違法建築物を所有したら。行政指導の有無と建築基準法の基本
建築基準法のルールを遵守せずに建築された建物は「違反建築物(違法建築物件)」に当たり、行政処分や行政指導の対象となる可能性があります。建物を購入する際には、建築基準法のルールに沿って建築されていることを確認しましょう。
今回は違反建築物(違法建築物件)について、建築基準法上のルールとペナルティー、行政処分や行政指導を受けた場合のリスクなどを解説します。
1. 違法建築とは?
「違法建築」とは、建築基準法上のルールに違反して建てられた建築物です。建築基準法上は「違反建築物」と呼ばれています(同法第9条など)。
建築物を建てる際には、建築基準法に基づく「建築確認」と「検査」が行われます(同法第6条、第7条)。本来であれば、工事開始前の建築確認や、竣工後検査の段階で違法建築は排除されます。
しかし、中には建築確認や検査を経ず、勝手に建てられてしまった建築物も存在します。このような建築物の中には、少なからず違法建築が含まれていると考えられます。
なお、建築当時における建築基準法のルールには適合していたものの、その後の法改正によって建築基準法に適合しない状態となった建築物も存在します。このような建築物は「既存不適格」と呼ばれ、違法建築には当たりません。
既存不適格の建築物はそのまま使用できますが、建て替えや増改築の際には建築基準法のルールに適合させる必要があります。
2. 建築基準法とは?
建築基準法は、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低基準を定めた法律です。建築物の倒壊や延焼などのリスクを許容可能な範囲内に抑え、国民の生命・健康・財産を保護することを目的としています。
(1)建築基準法における主な規制
建築基準法上の建築物に関する規制は、「単体規定」と「集団規定」の2つに分類されます。
「単体規定」とは、建築物の安全性や衛生状況などに関して、全国的に適用される規制です。単体規定としては、主に以下の規制が定められています。
- 敷地に関する規制
倒壊防止・排水確保などの観点から、建築物の敷地部分が満たすべき要件が定められています(同法第19条)。 - 構造耐力に関する規制
自然災害などによる建築物の倒壊を防止するため、構造耐力について満たすべき要件が定められています(同法第20条、第21条)。 - 防火・避難に関する規制
火災発生時の延焼拡大防止や避難経路確保などの観点から、防火・避難に関して満たすべき要件が定められています(同法第22条~第27条、第32条~第37条など)。 - その他の一般構造・設備に関する規制
上記のほか、建築物内外における安全・衛生を確保するため、採光・換気・石綿の飛散・便所などに関する規制が設けられています(同法第28条、第28条の2、第31条など)。
「集団規定」とは、計画的な街づくりを推進する目的で、都市計画区域・準都市計画区域のみに適用される規制です。集団規定としては、主に以下の規制が設けられています。
- 接道規制
都市計画区域・準都市計画区域において建築物を建てられるのは、原則として幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接した土地に限られています(同法第43条)。 - 用途規制
計画的に市街地を形成するため、都市計画法に基づき設定された用途地域に応じて、建てられる建築物の種類や規模などが制限されています(同法第48条)。 - 形態規制
隣地建築物との利害調整などを図るため、容積率・建ぺい率・敷地面積・外壁の後退距離・高さ制限などの規制が設けられています(同法第52条~第56条の2など)。
(2)建築基準法違反に対するペナルティー
建築基準法に違反して建てられた建築物は、都道府県知事または市町村長(=特定行政庁)による行政指導の対象です。
行政指導に従わない場合は、当該建築物について除却・移転・改築・増築・模様替・使用禁止・使用制限などの措置が命じられることもあります(=行政処分。建築基準法第9条第1項)。
措置命令に違反することは犯罪であり、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される可能性があります(同法第98条第1項第1号)。
3. 違反建築物を購入してしまうことのリスク
違反建築物を購入してしまうと、特定行政庁による行政指導や行政処分を受けるリスクがあることに加えて、当該建築物の売却は困難になってしまいます。
行政指導や行政処分のリスクがある物件を買いたがる人はほとんどいませんし、金融機関の融資も通らないからです。仮に売れたとしても、非常に安い金額となってしまうでしょう。
違反建築物であることを告げずに売却すると、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償責任を負うほか、詐欺罪(刑法第246条第1項)で刑事罰を科されるリスクもあります。
このような事態を避けるためにも、建物を購入する際には必ず確認済み証・検査済み証などをチェックして、建築基準法に沿って建築されたものであることを確認しましょう。不動産売買について不安な点があれば、弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年03月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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