新築住宅の施工ミスによる建て直しはできる? 損害賠償の請求可否は?
新築住宅に施工ミスが見つかった場合、建て直しや損害賠償を請求できるケースもあります。欠陥が見つかった際は、第三者へ相談することも有効な手段のひとつです。
本コラムでは、施工ミスによる欠陥住宅の建て直しや、損害賠償が請求できるケースについて解説します。
1. 新築住宅で施工ミスが起こる理由
施工ミスとは、設計図どおりに施工されず、建物に不具合が生じることです。具体的な例として、建物が傾いていたり、指定されたものと違う材料を使っていたりするケースが挙げられます。また、耐震基準を満たしていないなど、安全性が十分に確保されていないケースも施工ミスに含まれます。
施工ミスが起こる原因はさまざまです。中でも発生しやすいとされている原因は、以下の3つです。
(1)工期が短い
本来、建物の建築工期は余裕を持って設定しなければなりません。しかし、入居を急いだり人件費にコストが割けなかったりすると、工期の設定が短くなるケースがあります。計画に無理が生じると、必要な工程が飛ばされてしまったり、図面の確認作業を怠ったりするなど、ひとつひとつの作業が粗くなるため、施工ミスが生じる可能性は高くなります。
(2)安い材料を使っている
安い材料を使用しても外見では違いが分からないため、品質をあまり重視せずに安価な材料を使う業者も中には存在するかもしれません。施工業者側としては、材料を安く調達できればその分多くの利益が得られます。安価で品質の低い材料の使用により、本来住宅に必要な機能が備わっていない場合、さまざまなトラブルが生じかねません。
住み始めてすぐ見つからなかったとしても、早い段階で劣化が現れる事例もあります。
(3)施工業者の技術および知識不足
現場で働く作業員の技術や知識は、経験の長さなどによって差があります。知識不足で正しい施工手順が守られていなかったり、チェック項目を見落としたりするミスがあると、十分な品質は確保できません。本来ならば、施工ミスが起きないよう、施工業者が二重、三重にチェックする体制を整えておくのが理想的です。
しかし、昨今の人手不足により、十分な人員を確保できないケースは考えられます。品質チェックが不十分になりやすい環境で作業を進めていたとなれば、施工ミスはおのずと起こりやすくなります。
2. 新築住宅の施工ミスによる建て直しは求められる?
新築住宅で施工ミスが見つかった際、施工業者側が費用を負担し、該当箇所を補修するケースが一般的です。中には、一から建て直すこともあります。建て直しが認められるケースとして、引き渡し前に施工ミスが発覚した場合、安全性において著しい不安がある場合などが挙げられます。
(1)工事中に施工ミスが発覚した場合
まだ建物が工事中の段階にあり、引き渡しが行われる前に施工ミスが発覚した場合には、建て直しに対応してもらえる可能性が高くなります。建て直しのために工期が延びたとしても、発注者側が追加費用の負担を心配する必要はありません。あとでトラブルにならないよう、あらかじめ施工業者の負担により工事を行うことに合意しておきましょう。
(2)著しい安全上・法令上の欠陥が見つかった場合
鉄骨や柱のずれや建物が傾いているほか、コンクリートのひび割れ、耐震、耐火の性能が基準を満たしていないなど、安全性が著しく懸念される場合は、建て直しに応じてもらえるケースが多いようです。本来、建物を建築する際は、地震や火災に対する安全性に十分配慮しなければなりません。
実際に、横浜市のマンションでは、基礎くいの長さが足りず、強固な地盤の「支持層」まで達していなかったためにマンションが傾くトラブルが発生し、建て替えられることになりました。
(参考:「住友不動産も全棟建て替え検討 マンション施工ミスの底なし沼」(週刊ダイヤモンド))
また、民法第234条では「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と隣家との距離が定められています。そのため、施工業者のミスにより、法で定められた基準より近い距離に家を建ててしまった場合には、建て替えに応じてもらえる可能性は高くなります。
(参考:「民法」第234条(e-Gov法令検索))
3. 新築住宅の施工ミスにより求められる損害賠償は?
(1)責任を追及できる相手
新築住宅で施工ミスが発覚した場合、責任を負うのは施工業者です。そのため施主は、工事の過失に対して責任のある施工業者に損害賠償を請求できます。場合によっては、監理者の建築士に対して責任を追及できるケースもあります。これは建築士法第2条において、建築士が、設計図どおりに施工が行われているかどうか適切に監理する責任を負うと定められていることに基づくものです。
追及できる責任の内容は、引き渡されたものの品質や数量などが契約内容に適合していない「契約不適合責任」、故意や過失によって被害者に対して違法に損害を与えた際に成立する「不法行為責任」が該当します。
(参考:「建築士法」第2条(e-Gov法令検索))
(2)請求できる損害賠償の内容
施工ミスにより請求できる損害賠償としては、以下のものが挙げられます。
- 引っ越しの遅延に対する損害金
- 完成するまでの仮住まいで発生する宿泊費用
- 欠陥部分の補修費用
- 転居を余儀なくされた場合の転居費用
- 欠陥住宅により施主が負傷、あるいは精神的損害を受けた場合の損害賠償
こうした損害賠償は、和解交渉や民事調停、訴訟などの方法により請求することが可能です。
(3)施工ミスが見つかった場合の相談先
施工ミスが見つかったときの主な相談先は以下のとおりです。
①国民生活センター
独立行政法人国民生活センターには、消費者被害の相談を無料で行う「消費者ホットライン」が設けられており、対処方法に関するアドバイスが受けられます。
②住宅紛争審議会
住宅に関係するトラブルを解決するための機関です。全国の弁護士会に設けられています。住宅の検査・保証をセットにした瑕疵(かし)保険が付された住宅について、あっせん・調停・仲裁などの裁判外の紛争処理手続きを行ってくれます。
③建設工事紛争審査会
建設工事請負契約の紛争解決を行う準司法的機関です。国土交通省および各都道府県に設置されています。法律、建築、土木などの専門知識を用い、あっせん・調停・仲裁などの方法で紛争解決を図ります。
④弁護士
施工業者との交渉や損害賠償請求、民事調停手続きのほか、訴訟に至った場合も手厚くサポートしてくれる法律の専門家です。
施工ミスによる損害賠償請求が必要になったときは、施工業者に対して内容証明郵便を送付するほか、交渉・調停などさまざまな手続きが必要となり、法律の知識も求められます。その際は、法律に詳しい弁護士のサポートがあると安心です。
- こちらに掲載されている情報は、2024年02月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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