「非正規教員は泣き寝入りさせられてきた」 青山学院“雇い止め”訴訟で原告が意見陳述
5月8日、雇用契約の「無期転換」を阻止するために不当な雇い止めをされたとして、非常勤講師として働いていた男性が学校法人青山学院に対し雇い止めの撤回と契約の更新を求める訴訟の第一回期日が開催された。
「無期転換」となる直前の雇い止め
原告の男性は2019年4月に青山学院高等部に採用され1年ごとに契約を更新してきたが、5年目の契約更新を拒否され、2024年3月末に退職した。
労働契約法18条は、有給雇用契約が5年を超える時、労働者が申し込めば無期雇用に転換できる「無期転換ルール」を定めている。また、厚労省が発行している「無期転換ルールハンドブック」には、無期転換申込権が発生する前の雇い止めは「法の趣旨に照らして望ましいものではありません」と記載されている。
原告側は、無期転換申込権が発生する直前に男性が雇い止めとなったことは法の趣旨に反する「事実上の脱法行為」と主張している。
また、労働契約法19条に定められた「雇い止め法理」により、以下の条件を満たす場合には客観的・合理的理由のない雇い止めは無効となる。
(1):過去に反復更新された有期労働契約で、その雇い止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
(2):労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
期日後に行われた報告集会では、(2)の「合理的な理由」と雇止めの合理性が認められるかどうかが訴訟の争点になる、と原告側の今泉義竜弁護士が解説した。
教え子や他校の非正規教員が応援
今回の期日では原告の意見陳述が行われた。男性は教え子が卒業する際に渡された手紙を読み上げ、青山学院での業務にやりがいを感じていたことを訴えた。
「金銭は解決になりません。復職による解決を強く希望しています」(原告男性)
男性を応援するため、教え子数名のほか全国各地の学校から非正規教員が傍聴に訪れて、報告集会にも参加した。
無期雇用契約で守られていない非正規教員は立場が弱い。学校法人の対応に不満や疑問を抱いてはいるが、不利益変更や雇い止めなどによる報復を恐れて声を上げることのできない教員は多くいる。
「私学教員ユニオンに加入して青山学院と団体交渉に臨んだり、裁判を提起したりするにあたって、声を上げることがいかに困難なことか、身に染みて分かりました」(原告男性)
「これまでどれだけ多くの非正規教員が声を上げることなく、泣き寝入りを余儀なくされてきたでしょうか。こうした状況に一石を投じる必要性を強く感じ、この裁判を提起しました」(同上)
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