みずほ銀行元行員「約5年の自宅待機命令」の責任を問い“元取締役会長”に損害賠償を請求 対銀行の訴訟と並行して提訴される

弁護士JP編集部

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みずほ銀行元行員「約5年の自宅待機命令」の責任を問い“元取締役会長”に損害賠償を請求 対銀行の訴訟と並行して提訴される
原告代理人の中川勝之弁護士(左)、笹山尚人弁護士(右)(5月28日都内/弁護士JP)

5月28日、みずほ銀行に勤務していた男性が約5年間の自宅待機を命じられた末に懲戒解雇された事案に関して、元みずほFG取締役会長の佐藤康博氏に損害賠償を請求する裁判が提起された(東京地裁)。

銀行に対する訴訟と並行して、元取締役を提訴

訴状によると、原告の男性は2016年4月にみずほ銀行から自宅待機を命じられた。2018年頃からメンタルヘルスが悪化し、精神障害を発症。2020年に懲戒処分を受けた後、2021年に懲戒解雇される。

本件についてはみずほ銀行を被告とする裁判がすでに進行している。4月24日の東京地裁判決では、長期間の自宅待機は「通常想定し難い異常な事態」であり「社会通念上許容される限度を超えた違法な退職勧奨」であると認定され、330万円の支払いが命じられた。

しかし、地裁判決は男性に対する懲戒解雇そのものは有効であると認定。また、原告側は違法な自宅待機は「5年」続いたと主張していたのに対して、地裁では「4年半」と認定された。これらの認定が不服であることから、原告側は控訴を申し立てた。

今回の提訴は、男性が自宅待機を命じられていた期間にみずほFG(ファイナンシャル・グループ)の社長や取締役などの役員職を務めていた佐藤氏を被告にして、善管注意義務違反(会社法429条)や不法行為責任(民法709条)に基づく損害賠償550万円を請求するもの。

経団連と元取締役にパワハラを通報したが……

「労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」が施行された翌日の2020年6月2日、男性は佐藤氏が副会長を務めていた経団連(日本経済団体連合会)と佐藤氏個人に宛て「内部告発」と題された文書を提出し、自宅待機命令などのパワハラに関して適切な対応や調査を求めるための通報を行った。

その後、2021年2月19日にも、同じく経団連と佐藤氏に宛てて通報を行う。

経団連はみずほ銀行に対して「然るべき対応をとるよう」にと警告したが、同行のコンプライアンス統括グループから男性に届いた書面には「本件内部調査はすでに終了している」「自宅待機は正当」と受けとれる内容が記載されていたという。

訴状では、本件について佐藤氏に責任を問う理由として、下記の点を指摘していた。

・通報により佐藤氏はパワハラの事実について認識していたはずなのに、適切な対応を行わなかったこと

・男性が自宅待機していた全期間を通じてみずほFGの役員に在任していた人物は、佐藤氏のみであること

・自宅待機や懲戒解雇を命じた人事責任者とパワハラ通報後に対応を指揮したコンプライアンス責任者の両名ともが、佐藤氏の元秘書であること

「取締役には会社のガバナンスを監視する責任がある」

提訴後に開かれた記者会見では、原告代理人の中川勝之弁護士が4月の判決について「日本を代表するメガバンクが違法なことを行った事実が認定された」と指摘。

また、「取締役には会社の体制やガバナンスを監視する責任があり、これを怠った場合には重過失が認められる」と、佐藤氏を提訴した理由を説明した。

自宅待機命令などのハラスメントを苦にした男性は抑うつ状態となり、ホームセンターで首つり用のロープを購入しようとするなどの自殺未遂もあったという。

「自宅待機が4年を超え、やむを得ずパワハラを通報したら、懲戒処分や解雇などの対応が行われた。佐藤氏が適切に対応していたら、担当者たちの暴走を止められていたはず。責任の所在を明らかにするため、戦っていきたい」(原告男性)

本件についてみずほ銀行の窓口に問い合わせたところ、「事実確認がとれないので、コメントはできない」との回答だった。

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