自宅敷地内の“不審者”胸ぐらつかんだら逮捕!? 「不法侵入者」への適切な対応とは
自宅敷地内に侵入した男子中学生の胸ぐらをつかんだとして、5月14日、北海道札幌市で69歳の男性が逮捕された。
男子中学生が男性の自宅敷地に誤ってソフトボールを入れてしまい敷地内に無断で侵入。男子中学生を発見した男性が「何をしている」などと怒鳴り、男子中学生の胸ぐらをつかんだとして暴行の疑いで逮捕された。
報道に対しネット上などでは、「中学生は不法侵入ではないのか」「不法侵入に対する正当防衛には当たらないの?」と男性の逮捕に対する疑問の声も上がっていた。
他人の敷地内に無断で立ち入った男子中学生にも落ち度があるようにも思えるが、なぜ家主の男性が逮捕されたのか。
正当防衛が成立しないワケ
刑事弁護・少年事件を多く担当する齊田貴士弁護士は、「必要性・相当性の有無」をその理由にあげる。
つまり、男子中学生には悪意がなく「怒鳴ったり胸ぐらをつかんだりする必要はなかった」のではないかということ。
「正当防衛」(刑法36条1項)が成立するには、「さしせまった不正の侵害があり、自分又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした」という必要性・相当性が重要になる。
たとえ男子中学生が「悪意を持った侵入者」だったとしても、通常は、相手がこちらに攻撃(有形力の行使)の姿勢を見せていない限り、口頭の注意もなしにいきなり怒鳴る、胸ぐらをつかむなどに至る必要性・相当性は認められない。したがって、今回の事件に関しては、「過剰防衛となり逮捕されたと思います」(齊田弁護士)ということだ。
侵入者を見つけたらどうする?
では、庭など自宅敷地内で侵入者を見つけた際にはどう対応すればいいのか。
「有形力の行使をせず、事情を聞いて適切に対応すべきでしょう。事情も聞かずに暴行を働けば、本件のように刑事罰を問われる可能性もあります。
また、本件のようにボールを取りに来た人や、風で飛ばされた洗濯物を取りに来た人など、必要があって敷地内に入る許可を求めてきている相手に、理由もなく拒絶し、敷地内にある相手の物を領得すると、占有離脱物横領罪などの犯罪が成立する可能性もあります。そのため(人が訪ねてきた時は)変に意地悪をせず、事情を聞いた上で、敷地内に入る許可を出した方がよいかと思います」(齊田弁護士)。
他人の敷地に入る必要がある時は……
たとえば、何らかの理由があり、他人の敷地に入る必要がある場合にはどうすればよいのだろうか。
「洗濯物を無断で取りに入ったから刑事罰を受けるかというと、捜査機関の裁量等の問題になってくるかと思いますが、私物を取りに入る場合でも、無断で入れば不法侵入罪が成立する可能性があります。
したがって、まずは住民の許可を得てから取りに入るというのが基本です。留守の場合でも同様で、建前上は住民の帰宅を待って、許可を得てから取りに入るべきだと思います」(齊田弁護士)
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