「電動キックボード」新たな“兄弟”マシン登場に心配の声も… 公道の「迷惑車両」とならないために必要な意識とは
「電動シートボード」は、移動難民の救世主か邪魔物か…。2024年冬、電動アシスト自転車、電動キックボードに続く、新たな電動モビリティの投入が予定されている。電動キックボードに座席とカゴが付いた仕様で、ペダルはない。「特定小型原動機付自転車」に該当するため、16歳以上は免許不要、ヘルメットは努力義務となっている。
23年7月、電動キックボードが新たな車両区分「特定小型原動機付自転車」のモビリティとして登場。あれから1年が経過したが、SNS上の評判は芳しくない。数字でみると、2023年の電動キックボードによる信号無視などの交通違反の摘発は2万1562件、事故190件となっている。
電動キックボードの”兄弟”マシンに否定的意見が集中
目立って多い数値ではないが、新しい乗り物であり、悪目立ちしているのだろう。その余波もあってか、”兄弟マシン”となる、電動シートボート登場の報に、ネット上では「免許制にしてくれ」「なぜこんな不安定な乗り物が公道で走行するのを許可するのか」と否定的な声が相次いだ。
そうした声が現実になり、電動シートボードも車歩道をかき乱すやっかいなシロモノになってしまうのか…。
より重要になる利用者のモラル
カギを握るのは、当然、利用する人のモラルだ。電動シートボードは道路交通法上「特定小型原動機付自転車」に区分され、原動機としての定格出力0.6キロワット以下の電動機を用い、最高速度は時速20キロ以下などのルールが設けられている。
歩道走行も可能だが、その場合は時速6キロに減速する必要がある。いたってシンプルなこれらのルールさえ守っていれば、都心のちょっとした移動手段として、交通手段に乏しい地方での”足”として、移動難民にとって非常に快適で便利なモビリティとして、活躍するポテンシャルを秘める。
だからこそ、電動シートボードを利用する人のルール順守が重要になる。すでに道路上は電動アシスト自転車やスマホのながら運転で暴走する自転車、違法なモペッドなど、危険に満ちあふれている。青切符の導入が決まったのもそうした状況を改善するためだ。ここで新たなモビリティが脱法・違法な乗り方であふれようものなら目の敵にされるのは目に見えている。
利用者の違反行為に厳罰の姿勢打ち出すLuup
誰よりもそのリスクを感じ取っているのは、今回の電動シーボードも含む、電動マイクロモビリティのシェアサービスを提供するLuup社(本社:東京都千代田区)だ。同社はこれまでも電動キックボード利用前の交通ルールテスト全問連続正解・満点を義務付けるなど、利用者の安全意識向上に尽力してきた。6月末には新たに違法運転撲滅へ向け、「LUUPの安全・安心アクションプラン2024」を発表している。
同プランでは、ヘルメット着用推進へ向けた取り組みや安全走行をサポートするナビ機能を全国に展開することを明かしているが、注目は交通違反点数制度による違反者のペナルティ強化だ。
具体的には軽微なものも含むすべての交通違反に対し、違反点数を加算。一定の点数に達するとアカウントが30日間凍結され、利用できなくするというもの。サービス提供事業者ながらここまですることに、同社の電動モビリティによる違法運転撲滅への強い使命感がにじんでいる。
Luup社ではまた、電動キックボードの車両自体の安全性強化も継続的に行っている。実験を繰り返しながら、ボディ強度を高めたり、サスペンションを改良したりなどで、事故が起こりにくく、起こっても最小限の被害に留まるよう随時アップデート。次世代モビリティとしての可能性を妥協なく研ぎ澄ましている。
もっとも、この特定小型原動機付自転車のカテゴリーには電動シートボード以外のモビリティも参入している。glafit社(本社:和歌山県和歌山市)は自転車型タイプの電動バイク「電動サイクルNFR-01Pro」を3月にクラウドファンディングで先行予約発売。3か月後には1億円を突破する応援購入金額を達成し、その需要の大きさを示している。
同社によれば、「60代、70代の購入割合が15.89%」で、他のモビリティのプロジェクト(平均12.15%)より高いという。
専門家は歓迎も、2つの条件が必要と提言
自転車に青切符を導入する法案の設立にも携わった自転車活用推進研究会の小林成基理事長は、こうした電動シートボード等の新たな電動モビリティの登場について次のように見解を述べる。
「移動の選択肢が増えることは大歓迎です。違法モペットみたいな者がでてくるのはダメですが、悪いのは車両じゃなくて、乗る人のモラル。われわれとしても、そうした教育面もしっかりとフォローできる仕組みをつくるよう働きかけていきたいと思っています」
電動シートボードは、立った姿勢で乗る電動キックボードでは乗車がつらい人にとって、ちょっとした買い物への移動手段として重宝される可能性もある。一方で、高齢者が時速20キロ以下とはいえ、車道の左端もしくは自転車道を安全に、軽快に走行するイメージはしづらい…。
そうなると、せっかくの「選択肢」が宝の持ち腐れになりかねない。やや究極的だが、小林理事長の次の言葉が、現在の日本のモビリティが内包する課題へのひとつの「解」といえるのかもしれない。
「ルールを守るのは当然のことです。ただ、守ってもらうためには、道路の整備も含め、ルールを守れる環境を用意しないといけません。そうすることで守られるんです。私は将来的にはクルマ椅子以外の車輪の付いているものは歩道通行不可にすべきと考えています」
現状は道路整備は途上であり、新たな電動モビリティを移動の救世主か邪魔物かに分けるのは、利用者のモラルに委ねられることになりそうだが…。
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