新築戸建て完成も図面と違う…損害賠償は請求できる?
「一大決心をして注文住宅を新築購入したのに、図面と違う気がする…」と悩んでいませんか。施工ミスが存在した場合は、損害賠償請求ができる可能性があります。
本コラムでは、注文住宅の施工ミスが発覚した場合の対処法や、施工業者が負うべき法的な責任などについて解説します。
1. 施工ミスが発覚したらどうすべき?
注文住宅で図面と実物が違うなどの施工ミスを発見したときの対処法は、発覚したそのタイミングによって変わります。以下では、発覚したタイミングごとの対応策を解説します。
なお、注文建築の場合は、建築工事請負契約になりますが、請負とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約ですから(民法632条)、請負人は、図面どおりの住宅を完成させる義務を負うことになります。
(1)工事中に見つかった場合
工事中に施工ミスや図面との違いを確認した場合は、速やかに建築業者や設計事務所などに問題を指摘することが重要です。工事期間中ならば、多くの場合、比較的簡単に修繕を行えます。
ただし、施工ミスの内容や影響範囲によっては、補修に時間や費用がかかる可能性も想定されます。工期や費用の問題については、あとで行き違いがないようにしっかり確認しておく必要があります。
業者側のミスによって生じた変更なので、その費用負担も業者側が負うべきであることを臆さず主張しましょう。こうした交渉や合意は記録をとって書面に残しておくと、後々問題になったときも重要な証拠資料となります。
(2)引き渡し前に見つかった場合
すでに住宅が完成し、引き渡しを受けるタイミングで施工ミスを発見した場合の選択肢は主に2つあります。
①そのまま引き渡しを受けてから、改めて契約不適合責任を追及する
契約不適合責任とは、問題箇所の修補要求や代金の減額、損害賠償などを求めるものです。詳細については、のちほど詳しく解説します。
②引き渡しを延期し、図面と異なる部分や施工ミスが確認された箇所を修補するように要請する
引き渡しの期間が延びると、仮住まいにかかる家賃などの出費が必要ですが、こうした経済的負担に関してもあとで業者側に損害賠償請求したり、請負代金からの減額を要求したりできます。
(3)引き渡し後に見つかった場合
新居への入居が済んでから施工ミスに気づいた場合は、上記でも触れた契約不適合責任を理由に業者側と交渉します。修繕に伴い、仮住まいや引っ越しの費用が発生する場合がありますが、こうした費用も損害賠償請求の対象です。
基本的には、工事期間中が一番スムーズに問題を解決しやすいタイミングです。これを可能とするために、時間を見つけて図面を持参のうえで建築現場に立ち寄る機会を持つことが望まれます。建築に通じた人物を同伴できれば、なおよいでしょう。そして、施工中に何か疑問や不審な点に気づいた場合は、早めに業者へ確認するようにしましょう。
2. 施工ミスによる損害賠償を請求できるケース
先述のとおり、施工ミスを発見した場合は、業者側への損害賠償請求を検討する必要があります。この場合、業者側の「契約不適合責任」あるいは「不法行為責任」の有無が争点となります。
【契約不適合責任】
契約内容と異なる商品やサービスが提供された際、商品・サービス提供者が負う責任です。たとえば、「図面には3つの窓が描かれていたのに、実際には2つしかなかった」という場合、施工した工務店などがそのミスの責任を負います。
【不法行為責任】
不法行為責任とは、故意や過失によって他者の権利や利益を侵害した者が負うものです。施工業者が不法行為責任を負う状況としては、住宅ひいては住人の安全性が脅かされる施工ミスや手抜き工事をしてしまった場合が考えられます。
(1)損害賠償請求できる費用
施工ミスに対して損害賠償請求できる費用としては、主に以下の内容が挙げられます。
- 施工ミスや図面との違いを修正するための補修費用
- 施工ミスの事実の調査などに要した費用
- 補修工事によって必要となった仮住まいの家賃や引っ越し代
また、施工ミスなどによって負った精神的苦痛が理由として慰謝料が認められることもあります。さらに、万が一施工ミスが原因で死傷事故などが生じた場合は、その治療費や慰謝料の請求も可能です。
(2)損害賠償請求できる期間
損害賠償の請求権には時効がある点に注意が必要です。
契約不適合責任に対して損害賠償請求する権利は、発注者が権利を行使できることを知ってから5年、あるいは権利を行使することができる時から10年経過すると時効が成立して消滅します(民法166条)。なお、発注者は、契約不適合を知った時から1年以内に業者側に通知しなければなりません(民法566条)。
施工ミスが不法行為に該当する場合の時効は、不法行為による損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の発生時点から数えて20年です(民法724条)。契約不適合責任よりも時効が長いので、もしもそちらが時効になってしまった場合でも、不法行為に該当すれば損害賠償請求ができます。
(参考:「民法」(e-Gov法令検索))
3. 損害賠償請求の手続き方法
施工ミスに対して損害請求をする際の施工業者側との協議から訴訟に至るまでのステップを解説します。
(1)協議
最初に行うべきことは、施工業者側との協議です。ここで問題を解決できれば、費用も労力も最小限で済みます。ただし、施工ミスを指摘しても素人意見として取り合ってもらえないケースも考えられるので、事前に建築士へ調査を依頼したり、弁護士へ相談したりするのがおすすめです。
(2)民事調停
当事者間での協議で解決が難しい場合は、裁判所で裁判官や調停委員の仲裁を仰いで、お互いが合意できるラインを探ります。訴訟を起こすよりは手続きも簡単で、費用や手間などの負担も少なく済むのがメリットです。
(3)ADR(裁判外紛争解決手続き)
調停が不成立となった場合、ADRも利用できます。これは建築士や弁護士などから専門的かつ客観的な意見を仰ぎ、お互いの主張の妥当性や納得できる落としどころを探る場です。施工ミスで使えるADRとしては主に以下の機関が挙げられます。
①建設工事紛争審査会
建設工事に関する紛争を解決するための専門機関です。土木・建築や法律の専門家などで構成され、技術的な問題や契約上の問題を公正に評価し、解決を目指します。
②弁護士会の住宅紛争審査会
住宅に関するトラブルを解決するための専門機関です。弁護士や建築士などが専門知識を生かして、紛争の原因や解決策を提案します。
(4)訴訟
ここまで紹介したいずれの方法でも解決が困難な場合、最終的には訴訟を起こすことになります。裁判官を説得できるだけの客観的かつ合理的な主張や証拠提出などが必要となるので、円滑に訴訟を進めるには弁護士のサポートが大切です。
弁護士は訴訟の手続きや証拠提出、主張の組み立て方など、裁判において不可欠なサポートを行います。また、相手方との交渉や、適切な賠償額の算定なども担当してくれるので、訴訟に至るような事態になる前でも早めに相談するようにしましょう。
住宅の購入は人生の一大イベントです。施工ミスに気づいた場合は、弁護士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年01月16日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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