富士山“開山から2日”で「死者3名」の昨年越え…規制ない“静岡県側”に「弾丸登山者」がなだれ込む懸念は?
山梨県側の1日に続き、静岡県側も10日に開山した富士山。いよいよ山シーズンの本格到来となったが、山梨県側では8日に死者1人が確認され、静岡県側では開山から2日ですでに昨年を超える死者3名(12日時点)となるなど、不穏な山開きとなっている。
日本一の高さを誇る高山ながら、富士山は初心者でも比較的登りやすい。だが、それはあくまでも十分な準備の上での話。観光気分でふらりと訪れて山頂を目指すのは自殺行為といっていい。
山梨県側では、山小屋での休息を挟まず、ご来光目当てで一気に山頂へ駆け登る「弾丸登山」が特に危険として、2024年から2000円の通行料徴収と併せ、入山規制を導入した。
具体的には、富士山吉田口登下山道で16時~翌3時までの間、五合目の登山道入口ゲートを閉鎖し、通行を規制。さらに1日の登山者が4000人に達した場合、通行を規制する。(※山小屋に宿泊を予約している登山者は、規制中も通行が許されている)
この2つの規制により、山梨県は弾丸登山を実質的に禁止し、山頂付近の混雑を緩和。登山者の出入りを厳格に管理することで、富士登山の秩序と安全を維持する。
世界遺産にも登録されている富士山の秩序と品位を守る大改革といえるが、こうした規制は山梨県側のみ。静岡県側はこれまで通りで、規制がない。
規制のない静岡県側に「弾丸登山者」がなだれ込む懸念
そこで懸念されているのが、「弾丸登山」を事実上封じられた山梨県側から静岡県側に、「マナーより弾丸登山」といった招かれざる登山者がなだれ込むことだ。
この懸念に拍車をかけるのが、静岡県側の設備の状況。多くが富士登山をスタートする山梨県側5合目は施設が充実しており、観光色が強く、山小屋も多い。一方、静岡県側は、山梨県側と比べると最低限といえる設備。逆にいえば、ある程度の登山経験者に向いたルートとなっている。
こうしたことを知らずに、「まだ弾丸登山ができる」と初心者が静岡県側から無防備に入山すると、大自然の厳しい洗礼を受けることになりかねない…。すでに静岡県側の山小屋は7、8月の予約が満杯といい、それを理由に弾丸登山を強行してしまう登山者が出てもおかしくない状況にはある。
窓口は“控えめに”弾丸登山自粛を要望
「多くの方に来てほしいのはもちろんですが、山小屋の予約をされていない場合は、弾丸登山はお控えいただきたいと思っております」
あくまで控えめにこう要望するのは、静岡県側登山口の窓口となっている、県のスポーツ・文化観光部 富士山世界遺産課の担当者だ。
山梨県側のようにゲートも規制も設けられないため、窓口としてはあくまで「要望」しかできない。とはいえ、富士山にとって2024年はターニングポイントとなる年。静岡県側もこの機会に新たなルールを設定している。
それは、事前登録システムによる入山管理の導入だ。具体的には、専用のWebサイト(https://www.kkday.com/ja/product/173225?cid=19227&ud1=officialsite)から登山時間や山小屋宿泊予約の有無などの事前登録を行ってもらう。スマホやパソコンから入力し、多言語にも対応する。
事前に入山者の状況をできる限り正確に把握し、安全で快適な富士登山を推進するとともに、事故発生時の円滑な対応を実現する目的だ。登録時には、富士登山のルール・マナーの事前学習もセットにしており、アニメキャラクターを使ったわかりやすい動画で富士登山の危険な側面をしっかりと伝え、事前準備の重要性を訴えている。
静岡県側の富士登山での注意点
事前登録は義務ではないものの、新たなルールであり、知らずに入山する登山者もいるだろう。その場合は、静岡県側の3つの登山道(富士宮ルート、御殿場ルート、須走ルート)の各五合目で、現地に設置されたモニターを視聴して、ルール・マナーを学習してもらうという。
厳格になった山梨県側と比べれば安全対策は簡素ともいえるが、静岡県側ではこれまでもルールやマナー違反で著しく問題となるような事案は少なかったという。「弾丸登山」目当ての悪質マナー登山者が押し寄せることなく、例年通りの登山者レベルなら、事前登録システムでも十分な効果を期待できるだろう。
なお、入山規制のない静岡県側では2000円の通行料徴収はなく、これまで通り、富士山保全協力金の1000円が求められる(任意)のみとなっている。
ちなみに、静岡県側から入山し、山梨県側から下山するルートをとる場合は2000円の通行料が必要になる。こうしたことも含め、事前準備をぬかりなく行って挑めば、富士登山は快適で安全な夏のアクティビティとして満喫できるはずだ。
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