京都大学が「女性枠」を新設へ…各地で広がる女性募集枠の導入、性別で入試を分ける理由とは
京都大学(京大)が、2026年度入試から一部の学部で「女性枠」を導入すると発表した。
京大には一般・特色入試、留学生向け入試等があるが、それらの入試に新しい募集枠を新設することになったのだ。多様性が叫ばれる時代の中で、私たちはこの取り組みをどのように受け止めたらいいのだろうか。
京大「多様性の十分な確保が極めて重要」、各地で広がる「女子枠」導入
京大が新設するのは、女性15人が募集定員の理学部特色入試と、女性24人が定員の工学部学校推薦入試。理学部では15人のうち10人は物理学と数学、5人は宇宙と地球惑星科学入試となる。工学部は電気電子工学科が7人、地球工学科と物理工学科、理工科学科が5人、情報学科が2人。一般枠等との併願はできない。女性枠の新設にあたり、京大は教育理念を踏まえたうえで「キャンパス構成員の多様性を十分に確保することが極めて重要」だとし、京大には「学生中の女性比率が著しく低い学部があり、そのインバランスを早急に解消しなければならない。多様な視点を取り入れることは望ましい教育環境の構築のため不可欠」と女性枠の意義を強調している。
女性を対象とした入試はじわじわと広がりつつある。名古屋大学は23年度入試から工学部エネルギー理工学科等に女子枠を設け、東京都市大学や東京理科大学、大阪工業大学等も24年度入試から女子枠を導入。25年度から新たに女子枠の導入を検討している大学もあると聞く。
「入学を希望されることを心より期待」
京都大学渉外部広報課の担当者は本稿記者の取材に対し、「本学で学ぶ環境として女性の学生比率が極端に低いことにより、女性の学生も十分に学ぶ場を生かしきれない 。また男性の学生もジェンダー・インバランスに関して、社会とかけ離れた環境で学生生活を過ごすことになる。そのため、教育環境として望ましくない状況であると判断した」と女性学生の割合が低いことを解消する理由について回答した。
次に聞いたのは性別で学生を選ぶのはなぜか。いわゆる「逆差別」といわれている問題だ。入試は学力や能力、成績等で評価されることで合否を決めるものであり、性別で学生を選ぶのはいかがなものかとの考え方もあるだろう。
これらの問いに対し京大側は「入学者選抜には多様な入試方法があり、いずれの選抜も入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価・判定することになっている。今回の女性募集枠は、特色入試(総合型・学校推薦型)での選抜であり、一般選抜とは異なる選抜方法を用いており、一般選抜では測りにくい多様な能力や志も含めて総合的に評価する」とだけ答えた。
取材の最後には「本学では女性募集枠の新設を始め、今後も国内外の志願者のうちから多様な学生を広く受け入れるよう努める。本学において意欲と主体性をもって勉学に励むことのできる皆さんが積極的に入学を希望されることを心より期待している」とコメントした。
高いレベルの学力等を維持することも必要
冒頭で触れた「多様性」という言い回し。昨今、さまざまな機会に使用することが多くなっていると感じる。京大も「多様性」との言葉を用い、教育機関として定員の性差をできるだけ少なくしたいと考えているようだ。
ただ、京大は女子大ではなく男女共学だ。筆者は「女子枠」を設けるのではなく、入試は学力等で判定されるものだと考える。性別によって「特色入試」の一部の受験機会が奪われるのは避けなければならないだろう。22年に発覚した東京医科大学等医学部での女性差別入試事件では、性別や年齢等による「差別入試」が横行していた。発覚後の対策では、名前や性別等を伏せて採点するなどした。
多様な人材を選ぶのと同時に、大学として高いレベルの学力等を維持することも必要だ。「多様性」を前面に出すのは分かるが、京大は教育機関であり、純粋な学力等で学生を選ぶべきではないだろうか。「女子枠」の再考を強く求め、本稿を締めることにしたい。
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