高速道路に人が…! 目視できても“事故回避”する難しさ 「後続車側」がリスクを減らすためにできること
今月14日夕方、首都高速道路湾岸線(神奈川県川崎市川崎区扇島)の追い越し車線に停車していた車2台にトラックが追突し、1人が死亡、2人が大けがをする事故が発生した。過失運転致死傷の疑いで逮捕されたトラックのドライバーは、警察の調べに対し「追い越し車線を走行しているときに発炎筒が見えた」「ハンドルを切ったが間に合わなかった」などと説明しているという。
本来、高速道路上で緊急事態が発生し、やむを得ず停車した場合、車内や車のそばにとどまることは非常に危険な行為とされている。しかし実際には、パニックになって適切な対応ができない人も少なくないのではないだろうか。
“意識のズレ”が事故を誘発
車両が高速で走行する高速道路では、わずかなミスが事故につながり、その結果も重大となりやすい。内閣府が公表している「令和5年交通安全白書」によれば、高速道路における死亡事故率(※1)は一般道路の約3倍に上っている。
※1 交通事故発生件数のうち交通死亡事故の割合
後続車にひかれたり、衝突されたりする死亡事故例も少なくない。高速道路で起きる死亡事故のうち、およそ5件に1件はそうしたケースだというデータもある(政府広報オンラインより)。同サイトではその背景として、停止車両側には「当然、後続車のドライバーは自分に気づいて減速してくれるだろう」、後続車側には「高速道路は歩行者もなく安全、故障車両なんてめったにいないだろう」という“意識のズレ”があることを指摘している。
後続車側が事故を回避する難しさ
たとえば時速100kmで走行している車の場合、単純計算すれば1秒間に進む距離は28mほど。仮に停止車両や道路上にいる人を目視できても、事故を回避することは容易ではない。
14日夕方に発生した首都高の事故について報道されている以上のことは分からないが、逮捕されたトラックドライバーに同情する声が見受けられたことも事実だ。
交通事故に詳しい鈴木淳志弁護士は、後続車側の刑事責任について以下のように説明する。
「停止車両側が停止表示板を適切な位置に設置していたか、追突したドライバーがどのタイミングで発炎筒を確認可能であったか、事故現場の形状がどうなっていたか、車線変更できなかった事情がどのようなものだったか、などの事情によって評価は変わり得ると思います。
これらを総合的に見て、追突したドライバーに事故回避可能性がないと判断された場合には、刑事責任を問われないことも考えられます」
事故回避の分かれ目…停止車両側の“適切な対処”とは
後続車側の刑事責任を評価する要素を踏まえても、万が一高速道路上で停車せざるを得ない状況に陥った場合は、停止車両側がいかに適切な対処をできるかが事故の分かれ目となるだろう。政府広報オンラインは、次のような対応をとるよう呼びかけている。
①ハザードランプを点灯させて故障や事故の発生を周囲に知らせ、できるだけ路肩に寄せて停車する。
②停止車両のハザードランプをつけたまま、すぐに乗員全員がガードレールの外など安全な場所に避難する。後続車に注意しながら、停車した車の後方の、後続車から見えやすい位置に発炎筒や停止表示機器を設置し(※2)、すみやかにガードレールの外など安全な場所に退避する。
※2 停止表示機器を設置しなかった場合は「故障車両表示義務違反」(道路交通法第75条の11、道路交通法施行令27条の6。普通車で反則金6000円、違反点数1点)となる。
③110番、道路緊急ダイヤル「#9910」、非常電話(高速道路上1㎞ごとに設置。受話器をあげると道路管理者交通管制室へつながる)のいずれかに通報する。
リスク回避のために「後続車側」ができること
万が一、高速道路を走行中に停止車両や車外にとどまっている人と遭遇した場合、後続車側が事故を回避する方法はあるのだろうか。
鈴木弁護士は「一般論としては、適切な速度で走行する、発炎筒を見たら警戒する、などが事故を起こさない対策として考えられますが、完全に事故を回避することは正直難しいと思います」と言う。
いつも通り車を運転していても、突然事故の“加害者”として刑事責任を問われるかもしれない――。不安を感じているドライバーへ、鈴木弁護士は以下のようにアドバイスした。
「事故に遭ってしまったときの対策として、ドライブレコーダーの設置と、任意保険への加入はしておくべきです。
ドライブレコーダーがあれば、客観的に事故状況を確認することが可能になり、事故状況によっては、回避可能性がなかったと判断され、刑事責任を問われないことがあり得ます。
任意保険に加入していれば、被害内容にもよりますが、保険金が支払われる見込みであることが考慮され、起訴されなかったり、起訴された場合でも量刑上有利に考慮されることがあり得ます」
- この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。
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