求が認められる可能性が高まります(ただし、実際に固定資産税が減額される見込みは小さいと考えられます)。
(2)土地・建物の価格が低下した場合
建物の敷地や、建物本体の取引価格が低下した場合には、賃料減額請求が認められます。
たとえば不動産市場が暴落して、土地・建物の価格が大幅に下がった場合や、建物の築年数が古くなったことにより、建物の価格が下がった場合などには、賃料減額請求が認められる可能性があります。
(3)近隣の賃料相場が下落した場合
近傍同種の建物の賃料が下落した結果、物件の賃料額が不相当に高すぎることとなった場合には、賃料減額請求が認められます。
たとえば、過疎化が進んで近隣物件の需要が落ち込み、賃料相場が地域全体で下落した場合などには、賃料減額請求が認められる可能性が高いでしょう。
3. 賃料減額請求の手続き
賃料減額請求は、協議・調停・訴訟の手続きを通じて行います。
(1)まずは協議を行う
まずは、賃貸人に対して賃料の減額を提案し、調整のために協議を行いましょう。協議によって合意が得られれば、スムーズに賃料の減額を実現できます。
賃貸人を説得するためには、近隣の土地・建物の取引価格が低下したことや、賃料相場が下落したことにつき、データを基に説明することが効果的です。
なお、仮に協議が不調に終わった場合でも、後に賃料の減額を認める判決が確定すれば、請求時にさかのぼって減額分の賃料(+年1割の利息)の返還を請求できます(借地借家法第32条第3項)。そのため、協議を開始する前に、賃貸人に対して内容証明郵便で請求書を送付しておきましょう。
(2)民事調停を申し立てる
賃料減額請求は調停前置
賃貸人との間で協議による合意が得られない場合、次は民事調停を申し立てましょう。賃料減額請求については「調停前置主義」が採用されており、訴訟を提起する前に調停を申し立てなければならないからです(民事調停法第24条の2)。
民事調停の申立先は、原則として、物件の所在地を管轄する簡易裁判所です。ただし、賃貸借契約などによって賃貸人・賃借人間の合意があれば、合意によって定める地の地方裁判所に調停を申し立てることもできます(同法第24条)。
民事調停では、調停委員が賃貸人・賃借人双方の主張を聴き取ったうえで、和解に向けた調整を行います。最終的に、裁判官が提示する調停案に双方が同意すれば調停成立となり、その内容に従って物件の賃料が減額されます。
(3)訴訟を提起する
民事調停が不成立に終わった場合は、訴訟を提起して賃料の減額を求めましょう。
訴訟では、近隣の物件価格や賃料相場などを証拠(不動産鑑定資料など)に基づき立証し、賃料減額請求の要件がそろっていることを主張します。裁判所は、賃借人の主張に理由があると認めた場合は、賃料減額を決定する判決を言い渡します。
判決に対しては、控訴・上告という2回の異議申し立てが認められています。異議申し立ての手続きを経て判決は確定し、その内容に従って物件の賃料が減額されます。
賃料減額請求権に関する訴訟手続きを適切に進めるためには、法的な専門知識に基づく対応が必要になりますので、事前に弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年01月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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