三重県が公共工事発注時ミスの不可解対応で逸失利益1950万円支払い…「税金の使途として考えられない」と弁護士が指摘するワケ
三重県が用水路工事の発注で、積算(あらかじめ工事に必要な費用を予測して工事費を積み上げて算出すること)でミスをし、本来落札するはずだった業者に対し、逸失利益で争い、最終的に2024年1月、和解金として約1950万円を支払った。ミスは入札参加者からすぐに指摘され、誤りも判明したが県は契約解除せず、契約を継続していた。
約2000万円がムダに使われたと指摘されてもおかしくない事案だ。ことの経緯は次の通り。
指摘を受け誤りが判明したが契約は解除されず
四日市農林事務所が用水路工事を発注。2020年に入札により業者選定が行われた。
一旦は落札者が決まったが、別の入札参加者から積算の誤りについて指摘が入り精査。誤りは確認されず、翌日に落札が決定。一週間後に落札業者Aと契約を締結した。
その2日後に再度、入札参加者から具体的な積算の誤りを指摘され、今度は誤りが判明する。
この間、10日ほど。県は誤りを確認したものの、当初の落札者Aとの契約を解除せず、本来の落札者Bと契約することもなかった。県は契約継続の理由を「再度の契約⼿続きを⾏った場合には、来季の営農に⽀障が⽣じること等を勘案した」とした。
ミスがなければ受注していた業者が訴訟提起
正しく積算が行われていれば落札できていた業者Bにとっては死活問題といえ、「ハイ、わかりました」で済ませられるわけがない。Bは県の対応を「不適切な行為」とし、県に正式に苦情を申し立て、逸失利益として約3430万円を求めての訴訟も提起した。
結局、賠償額でもめながらも2024年1月に、県が逸失利益1950万円を支払うことで和解。約3年半もの時間と和解金を浪費しただけといえる、なんともお粗末な県の対応だ。
「考えられない対応」と弁護士
「私ならこのような対応をすることは考えられないです。私であれば過去に同種の事案がないかを調査したり、県に過去に同種の事案がなかったとしても顧問弁護士等に相談したり、早急に対策(契約解除)を講じます」
こう力を込めたのは、行政問題に詳しい河合淳志弁護士だ。河合弁護士が指摘するように、類似の事案では、異例ながらも公共工事入札で業者の評価を誤り、市に対し約5000万円の賠償命令がだされた判例もあり、より慎重な対応が求められる場面だった。
税金の使途踏まえ、慎重な対応が求められる
ではどのように対処するのがよかったのか。河合弁護士が解説する。
「私が県側の代理人や顧問弁護士の立場であれば、早急にミスを認めて落札者等に謝罪し、契約解除をします。工事が進んでいなければ経済的な損害はなく、県が損害賠償金を支払う必要がなくなるからです。損害賠償金の原資は税金になりますので、使途については慎重になるべきですし、無駄遣いとならないように公務員としては業務遂行に細心の注意を払うべきですね」
ミスはすぐに指摘されていたにもかかわらず、一度は見逃され、ミス発覚後は営農への影響を理由に本来は落札権がなかったはずの事業者と契約を継続。全てが後手で空回り感の強い対応は不可解でしかない…。
なお、県は再発防止策として「積算担当者及び設計審査者に対して、積算誤りの事例の共有や積算におけるチェックポイント等の研修を⾏っています。また、設計書チェックシートの充実や複数⼈による設計審査をより⼀層徹底し、再発防⽌を図ります」としている。
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
関連ニュース
-
DV男から逃げた19歳女性、“所持金数百円”で「生活保護」申請も… 社会復帰への「一歩」を踏み出すまでに味わった「困難」とは【行政書士解説】
2024年12月15日 08:58
-
「生活保護の受給要件をみたしているのに…」相談者の7割近くが申請断念 行政の“水際作戦”「実態と背景」とは【行政書士解説】
2024年12月08日 09:28
-
「知的障害のある人」の選挙権サポートを実現した“狛江モデル”とは 「選挙情報のバリアフリー化」が重要な理由
2024年12月03日 10:08