神戸大非公認サークル“旅館破壊”騒動「#退学処分」トレンド入りも弁護士「容易ではない」指摘のワケ
関西で京都大学、大阪大学に次ぐ国立難関大学として知られる「神戸大学」の非公認バドミントンサークル「BAD BOYS」のメンバーらが、合宿を行っていた旅館で障子を破る、天井に穴をあけるなどの迷惑行為をしていたとしてインターネットを中心に騒動となった。
3月10日から16日にかけて春合宿を行っていた「BAD BOYS」。メンバーらによって迷惑行為の様子などがSNSに投稿され、それが流出する形で物議をかもした。神戸大学は3月19日にホームページ上に謝罪文を掲載し、同月25日には会見を開いて改めて謝罪した。大学は今後の対応について「合宿に参加した学生への聴き取りを早急に終了させ、大学としての調査結果をまとめた後、厳重、厳正なる対処を行います」としている。
インターネット上では、騒動に関与した学生らに対し「退学にすべき」といった意見が多くみられ、X上では「#退学処分」もトレンド入りした。
しかし、神戸大学法科大学院を卒業した早矢仕麻友弁護士は「大学側が退学処分を下すことは容易ではない」といい、その理由について以下のように語る。
退学処分「容易ではない」ワケ
「懲戒処分の対象行為は、それぞれの大学の規定によります。神戸大学においては、『神戸大学学生懲戒規則』という規定がありますから、まずは本件の行為がこれらに該当するかどうかにより懲戒処分の対象か決まります。
つぎに、仮に懲戒規則に該当するとして、『退学処分』にするかは大学側の裁量によって決定されます。神戸大学の懲戒規則に、たとえば『刑事告訴された場合には退学処分になる』などの明確な基準はありません。
学校教育法施行規則26条3項には、退学処分にできる“事例”の記載があり、①性行不良で改善の見込がないと認められる者、②学力劣等で成業の見込がないと認められる者、③正当の理由がなくて出席常でない者、④学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者と記載されています。
これらを勘案して、懲戒処分をすべき行為なのか、仮にそうだとして『退学処分』にまですべきなのかという点は、事実経緯も踏まえて慎重に判断するべきことになります。懲戒としてもっとも重い『退学処分』を下すことは、大学にとっても容易ではないといえるでしょう」
ちなみに、神戸大学学生懲戒規則によれば、問題を起こした学生であっても〈口頭又は文書による弁明の機会を与えなければならない〉とあるほか、懲戒処分を受けた場合でも〈事実誤認,新事実の発見その他の正当な理由があるときは、(中略)異議申立てを行うことができる〉とある。
処分を受けた学生から後になって「不当な懲戒処分」と言われないためにも、慎重かつ丁寧な聴き取りなどの調査が必須となるだろう。
「再発防止のため」の処分検討を
「学生らが行った行為は周囲、特に旅館に対して迷惑をかける行為であることは明らかです。ただ一方で、学生らがなぜこうした行為を引き起こしてしまったのかなど、ニュースなどの一部の情報からだけではわからない部分もあります」
早矢仕弁護士は懲戒処分の決定に関する難しさについて続ける。
「懲戒処分については、学校教育法11条では、『校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる』と規定されていますが、この『教育上の必要性があるか』という個別的な判断は、やはりきちんと調査をした上でなければできません。
神戸大学にはしっかりと事実調査を行い、再発防止のためにも学生らへの処分の要否、そしてその程度について検討していただきたいと思います」(早矢仕弁護士)
神戸大学が過去に学生を処分したケース
なお神戸大学では過去にも、学生が起こした事件に処分を下した事例がある。
・ 学生がホームレスの男性に生卵を投げつける動画(調査の結果ホームレス男性ではなく「自演自作」だった)をSNSに投稿し炎上した事件
→学部長による厳重注意(2009年)
・ 学生が大阪市のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」内で迷惑行為(大型ボートのアトラクション乗車時に安全バーをゆるめて身を乗り出す、裸になって立ち上がる。2人乗りのボートをわざと傾けて転覆させる。実際はサッカーで負ったけがをアトラクションの柱に当たって骨折したとSNSに虚偽の書き込みをするなど)を大学入学前含む3年間で複数回繰り返した事件
→停学3か月(2013年)
報道によれば、「BAD BOYS」のメンバーらは旅館側と弁償に向けた話し合いを進めているというが、学校側は彼らにどのような判断を下すのだろうか。
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