内部通報後に誹謗中傷、パワハラ…勤務先を訴えた女性の主張、二審も認める「同様の事例でも参考に」代理人弁護士が語る“意義”

弁護士JP編集部

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内部通報後に誹謗中傷、パワハラ…勤務先を訴えた女性の主張、二審も認める「同様の事例でも参考に」代理人弁護士が語る“意義”
代理人の河野冬樹弁護士(7月18日 霞が関/弁護士JP編集部)

内部通報、公益通報を行った言語聴覚士の女性が、職場で誹謗中傷やパワハラを受けたとして、勤務先や上司らに損害賠償を求めた訴訟の控訴審で7月18日、東京高裁は、勤務先に50万円の支払いを命じた一審さいたま地裁越谷支部判決を事実上維持し、双方の控訴を棄却した。

原告女性と、代理人の河野冬樹弁護士は18日と19日に都内で会見。記者らに対し、通報の内容や判決の持つ意義について説明した。

パワハラの中には、医師法24条に抵触する行為も…

原告女性は、勤務先である獨協医科大学埼玉医療センターのリハビリ科で、診療報酬の不正請求が行われているとして、2010年から病院に内部通報を行っていたと説明。2013年には厚生労働省厚生局の指導が入ったというが、そのことが原因でほかの療法士から誹謗中傷を受けたと振り返った。

そして、同病院では2018年にも厚生局から指導が入るとの情報があり、原告女性はこの時にも不正の一部について病院に内部通報するとともに厚生労働省への公益通報を行ったという。

不正の原因には、リハビリに関して、所定の労働時間では到底達成することのできない「月間330単位」というノルマがリハビリ科のセラピストに課されていたことがあるといい、そのノルマを達成したことにするため、訓練時間の水増し申告などが行われていたとのことだ。

原告女性によると、そのことがきっかけで、再度誹謗中傷を受けたり、担当業務を外されたりするなどのパワハラを受けたという。また業務外しの中には、厚生局に実情を隠すため、原告女性には認知症患者の臨床だけを行わせ、電子カルテは記載させないという医師法24条に抵触する行為も含まれていたそうだ。

公益通報者への不利益「立証難しい」

裁判では、通報したことによってパワハラが行われたと認められた。代理人の河野弁護士は今回の判決について、次のように評価する。

「公益通報保護法では、通報を行った人に対して、不利益となる取り扱いをすることはあってはならないとされています。

しかし嫌がらせをする人に対して『なぜそのようなことをするのか』と聞いたところで、正直に『通報に対する報復だ』と言う人はおらず、立証することはなかなか難しいです。

ですが、今回の判決では不正の証拠がかなり残っていたこともあり、原告がそれを示し、裁判所が認めたことで、パワハラも認定されました。

今後、同様の事例があった際にも、この流れは参考になるのではないでしょうか」

「社会保険料がずさんに使われている」厚労省に調査要求

原告女性は会見を通じて「こうした不正が行われているのが、医療現場の現状。社会保険料がずさんに使われていることを知ってほしい」と訴えた。

「診療報酬は社会保険料と税金で賄われている公金です。不正に利用されてしまう可能性がある状態を放置して問題はないのか、厚労省に問いたい。自分の通報をきっかけに、調査が行われることを望みます」(原告女性)

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