花王「めぐりズム」ホットアイマスクの“意匠権”侵害主張 アイリスオーヤマに「販売差し止め」申し立て

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

花王「めぐりズム」ホットアイマスクの“意匠権”侵害主張 アイリスオーヤマに「販売差し止め」申し立て
花王は1990年代からホットアイマスクの開発に着手、今では薬局などで大きく展開されている(弁護士JP編集部)

大手日用品メーカーの「花王」は9日、生活用品メーカー「アイリスオーヤマ」から発売されたアイマスク製品が自社製品の意匠権を侵害しているとして販売等の差し止めを求め、東京地裁に申し立てを行ったことを明らかにした。

発表資料によれば、花王は蒸気で目や目元を温める「めぐりズム 蒸気でホットアイマスク」を2007年より販売しているが、アイリスオーヤマが販売を開始した「モイスクル じんわりホットアイマスク」シリーズの形態が自社製品の意匠権を侵害していると判断。販売等を差し止める仮処分の申し立てを行ったという。

花王が販売差し止めを求めている製品は以下4種。

モイスクル じんわりホットアイマスク 5 枚入 無香料
モイスクル じんわりホットアイマスク 10 枚入 無香料
モイスクル じんわりホットアイマスク 5 枚入 ラベンダー
モイスクル じんわりホットアイマスク 10 枚入 ラベンダー

モイスクル じんわりホットアイマスク(アイリスオーヤマ商品ページより)

“デザイン”で得られる経済的利益守る「意匠権」

著作権などと並び「知的財産権」のひとつである「意匠権」は、商品・建築物・画像の形や色、模様などからなる、いわゆる“デザイン”を保護している。

デザインは、魅力的であれば消費者の購買意欲に直結し、経済的な利益を見込める一方で、比較的容易に“模倣”の対象にもなり得る。

そのため、特許庁ではデザインした人からの出願に応じて、保護すべき意匠か審査を行った上で「意匠権」を設定する。特許庁に認められた意匠は「登録意匠」として、無断での模倣が最長25年間禁止され、デザインから得られる経済的利益を保護できる。

なお、権利者に無断で登録意匠を模倣すると、販売の差し止めを求められるほか、損害賠償請求等の民事的な責任を負うこともある。さらに模倣に故意が認められた場合等には、個人であっても刑事罰(※)が科される可能性もあるため、安易な模倣には注意が必要だ。

※10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(意匠法第69条)。また、侵害者が法人の代表者・代理人、従業者等である場合には、両罰規定に基づき法人にも3億円以下の罰金が科される(同法第74条第1項第1号)。

司法判断には「要所」の同一性・類似性が影響

登録意匠は、原則としてすべて独立行政法人「工業所有権情報・研修館(INPIT)」が提供する特許情報プラットホーム「J-PlatPat」上に公開されている。

たとえば、本件で花王が侵害されたと主張する意匠権は「登録1330629号」。この番号を同プラットホーム上で検索すれば、意匠の説明や図面から、登録日、創作者まで誰でも確認することができる。

しかし、どれだけ見た目が類似していたとしても、実際に意匠権の“侵害”に該当するかどうかは、あくまで司法の判断にゆだねられている。

意匠権侵害の判断について、知財高裁は「意匠を全体として観察することを要するが、もっとも注意を引きやすい部分を意匠の要部として把握し登録意匠と相手方意匠が、意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することが必要である」とし、デザイン全体だけでなく「要部」の同一性・類似性が大きなポイントになることを示している。(平成23年3月28日判決)

花王は「長い時間をかけて広く認知され、信頼を築いてきたホットアイマスク市場が、類似品によってその信頼を損なわれることを強く懸念しています」と発表。

一方のアイリスオーヤマは、「訴状が届き次第、内容を確認し会社としての対応を検討いたします」(コメントママ)としている。侵害を認め販売を差し止めるのか、侵害はなかったとして争うのか、注目が集まっている。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア