空き家認定で「固定資産税6倍」持ち主へ解体費用「全額請求」も… 不動産相続「放置」で必ず後悔する“大き過ぎる”代償

榎園 哲哉

榎園 哲哉

空き家認定で「固定資産税6倍」持ち主へ解体費用「全額請求」も… 不動産相続「放置」で必ず後悔する“大き過ぎる”代償
東京都大田区の住宅地に建つ空き家(撮影:榎園哲哉)

年々増加している空き家等への対策として、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)の一部を改正する法律」が施行され、4月から空き家等の所有者(相続者)への相続登記の“義務化”などがスタートしている。

土地や家を相続したまま放置すると、納付する固定資産税がはね上がるリスクもあり、「難しそう」「よくわからない」と目を背けていると大きな不利益が生じるため注意が必要だ。

過去最多「900万戸」の空き家が全国に

田園調布や山王などの高級住宅街を擁する東京都大田区も「空き家」問題を抱えている。住宅街を散策すると、家々の合間にひっそりとたたずむ空き家も少なくない。中には所有者が不明なのか、朽ち果てたような空き家もあり、景観を害していることに加え、防犯・防火等の面からの不安も感じる。

総務省が4月30日に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数はおよそ900万戸(総住宅数に占める空き家の割合=空き家率=は13.8%)で過去最高。この30年間で約2倍となっている。

このうち「賃貸・売却用及び二次的住宅(別荘等)を除く空き家」、つまり使用目的のない空き家の数も右肩上がりに増加し、5年前(2018年)の前回調査時より37万戸増の385万戸(空き家率は5.9%)となっている。

ちなみに大田区では、区が把握している空き家は約720戸(2020年時点)だが、住宅・土地統計調査(2018年)では5万戸弱の空き家があるという推計が出されている。外観から空き家であることが判別しにくいなどの理由で、区が把握できていない空き家も少なくないようだ。

法改正で「指導・勧告対象」の空き家が拡大

現状、空き家を放置させることで、所有者にはどのような不利益が生じるのだろうか。

内閣府大臣官房政府広報室が運営するWEBサイト「政府広報オンライン」によれば、まず「そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態」「適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態」などにより「特定空家」と認められた空き家は、市区町村が保有者に対し助言・指導を行う。

それでも改善が見られない場合は勧告・命令が行われ、これにも従わない場合は50万円以下の過料が求められる。さらに行政による強制的な除却(解体・撤去)が行われる場合もある。

また今回の空家特措法改正で、そのまま放置すれば「特定空家」となるであろう「管理不全空家」が新設され、「特定空家」とともに指導・勧告の対象となった。

空き家所有者は「税金の負担が増える」

さらに「空き家の発生原因は、半数以上が相続によるもの」「(相続後)そのまま放置されてしまうケースが珍しくありません」(政府広報オンライン)として、これまでは任意だった不動産(家屋・土地)の相続登記(所有権の移転)が“義務化”。

「(相続人は)自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」(不動産登記法第76条の2第1項)ことが定められた。

相続人が極めて多数に上るなどの正当な理由がなく申請を怠った場合は、10万円以下の過料支払いの対象となる。

そして何より、空き家の放置によって「税金の負担が増える」ことは知っておきたい。

本来、住宅やマンションなどの居住建物の敷地である「住宅用地」には、固定資産税の評価を引き下げる特例(=住宅用地特例=、200平方メートル以下の土地は6分の1に減額、200平方メートルを超える土地は3分の1に減額)が設けられている。

しかし、「特定空家」またはそれに至りかねない「管理不全空家」と勧告された場合、特例が解除され、200平方メートル以下の土地では納付する固定資産税が約6倍にはね上がることになる。

強制的に解体され費用請求される場合も

放置された空き家は、老朽化による景観の悪化、崩壊の危険などで近隣住民とのトラブルにもつながりかねない。

大田区は昨年12月、同区南蒲田に建つ老朽化した「特定空家」1棟に対し行政代執行を実施。2階建て家屋の全部除却を行った。

行政代執行後の大田区南蒲田の土地(撮影:榎園哲哉)

「空き家は所有者の方に適正に管理していただくことが大前提になり、行政代執行は基本的に行いません。しかし、近隣の方々に危害を加える恐れがある場合は、(近隣住民の)ご迷惑にならないように最低限のことを行います。なお、代執行に掛かった費用については(所有者に)全額を請求させていただきます」(大田区建築調整課長)

空き家数が90万戸に上る首都・東京も都民らへの啓発活動などに力を入れている。

東京都住宅政策本部は『東京空き家ガイドブック』や『東京住まいの終活ガイドブック』などを発行。

「空き家の適正な管理や利活用方法、今の住まいを将来どのように引き継ぐのか、家族で話し合っておく必要性などについてお伝えしています」(担当者)

また、空き家に関するさまざまな相談に無料で対応する『東京都空き家ワンストップ窓口』を設け、各種アドバイスも行っているという。

不動産の相続人となった場合、あるいは相続人になる可能性のある人は、早めに、確実に手続き(準備)を進めていくべきだろう。

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