「四谷大塚」元講師“懲役2年、執行猶予5年”に「軽すぎ」批判殺到も…弁護士が「厳しい判決」と評価する理由
大手中学受験塾「四谷大塚」の元講師で、教え子の女子児童12人の下着を盗撮した罪などに問われた森崇翔被告(25)に26日、東京地裁で懲役2年、保護観察付きの執行猶予5年の判決が言い渡された。
同被告は都内の校舎で盗撮を繰り返し、小児性愛者のグループチャットへ盗撮した画像や児童らの個人情報を送っていたという。その卑劣な犯罪行為から、判決についてSNSやネットには「罪が軽すぎる」「執行猶予が付くなんて」といった驚きのコメントが並んでいるが、刑事事件に詳しい杉山大介弁護士は今回の判決を「すごく重いですね」と受け止める。
過去の事例を踏まえても厳しい判決
「まず、本件は強制わいせつ(現行法:不同意わいせつ)ではなく『盗撮』の事件であると踏まえる必要があります。
盗撮については、昨年7月の法改正で『性的姿態撮影処罰法違反罪』が新設されましたが、それでも法定刑は3年以下です。
本件と同様に懲役2年の判決が出た事例としては、複数人の子どもにキスなどのわいせつ行為をした強制わいせつ事案(法定刑:6か月以上10年以下)がありますが、これを踏まえても、今回の判決は法定刑3年以下の犯罪で出てくるものとしてはかなり重く評価されています」(杉山弁護士)
これ以上厳しい判決を出す手段はない
さらに杉山弁護士は「執行猶予5年、保護観察付き」という部分についても以下のように評価する。
「懲役2年であれば、通常は執行猶予も3年か4年です。今回はそれを上回る5年という期間に加えて、保護観察も付いていますので、執行猶予期間についても通常より厳しい判決を出したと言えます」
被害者やその保護者のことを思えば「軽すぎる」との印象を受けることは自然かもしれないが、今回の判決はいわば「法律上の限界値」を追及した厳しい判断だったということだ。
「もしこれを『軽い』と感じるようであれば、そもそも法定刑の設定自体が間違っていたことになります。
また『保護観察付き』の一番厳しいポイントは、執行猶予期間中に再犯を行った場合、再度の執行猶予がなくなることです。再犯のおそれが拭えないから、保護観察付きの判決にしたと見るべきですね。
そもそも執行猶予をどの程度活用すべきかについては、私なりにも意見があり、個人的には短い刑でも実質的な内省が見えなければ実刑をどんどん出すべきだと思いますし、法定刑の長短というカテゴリだけで執行猶予の可能性を排除すべきでもないと考えています。
しかし、それは司法制度全体について論じるべきことであって、この事案に関して言えば、これ以上厳しい判決を出す手段はないですし、控訴すれば絶対にひっくり返るような判決を出してもしょうがない、ということになります」(杉山弁護士)
今回の判決について「軽すぎる」との受け止めが多かったことから、現行の法律になんらかの見直しが必要なのかについても、改めて考えることが求められてくるのかもしれない。
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