若年層の「スマホ副業」詐欺被害が急増 「自分はだまされない」が一番狙われるワケ

弁護士JP編集部

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若年層の「スマホ副業」詐欺被害が急増  「自分はだまされない」が一番狙われるワケ
LINEメッセージ上で副業に勧誘…(消費者庁の注意喚起より)

「スマホひとつで1日数万円を稼げる」。

将来に対する経済的不安などから、ネットで目にする副業ビジネスの文言に惹かれる人も多いかもしれない。

実際に資産形成に役立つ副業ビジネスも存在しているが、一方で、いわゆる「副業詐欺」トラブルも多く報告されている。

4月13日には、簡単な作業をするだけで「誰でも1日当たり数万円を稼ぐことができる」といった勧誘で「副業」の「マニュアル」を消費者に購入させていた事業者が、消費者庁に摘発された。

こうしたマニュアル等を売りつける「情報商材」型の副業詐欺の摘発は初めてではない。消費者庁の調査によれば、相談件数は減少傾向にあるが、若年層からの相談は増加している。

  • 「株取引でもうかる」という情報商材を20万円でカード決済したが、高額で支払えないので解約したい(10歳代 男性)
  • アフィリエイトの情報商材を購入して指示通りに作業したがもうからず、事業者と連絡が取れなくなった(20歳代 女性)

など国民生活センターのホームページ上には若者からの相談事例が公開されている。

ワンチャンあるかも…詐欺被害に遭いやすい人3つの傾向

若者の詐欺被害が増えていることについて、立正大学の西田公昭教授(社会心理学)は国が投資を推奨する現状にも原因の一端があるのではないかと指摘する。

「日本経済は不確実性が高く、給与も低いため多くの若者たちは将来に不安を持っています。その中で、財務省や金融庁、つまり国が投資を推奨するようになっています。いきなり資産形成のために投資をしろと言われても、若者は教わったこともなくて戸惑ってしまう。そういうところに詐欺師から『チャンスだ』と言葉巧みに声がかかる。若者が‟ワンチャン”あるかなと思ってしまうのは仕方のないことだと思います」(西田教授)。

弁護士JPの取材に答える西田公昭教授

詐欺被害に遭いやすい人の性格などに傾向はあるのか。西田教授は過去の研究結果などから以下の3点を挙げた。

  • 自分の欲求(欲しい買いたい得たいなど)を制御するのが苦手な人
  • 誰でも信じやすい人
  • 説得力のある言葉のロジックに乗せられてしまう人

しかし、詐欺は加害者の巧みな仕掛け(タイミングや話の持ちかけ方など)によって成り立つことが多く、「結局は『私は大丈夫』と自分を過信してだまされないと思い込んでいる人が一番危ない」と西田教授は警鐘を鳴らす。

「『自分もだまされるかも』と思っている人は、甘い話などを持ちかけられたら警戒する。でも『自分はだまされない』と勘違いしている人は、抵抗感がなく不意打ちでやられてしまうんです」(西田教授)。

被害に遭いやすい‟世代”

また、西田教授は被害に遭いやすい世代について「今までは20歳前後が多かったが、被害者の年齢層が18歳前後に広がっていく」ことも指摘。今年4月1日に施行された「成人年齢の引き下げ」によって、被害に遭いやすい年齢も下がることに注意が必要だ。

今も昔も、成人になり「未成年者取消権」(※)が使えなくなる頃が狙われやすいことには変わりない。

(※)未成年が保護者の同意を得ずに契約した場合、後から取り消すことができると定められている民法。

だまされないために「6つの視点」

西田教授が座長を務め、消費者庁が主導で行った「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の報告書によると、詐欺被害に遭わないためには、自分自身の性格面の弱みと、自身の持つ悩みや不安を自覚しておくことが重要だという。

その上で、購入・契約時には6つの視点に基づいて警戒すると合理的だ。

(消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会 報告書」より)

副業詐欺では参加金・登録料・会費など「利益を出すために」と言葉巧みに出資を要求してくるケースが多い。そのため、上記の図から特に「②勧誘者は信頼できるのか」「⑤勧誘者から購入・契約することを強制されて、判断に影響を受けていないか」に注意を払いたい。

被害を最小限で抑えるために

消費者庁は副業詐欺について「簡単な作業を短時間するだけで誰でも1日数万円を稼ぐことができる、ということはまずあり得ません」と断言、あわせて被害に遭った場合の連絡先として、最寄りの消費生活センターにつながる電話番号「188(いやや!)」を紹介している。

(NACS「自立する消費者のススメ」より)

消費生活センターへの相談により情報が集まり、事業者の摘発につながることもある。また実際に、前述した副業の「マニュアル」代金を取り戻した人や、代金を支払わずに済んだケースもあるという。‟私はだまされない”と思っている人でも、「188」を知っておいて損はないだろう。

西田教授が取材の最後に語った言葉が印象的だった。

「誰でもだまされる可能性があるから気を付けようと、こうやって取材などで口酸っぱく言っていますが、それでも『自分はだまされない』と思って聞き流す人がいるんです。だから詐欺はなくならないんですよね」(西田教授)

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