「韓国人・中国人おことわり」大久保・飲食店の“差別的”SNS投稿が物議 弁護士が指摘する明確な“違法性”とは?
入り口に「韓国人・中国人お断り」などと掲示し、その写真をSNS上に投稿した東京新宿区大久保にあるイタリアンバル店が物議をかもしている。
新宿区は外国籍住民が4万5000人以上と全国でもっとも多い市区町村のひとつで、人口の約13%を占めている。その中でも大久保地域は特に外国籍住民が多いことで知られ、日本での韓流(はんりゅう)ブームを支えてきたコリアンタウン以外にも、ハラルフードが楽しめる「イスラム横丁」などもあり、まさに多様な文化を体験できるエリアとしても人気を集めている。
そんな多国籍の文化が入り交じる街にあるイタリアンバル店が、SNS上に〈多様性とか寛容とか色々言われている昨今ですが嫌な思いをして働く気はないので中国人、韓国人お断りします♪〉と店先に掲示した写真を投稿。「差別ではないか」と大きな騒動となった。
同店の店主は週刊誌『フラッシュ』の取材に対し、「(取材は)受けないようにしている」などとして、掲示に至った経緯を語らなかったようだ。また、SNSの投稿は消されずに残っている(7月22日現在)。
“国籍”理由に入店拒否は「違法」
しかしそもそも、「国籍を理由に入店を拒否すること」は、法的に見て許されているのだろうか。
外国人問題に詳しい杉山大介弁護士は、「国籍や人種を理由とした入店拒否は、法的に言えば差別ですし、違法です」ときっぱり言い切る。
「これまでも、入店を拒否した宝石店や公衆浴場、ゴルフクラブの入会、賃貸借(物件)の入居、中古車の資料請求などを拒否した企業等に対して、不法行為に基づく損害賠償が認められています」(杉山弁護士)
損害賠償が認められるのはなぜか。憲法14条から人種に基づく差別の禁止が導かれ、さらに日本は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、通称「人種差別撤廃条約」に批准しているためだ。
こうした憲法や条約の趣旨によって、国籍や人種を理由にした入店等の拒否は、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した」として、不法行為による損害賠償(民法709条)が認められる。
杉山弁護士は「大久保にありながら、わざわざ差別的な掲示をしたくなった(店主の)心理状態の背景に、どんな事実があったのかは気になります」と今回のケースを思案しつつ、次のように語った。
「仮にこれまで特定の人との間でトラブルがあったとしても、『~という属性だから~するはずだ』という思考自体が、法的に肯定してもらえるような合理的なものではありません。大半のこの手の話題は、日本人にも同じことをする人間が、同様の割合でいるという結論にもなります」
トラブル客は“出禁”にしても良い
なお、個別に問題があった客を店側が拒否することは、「当然、自由」(杉山弁護士)だ。
たとえば万引き犯や他の客とトラブルを起こした者、従業員に対してカスタマーハラスメントをした者などに対しては、店側が退店を促したり、二度と入店しないよう約束をさせるいわゆる“出禁”の措置を取ることもできる。
この出禁について杉山弁護士は「店側は契約等の関係がない客に対して、何かをしてあげる義理はなく、出禁措置を証明する必要もないため、ただ断れます」と説明する。
ただし、「訴訟になった時のために、出禁措置をする理由となった問題行為の日時と証拠はそろえておいた方が適切です。それか合意書で出禁を客側にも認めさせていれば、個別の行為の立証までせずとも拒否を正当化できるかもしれません」(杉山弁護士)
「海外で日本人を拒否する店」には怒っていい
ちなみに今回のケースでは「外国に行けば日本人を拒否している店もある」などとして投稿に賛同を示す意見もあったが、そうした意見について杉山弁護士は以下のように語った。
「外国で日本人に対してふざけたマネをされた時は、怒っていいですよ。国籍による入店等の拒否について、日本で違法と言える評価が蓄積されたのは、訴訟を起こしてまで法に問う外国人がいたからです。これによって、日本の規範が確立されました。日本人差別をする外国人に対しても、差別的な言葉を投げるより、正面から教育してあげた方が正しくマウントを取れるのではないでしょうか」
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