裏金議員と森元首相を市民らが刑事告発 パー券キックバック「私的流用は“違法”」
政治資金パーティーで得られた収入からキックバックされた“裏金”の私的な流用は個人献金を受けたことにあたるとして、市民団体の5人が4月10日、森喜朗元首相と自民党の清和政策研究会(安倍派)に所属する国会議員7人の計8人を政治資金規正法違反などで東京地方検察庁特別捜査部直告係に刑事告発し、同日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
告発したのは市民団体「検察庁法改正に反対する会」共同代表の岩田薫さんら5人。会見には岩田さんと、同じく同会共同代表の早川芳夫さん、同会顧問でジャーナリストの浅野健一さん、告発人代理人の山下幸夫弁護士が臨んだ。
裏金「政治資金として使った実態がない」
告発状によると、被告発人は森喜朗元衆院議員(元首相)、塩谷立衆院議員(元文科相)、世耕弘成参院議員、萩生田光一衆院議員、松野博一衆院議員(前官房長官)、西村康稔衆院議員(前経産相)、下村博文衆院議員(元文科相)、高木毅衆院議員の8人。
告発人らは「被告発人らは、森元首相と共謀の上、清和政策研究会主催のパーティー収入から、令和4年度に還流した金について、政治団体への寄付という形をとらずに、自身の事務所の机やロッカーに保管し、個人的な飲食などの経費に充当した」などとして、森氏をのぞく7人について、いずれも「政治資金として使った実態がない」と指摘。
還流金を私的に流用した行為は、政治活動を行う個人の「量的制限等に違反する寄付の受領の禁止」を定めた政治資金規正法第22条の2などに「違反することは明らかである」と主張した。
森元首相は「隠然たる影響力行使した」
さらに山下幸夫弁護士は、今回の告発のポイントとして、「(各議員の)個人献金を問題にするだけでなく、森元首相の共謀共同正犯としての責任も問う」と説明。
裏金問題がクローズアップされたことを機に清和政策研究会は「パーティー収入を還流させていた仕組み」を、令和5年度から一時取りやめにする方針を示していた。しかし、森氏は、”安倍派5人衆”と呼ばれる松野、西村、萩生田、高木各衆院議員、世耕参院議員と打ち合わせを行った際、還流を復活させる旨の取り決めを行ったとされる。
山下弁護士は、こうした森氏の行為は、政治資金規正法違反に関わる各行為を容認・奨励するものであり、「(安倍派元重鎮としての)隠然たる影響力を行使する立場でその謀議に直接関与したものであり、共謀共同正犯が成立する」と訴えた。
「“秘密の金”使いたかったのでは」
告発人の岩田さんは、被告発人が提出した収支報告書のコピーを示した上で、「清和政策研究会から(還流金が)入った年月日が『不明』と記載されている。こういう収支報告書はあるのか。確定申告でこういうものを出せば税務署は受け取らないと思う」と語った。
また、「彼ら(被告発人)は個人ではなく‟政治団体”への寄付だから違法ではないと主張するだろうが、還流金の受取日を『不明』としていることからも個人へのキックバックであったことは間違いない」と言葉を強めた。
同告発人の早川さんは、「政治資金として堂々と使えば問題はないが、公表しない金をプールした。“秘密の金”を使いたかったのだろう。(収支報告書で)あえて報告しなかった理由が裏金の本質だ」と市民の“怒り”を代弁した。
「政治資金に対する国民の信頼裏切る」
山下弁護士は会見の中で、「(今回の告発を)検察庁は立件する勇気はないと思う」と述べ、その先の検察審査会(※)を目標にしていることを明かした。
(※選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が、検察官が事件を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)のよしあしを審査する)
「検察審査会での不起訴不当、起訴相当の判断を期待している」(山下弁護士)
年度末に個人事業主らが行う確定申告では、収入等を細かく税務署に申告することが求められる。国会議員はそれが“免除”されるのか。告発状の最後はこう締めくくられている。
「被告発人らによる告発事実記載の各所為は、政治資金に対する国民の信頼を裏切るものであり、極めて重大である」
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