ジャマな無断駐車の撃退法とは? 法的な対抗策や注意点を解説

ジャマな無断駐車の撃退法とは? 法的な対抗策や注意点を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

自分の私有地に無断駐車されるのは、とても迷惑で腹立たしいことです。とはいえ、感情に任せて自力で撃退しようとすると、かえって自分が訴えられてしまうおそれもあるので注意が必要です。

本コラムでは、無断駐車を撃退する合法的な対策や注意点などについて解説します。無断駐車への対応にお悩みの方はぜひご参考にしてください。

1. 無断駐車車両の法律上の扱い

私有地への無断駐車は一見、明確な違法行為に思えますが、実はその法律上の扱いは非常に微妙な部分があります。

(1)私有地の無断駐車は民法上の不法行為に当たる

一般的に私有地への無断駐車は、民事上の問題として扱われます。したがって、警察に通報して加害者の取り締まりなどをお願いしても、民事不介入の原則によって積極的な対応を期待するのは難しいのが実情です。

公道での違法駐車なら道路交通法違反に問える可能性がありますが。私有地ではそれもできません。そのため、私有地へ無断駐車されても、法的に強制力のある措置をただちに取ることは難しい部分があります。

(2)刑法に抵触する可能性があるケース

上記のように、私有地への無断駐車は基本的に民事上の問題として扱われますが、場合によっては警察の介入が必要となるような刑法上の犯罪行為に当たる場合もあります。

たとえば、無断駐車している車両が邪魔で仕事用の車などが出庫できず、業務に支障や損失が生じた場合などです。この場合は、刑法第234条に定められている「威力業務妨害罪」に該当する可能性があります。

また、無断駐車された私有地が住宅を囲む塀の中などにある場合は、刑法第130条「住居侵入罪」で告訴することが可能です。住居侵入罪といえば、家の中(屋内)への不法侵入を想定しがちですが、過去の判例の中には、建物と一体となって塀で囲まれた敷地も「建物の一部」と見なしたものがあります。

出典:裁判所「最判昭和51年3月4日

ただし、住宅と一緒に堀で囲まれたような駐車場に無断駐車されるのは、基本的にあまり想定しにくいケースです。私有地への無断駐車といえば、公道に対して開けた駐車場や、目の届きにくい、自宅から一定の距離がある駐車場でされるのが多いのではないでしょうか。このような多数派のケースでは、残念ながら住居侵入罪は成立しないと考えられます。

したがって、無断駐車が刑事事件として扱われるケースはゼロではないものの、先述のように民事で扱われるのが一般的です。

2. 無断駐車への対策・対処法

警察の積極的な介入が期待できないとなると、無断駐車に対してどのように対処すればいいのでしょうか。ここでは、無断駐車の予防策および、無断駐車をされてしまった場合の事後対応について解説します。

(1)予防策:無断駐車禁止の表示

最も基本的な対策は、私有地に「無断駐車禁止」と書かれた看板や貼り紙を設置することです。とても単純な方法に思えますが、これがあるだけでも相手に与える心理的プレッシャーは段違いになります。もっと踏み込んで、「無断駐車は発見次第、弁護士に連絡して法的な措置をとります」などと記載することで、さらに抑止効果を高めることも可能です。また、カラーコーンなどを設置して物理的に駐車しにくくしたり、防犯カメラを設置したりすることも、有効な予防策となります。

(2)事後策1:写真撮影などによる証拠の確保

ここからは、無断駐車がすでに発生した場合の対応策です。まずは、問題の車両が無断駐車している様子を、車両ナンバーがわかるような形で撮影しましょう。いつからいつまで無断駐車されたのか、日時もわかるようにしておくのが理想です。このような証拠資料の確保は、後でその車両の持ち主に苦情を言ったり、損害賠償請求などの法的措置を講じたりする際に非常に役立ちます。

(3)事後策2:警告文の掲示

写真撮影と並行して行いたいのが、問題車両に対して無断駐車をしないように呼びかける警告文を設置することです。ただし、その際には、車両を傷つけないように注意しましょう。ガムテープや接着剤などを用いて車体に警告文を貼り付けると、剥がす際に塗装が傷ついたり、跡が残ったりする可能性があります。そうなった場合、今度は逆に自分が車両の所有車から器物損壊罪で告訴されることにもなりかねません。車体を傷つけずに警告文を設置する方法としては、ワイバーに挟み込むなどの手段があります。

(4)悪質なケースへの対処法

警告文を提示しても繰り返し無断駐車を行うなど悪質な場合には、以下の手順を経て法的措置を講じることも検討しましょう。

手順1:車両の所有車を特定する

まずは証拠写真に写ったナンバーを手掛かりにして、車両の所有車を特定します。車両ナンバーから所有者を確認するのは、自動車検査登録事務所もしくは陸運局に「登録事項等証明書」という書類を請求することで可能です。

これを請求する際には正当な事由が必要なので、無断駐車に悩まされていることやその期間などを請求書に記載し、証拠写真も提出します。また、本人確認資料や手数料分の収入印紙も必要です。

手順2:警告文を送付する

上記の手続きを経て車両の所有車を特定できたら、内容証明郵便を用いて、これ以上無断駐車をしたら法的措置を検討する旨を記した警告文を送付しましょう。住所まで特定されて警告文を送付されたとあっては、相手もこれ以上の無断駐車は諦めることが期待できます。

手順3:損害賠償請求や民事訴訟を行う

警告文を送付しても相手が頑迷に応じない場合は、損害賠償請求も視野に入れましょう。損害賠償請求は当事者同士でも行えますが、相手が交渉に応じなさそうな場合は民事訴訟に持ち込むのも手です。悪質な無断駐車に対しては、妨害排除請求と損害賠償請求が可能です。

(5)法的措置を講じる際は弁護士に相談するのがおすすめ

上記のように法的措置も視野に入れて対処するならば、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、陸運局で手続きして車両の所有車を特定するのも容易ですし、警告文の送付や損害賠償請求などの代行も可能です。もちろん、民事訴訟に発展した際も、弁護士の支援を受ければ勝訴の可能性は大きく高まります。

訴訟や損害賠償請求までいかずとも、二度と無断駐車をしないように代理交渉してもらうのも検討の価値があります。当事者同士の交渉では、さらなるトラブルに発展するおそれもあるので、弁護士を代理人に立てることは非常に有効です。

3. 無断駐車への対応を巡る注意点

「警告文を車体にテープなどで貼り付けると器物損壊で訴えられるおそれがある」と先述しましたが、類似のリスクは他にもあるので注意が必要です。無断駐車に対処する際、直接的な方法で車両をどうにかしようとしたり、車両の所有者に対して乱暴な手段に訴えようとしたりすると、かえって自分が法律上の加害者になるおそれがあります。

具体的に挙げると、無断駐車された車をレッカー車によって無断で移動させたり、タイヤロックや穴などによって車が動けないようにしたりするのは危険です。また、車両の所有者と遭遇した際、感情的になって相手やその車両に危害を加えるような発言をしてしまうと「脅迫罪」になるおそれがあります。

胸ぐらをつかんだり、殴る蹴るなどの行為をしたりすると、「暴行罪」もしくは「傷害罪」に問われかねません。揉め事になれば、自分自身が怪我をするリスクもあります。

いずれにしても、無断駐車に対して直接的に自力救済を図るのは避けるべきです。無断駐車に悩まされている場合は、弁護士などに相談し、合法的な手段で冷静に解決を図りましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年06月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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