日本人女性「売春疑われた…」アメリカへの“入国拒否”相次ぐ このまま増えれば「ESTA利用国」除外の可能性も?
ここ数年、アメリカへ旅行に訪れた日本人女性が、売春目的での渡航を疑われ、入国拒否される事例が増えている。
アメリカの国土安全保障省も、この事態について日本の警察庁へ情報提供しているといい、4月上旬には海外の売春組織に女性を紹介したとして、日本人の男らが逮捕された。
アメリカの入管法に詳しいタイタノ誠弁護士によれば、売春疑いでの入国拒否で相談がもっとも多い州は「圧倒的にハワイ」だという。
“疑われやすい人”の特徴とは
報道などでは「女性1人の場合に入国拒否されやすい」「キャバクラ勤務と答えただけで拒否された」といった話も聞く。タイタノ弁護士は“疑われやすい人”の特徴として「派手な身なりをしている人」「滞在中の予定を具体的に答えられない人」「1人で渡航している人」の3点をあげる。
「売春=華美な服装とのイメージを抱いている人も多いので、あまり派手な格好はしないほうが安心かと思います。また売春に限らず、そもそもESTA(※)で入国した人はアメリカで就労できません。何かしら“出稼ぎ”に来ているという疑いを持たれれば、それだけで入国拒否の事由となり得るため、注意が必要です」
※ ビザ免除プログラム(VWP) を利用して渡米する旅行者の適格性を判断する電子システム(在日米国大使館と領事館サイトより)
もしアメリカに到着後、入国拒否された場合、別室に移動して携帯電話などの所持品をあらためられることになる。LINE等の履歴から疑わしいやりとりが見つかった場合は質疑を受け、そこで話した内容はすべて書面で記録。最後は内容に同意するサインを求められるという。
「携帯電話の履歴に『アメリカで働きたい・住みたい』といった内容があったり、他に売春を疑われるような内容があれば、“NGワード”として追及される可能性も高いと言えます。また、通訳もついてくれるようですが、説明が長くなれば当然、要約して翻訳するでしょうし、細かいニュアンスなど含めて正確に伝えてもらえるかは微妙なところです」(同前)
別室での証拠確認は5〜6時間におよぶことも珍しくないといい、中には「身ぐるみはがされて調べられた」という人もいるようだ。
強制送還なら「最低5年間は入国禁止」
もし“別室”で具体的な証拠が出てきて入国拒否となった場合、強制送還されることになるが、それには2通りの方法があるという。
「まずは、入国しようとした人が『任意で帰った』という体裁にするケースです。そしてより厳しいのが、本当の意味での『強制送還』。もしそうなった場合、最低5年間はアメリカのビザを申請することさえできなくなります。つまり、最低5年間は『入国禁止』となるのです。
アメリカ旅行の際にはビザより取得が簡単なESTAを利用する方も多いですが、ESTAは入国審査時にトラブルがあった場合、その後は“生涯”使えなくなってしまいます。たとえ『任意帰国』だったとしても、ほぼ確実に利用できなくなってしまうと考えたほうがよいです」(タイタノ弁護士)
なお強制送還後5年がたったとしても、前回の入国審査で“問題”とされた事由が完全に解消されたことを証明できなければ、ビザを取得できない可能性が高い。
「一度でも入国時にトラブルがあれば、アメリカへの入国が『生涯禁止』となってしまうリスクもあります。特例的にビザを出してもらえるケースもありますが、そのハードルはとてつもなく高いのが現状です」(同前)
日本人のESTA利用「不可」になる可能性も?
このまま日本人の入国拒否が続いた場合、国全体にはどのような影響がおよぶと考えられるのだろうか。
「もっとも大きな不利益として、日本人がESTAを利用できなくなる可能性があります。世界的に見れば、実はESTAを利用できる国は40カ国もなく、『96.5%以上の国民がアメリカの入管法を守っている』など一定の条件を満たした国にのみ、特例的に認められた制度なのです。また、アメリカ各地の空港で日本人への入国審査が厳しくなるということも考えられるでしょう」(タイタノ弁護士)
なお、あまり知られていないが、ビザであれESTAであれ、本来は「明確な渡米目的」があることが、その取得要件のひとつとなっている。
「基本的にアメリカ渡航で『着いてから予定を決めます』というのは認められないのですが、実際の運用では黙認されているというのが現状です。
他の取得要件として、往復の航空券があること、十分な旅行資金があること等があります。
これを踏まえて、もし疑われる不安がある人は、滞在中の予定をしっかり決める、帰りの航空券があることを証明できるようにしておく、必要な旅行資金があることなど、“きちんとした旅行者”であることを明らかにできるようにしておくのも手だと思います」(同前)
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