もしも旅客機搭乗中“乱気流”に巻き込まれたら…「すぐに酸素マスクは使わず」「おしゃべりする」意外な行動が有効なわけ
もしもワニに襲われたら…そんなめったにないことにわざわざ備えておく必要なんかない!多くの人はそう考えているかもしれない。だが、「まさか」が起こってしまうのが現実というものだ。世の中では運よりも、「知恵」の方がサバイバルには有効だったりする。
本連載では、クマやナイフを振り回す悪漢に襲われながら逃げ切るなど、誰もしたくない経験を持つ2人の作者が実体験も踏まえ、状況別に生き残る術をわかりやすく紹介。まさに「窮地から生き延びるためのノウハウ」を、万一の時に備え、共有する。
第2回のテーマは、「もしも飛行中に緊急事態が 生じたら」。大型機の事故では過半数を占める 急な機体の揺れで発生する「機体動揺事故」。つい先日も、ロンドン発のシンガポール航空の機体(乗客乗員計299人)が乱気流に巻き込まれ、約70人が負傷し、一人は心臓発作で死亡した。
パニック下でも、「その時」に備え、対策を頭に入れておけば、少しは冷静でいられるだろう。(全4回)
※ この記事はジョシュア・ペイビン/デビット・ボーゲニクト(訳:梅澤乃奈)の書籍『もしもワニに襲われたら』(文響社)より一部抜粋・構成しています。
めちゃくちゃな乱気流に遭遇した場合
1.飛んでしまいそうなものはすべて固定しておく
乱気流の前兆は、ほんのわずかなものであるか、一切ないかのどちらかです。きちんと収納されていなかった手荷物は、客室中を飛び回ることになります。使用していない手荷物、特に本や電子機器などの重たいものは口を 閉じたバッグにしまい、前の座席の下に置いておくか、 座席上の棚に収納しておきましょう。小さな手荷物は、 座席のポケットに入れておくこと。危険物となりうるも の(未開封の缶ジュースなど)は、トレイの上に放置しないよう気をつけましょう。
2.シートベルトを着用する
できる限りの安全性を、不便さを感じない範囲で保ちましょう。激しい乱気流は、機体を急降下させることもあります。シートベルトをしていない乗客は、座席上の棚 や客室の天井に頭をぶつけて大けがをする可能性もあります。
3. トレイテーブルを閉じておく
しっかりロックされていることを確認しておく。
4. 頭部を守る
しっかりシートベルトを着用したら、浮遊物から頭部を守りましょう。クッション、厚手の上着、折りたたんだ ブランケットなどを頭の上に持ってきます。可能であれば空気注入型のネックピローを首に当てておきましょう。 硬いものや重いものは絶対に使用しないこと。手から離れてしまえば、たちまち危険な浮遊物となってしまいます。
5. 不時着時の体勢をとる
安全のための機内装具を指示通りに身につけたら、前かがみになり、頭をできるだけ膝に近づけましょう。
6. 酸素マスクが出てきても慌てない
酸素マスクは客室の気圧が下がることで座席に落ちてくるよう設計されていますが、乱気流の際に落ちてくることもあります。酸素マスクが落ちてきたからといって、 パニックにならないようにしましょう。客室乗務員から 指示がない限り、酸素マスクは使わないこと。
7.急落への心構えをしておくこと
軽度から中度の乱気流では機体が数十フィートも急落することがあります。さらに激しい乱気流では 100 フィー ト(約30メートル)以上も急落する可能性があるのです。 通常、パイロットは先行する飛行機から連絡を受けたら 高度を調整して乱気流を避けて飛行します。
8. 袋を口につけて呼吸してみる
過呼吸になった場合はエチケット袋を手に取り、上部をしっかり手で閉じた状態で口に当て、ゆっくり呼吸を繰り返してください。こうすることで、過呼吸で低下した 血液中の二酸化炭素濃度が再び上昇します。
ですが、注意が必要です。もしも過呼吸の原因が不安ではなく、心臓発作やぜんそくであった場合には逆に危険な対処法となり得ます。
9. おしゃべりをする
多くの場合、近くの乗客と会話をすることで呼吸を整えることができます。
[プロの助言]
乱気流は4つのレベルに分類することができます。
レベル1 軽度
軽度の乱気流では、ほんの一瞬だけ、わずかに高度がずれたり水平でなくなったりすることがあります(横揺れ、揺れ、機首のずれなど)。 シートベルトを軽く引っぱられるような感覚を覚えるかもしれません。 機内に置かれたものが、ほんの少しだけ移動する可能性があります。
レベル2 中度
中度の乱気流では高度がずれ、機体も水平ではなくなりますが、バイロットが問題なく機体を制御できる範囲です。シートベルトを引っぱられる感覚を覚えるでしょう。
レベル3 重度
重度の乱気流では大きく高度がずれ、機体も大きく傾くかもしれません。 シートベルトを強く引っぱられるような感覚を覚えるでしょう。
レベル4 極度
極度の乱気流では、機体は上下左右に揺れまくり、もはや制御不能の状態に陥ります。機体に損傷を負ってしまう場合もあるでしょう。
重度以上の乱気流では、機体に重大な損傷を負う可能性があります。急落することで翼にかかる負荷率が機体の限界を超えてしまうと、翼やほかの塗装物などが機体から剝がれ落ちてしまうかもしれません。
- この記事は、書籍発刊時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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