新宿タワマン刺殺事件“容疑者への同情コメント”に論議 思い起こされる「桶川ストーカー事件」の反省
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東京・西新宿のタワーマンションで8日未明、住人の女性(25)が男性(51)に刺殺された事件で、2人の間に事件以前からトラブルがあったことが徐々に明らかになってきている。
報道によれば、2人に接点ができたのは約4年前。女性が働いていたガールズバーに男性が訪れた時だったようだ。
男性は女性に好意を抱き、趣味で集めていた車やバイク、高価なミニカーなどを売却したお金など1000万円超を女性に渡していたという。
警視庁の調べに対し男性は「お金を返してもらうために行った」「体を傷だらけにしてやろうと思って刺した」と話している。
「桶川ストーカー殺人事件」との共通点
女性がガールズバーに勤務していたことや、男性の家族へのインタビュー映像などを受けて、SNSなどインターネット上では、女性は男性に「結婚」をほのめかしてお金をだまし取るいわゆる「頂き女子」だったのではないかという臆測も広がっている。男性に同情的なコメントや、女性の死が「自業自得」だったかのような投稿も少なくない。
刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士はこうした状況について、「桶川ストーカー殺人事件」を想起したと話す。
1999年に起きた「桶川ストーカー事件」では、女子大学生が元交際相手を中心とするグループから嫌がらせを受け続け、殺害された。2001年に制定された「ストーカー規制法」の契機ともなった事件だが、「報道被害」も問題視された。
事件直後から、被害者について「ブランド狂いだった」「風俗店に勤務していた」など、あたかも被害者にも“問題”があったかのような報道がなされたからだ(後にこれらの情報はすべて事実と異なることが明らかになった)。
杉山弁護士は「あらゆる事件報道に共通して、被疑者についても被害者についても、正確に評価できるような情報は、逮捕直後には揃ってないと考えるべきです」として、事件報道は冷静に受け止める必要があると指摘する。
金銭トラブルよりも「計画性の有無」が重要に
その上で、被疑者(男性)がこのまま殺人罪で起訴された場合について、杉山弁護士は「仮に2人の間に報道されているような金銭トラブルがあったとしても、量刑を考える上では重要ではありません」と続ける。
「金銭トラブルから殺人に至るプロセスには飛躍があります。量刑を考える上では、金銭トラブルの有無よりも、たとえば、口論する中で突発的に犯行に及んだのか、それとも入念に計画していた(計画性があった)のかという点の方が重要になると思います」
一方で、男性がかつて被害女性に対する「ストーカー規制法」違反容疑で逮捕されている事実は、量刑判断に影響を及ぼす可能性があるという。
「ストーカーとして扱われた時点で、話し合い等、直接的な接触の余地がなくなります。そうなると、男性は殺害するために女性に会いに行ったのではといった推認も働きます。
これは“計画性があったのか”という点に絡み、強い犯意を推認させる事情になると考えられます。当然、強い犯意が見られるほど処罰の必要性は高く、犯罪としての責任は重くなります」
弁護士「(男性は)法的手段がとれた」
実は男性は、被害女性へのつきまとい行為について「ストーカー規制法」による書面警告を受けた当日、川崎市内の警察署を訪れ「(女性に渡した)金を返してもらうために会いに行ったのにストーカー扱いされる」などと話していたという。当時対応した警察官は“弁護士への相談”を勧めたが、男性は5日後に同法違反容疑で逮捕されている。
女性が男性からの好意を利用して結婚をほのめかしお金をだまし取っていたことが事実だったとすれば、男性側が「詐欺だ」「だまされた」と感じてもおかしくない。
しかし、詐欺行為が事実だった場合、男性は「法的手段をとれた」と杉山弁護士は話す。
「詐欺として刑事告訴して警察に捜査してもらうのは容易ではないかもしれませんが、当時対応した警察官のいうように、金銭回収のための民事的な手段は試みてもよかったと思います。
同様のケースでは、私自身も回収実績がありますし、裁判例をたどれば請求が認められているものも見つけられます」
よりにもよって“殺人”という最悪の手段を選んだ男性。杉山弁護士は「あくまで推測になってしまいますが」と前置きした上で男性の判断についてこう語った。
「本件は、結局お金をとられた怒りより、それでも消えない“女性への執着”の方が殺人の動機として作用しているような気はしています」
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